村上龍のベンチャー観
雑誌「GOETHE」に村上龍が書いたエッセーが好きで、ページを破って、会社の引出の中に入れてあり、ときどきこっそりそれを見ている
やれという「命令・指示」、やろうとよという「提案・勧誘」、やったほうがいいよという「推奨」などは、いずれもヴェンチャーの本質や原則に逆行する。
ヴェンチャースピリットを持つ人は原則的に少数派だ。みんながやろうとしていること、みんながすでにやっていること、すでにニーズが満たされていること、価値が定まっていること、それらに本能的に背を向ける資質がなければヴェンチャーなどやれない。ただしそれは他人の言うことに耳を傾けないという意味ではない。情報や知識やネットワークへの飢えを持ちつつ、少数派の立場を常に維持しなければ、あっという間に「既成」の波に呑み込まれるということだ。トヨタもソニーもホンダも、創業者は社会の少数派だった。小規模で孤独な環境から出発し、多数派に加入する誘惑を断固として拒絶すること、それがヴェンチャーの原則である。