自分の卵
スーパーカミオカンデでノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊さんのコラムがとても良かったので転載。
http://www.asakyu.com/column/?id=322
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おちこぼれを自認してきた私ですが、人の言説や反対意見に右往左往したり、つぶされたりしなかったのは、逆説的に言えば仕事の現場でエリートではなかったからでしょう。ノーベル賞を受賞できたことはうれしく、私の実験や研究が広く評価されてありがたいことだと思いますが、それまでのプロセスが独創的であればあるほど、実は冷ややかな目にあうことも多かったのです。
もしも私の学業や研究が順調にきていたら、反対意見にさらされた時点で馬脚を現していたかもしれません。日本では人の言われたことをそのまま受け入れて学ぶ人間がエリートコースを歩いていますが、これが日本の打たれ弱さでもあると思いますね。
仕事人であるなら、今はまったく評価されない発想でも、いつかはモノにしてみせるという自分ならではの考え方をじっと抱え、育てていくべきだと思います。私は「自分の卵」と呼んでいますが、三つか四つは独創的な卵が欲しい。それは、将来必ず本気でかえす覚悟を秘めた卵です。
世の中にあふれる情報も、自分の卵を基準にした視点で見つめ取捨選択する。つまり自分のモノサシだけで冷静に残していくから独自の情報が積み上がっていくのです。日々の学業や仕事はもちろん手を抜かない。雑事もある。しかし、静かに胸深くにある自分のすべき仕事が、人を強くするのです。