不安の規定
『リスク-神々への反逆』 ピーター・バーンスタイン
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不安の大きさは何によって規定されるのだろうか?
ひとつの視点として、それは未来に対する不確実性の程度とみることができる。
その不確実性の変動幅が大きければ大きいほど不安はますます増大し、「列氏」杞人の憂いのごとくストレスフルな日々を甘受せねばならない。
古代ギリシャ時代から最先端金融ファンドLTCM破綻まで、人類の歴史を不確実性との壮大な戦いとして描き出すバーンスタインの筆力には驚嘆を隠しえない。
金融工学が未来を予見しうるという人類の思い上がりに神の鉄槌が下った1998年のLTCM破綻からわずか10年。
我々はリーマンショックという同じ轍を踏む状況をリアルタイムに観察すると同時に、それにより誘発された未曾有の大不況によって、バーンスタインの描く不確実性の前に敗れ去る人類の歴史に、我々一人一人が組み込まれていくのだということを否応なく実感させられた。
しかしそれでもなお、不確実性へのチャレンジこそが生きがいである男とは安西先生の流川楓評であることからも、いかに大きな不安を抱えようとも本能に根ざす生存の欲求はそこからの逃避を許さない。
ならば、やるべきことは不安の根源である不確実性の正体を知り、うまく付き合っていくための方法論を会得することといえる。
(つづく)