客観的事実による不確実性への対処
『手紙』東野圭吾【原作】/山田孝之、玉山鉄二、沢尻エリカ【出演】
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不確実性の正体を探るとき、それは客観的事実に基づくものと、主観的認識に基づくもののふたつに分けることができる。
前者の不確実性への対処法は、事実を確定していく作業に集中することに尽きる。
すなわち目先の小さなパーツを確定させることで、事象に対する不確実な領域を低減していこうとするアプローチだ。
映画『手紙』では、犯罪加害者の弟ということで社会的差別を受け、婚約者を失い、芽が出始めたお笑い芸人への夢を絶たれる主人公を山田孝之が演じきる。
倉庫の検品作業の仕事を自暴自棄にこなす彼に、その会社の会長がみかんをそっと手渡しながら語りかける。
「差別はどこにでもある。でも、心と心が通じ合っている繋がりを一つ一つ作っていけば、それでいいじゃないか?君はここから、この場所から始めていくんだ。」
絶望的な現状を打破することができるのは、変えられない現実の先にある悲劇を夢想することではない。
目の前にある、社会との繋がりを持った地道な日々の積み上げによって、自らが依るべき足場を築きあげる。
そのことだけが、不確実な想像の世界を、志向すべき確実な未来へと変容させうるのだ。
と、初老の会長の言葉を解釈すればそんなところだろうか。
それでは、後者への対処法はどうだろう?
(つづく)