学校の部活中に、熱中症などで子どもを亡くした遺族ら7人が任意団体「エンジェルズアーチ」を立ち上げた。専門家らの意見を聞きながら、講演会などを通じて再発防止策を発信していく。

 同団体は、1999年に中1のラグビー部員だった宮脇健斗さん=当時(13)=を亡くした父親の勝哉さん(59)=兵庫県川西市=らが設立。健斗さんは体調不良を訴えていたが、当時の顧問に「甘えるな。俺には演技は通用せん」などと言われて練習を続けさせられ、熱中症で亡くなった。同様の事故が全国各地で繰り返されているため、遺族らで熱中症予防の具体策を提言していくことになった。

 12日には、東京都世田谷区の昭和女子大で研究者らを招いたシンポジウムを開催。日本体育大スポーツ危機管理学研究室の南部さおり准教授と、日本体協公認スポーツドクターで早稲田大人間科学学術院の永島計(けい)教授が講演した。

 南部准教授は部活の顧問教諭らは熱中症などの安全対策を学ぶ機会がなく、ほぼボランティアで部活指導を担っているため、保護者らが意見を言いにくい状況が問題だと指摘。水泳中に熱中症で死亡したとみられる例を挙げながら「運動時は適切に水分補給をさせ、指導者は意識改革をしてほしい」と呼び掛けた。

 耳につけて鼓膜内の温度を測る機器の開発に携わっている永島教授は、運動途中に体温を計測することが熱中症予防につながると提言。汗をかいて減量する目的で、通気性の悪いサウナスーツなどで運動するのは熱中症の危険が高まるのでやめるようにも訴えた。

 2009年に大分県の高2の剣道部員だった工藤剣太さん=当時(17)=を熱中症で亡くした母親の奈美さん(48)も、同団体のメンバーとして参加。元顧問が熱中症を放置し、暴力を加えて剣太さんを死亡させたとして県を訴えている裁判について報告し、元顧問の賠償責任を認めた昨年12月の大分地裁判決に従い、県は控訴を取り下げるよう訴えた。 (細川暁子)

出典:http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201702/CK2017021802000197.html

夏の開催となる2020年東京五輪・パラリンピックを見据え、政府が競技会場周辺で昨年夏に測定した「暑さ指数」の結果がまとまった。ゴルフ会場となる霞ケ関CC(埼玉県川越市)など3カ所で実施。いずれも熱中症のリスクが最も高い「運動は原則中止」「外出はなるべく避ける」の基準に達する日が複数あった。過酷な環境の五輪となる可能性が改めて浮き彫りになった。

 政府は観客らの熱中症予防など暑さ対策を本格化させるため、より詳細な測定が必要と判断。平成29年度予算案に調査費を計上し、測定地点を増やす方針だ。

 東京大会は五輪が7月24日~8月9日、パラリンピックは8月25日~9月6日の日程で開催される。最も暑い時期である上、湿度の高い東京の気候に不慣れな外国人が大勢来日することが予想されるため、政府は暑さ対策を重要課題と位置付けている。

 大会準備を担当する内閣官房の事務局は、観客が屋外に長時間滞在するなどの観点から、霞ケ関CCのほかセーリングを実施する神奈川県藤沢市の江の島、複数の会場が集まる東京都江東区の有明地区を選定した。五輪と同時期に当たる昨年7月下旬から8月中旬にかけて日なたと日陰で暑さ指数を測った。

 昨年は猛暑だったこともあり、熱中症が最も起きやすい「危険」の基準となった日が、3カ所とも日なたでは4日以上あった。日照時間が長い日を選び、毎時の平均値を算出すると、日中の大半の時間帯で、激しい運動は中止する「厳重警戒」や「危険」の基準に至っていた。政府は大会に向け、路面の温度上昇を抑える道路舗装といった暑さ対策を進める。暑さ指数は競技の開始時間設定などにも反映させる考えだ。

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【用語解説】暑さ指数

 熱中症予防を目的とした指標。通常の気温計に加え、ぬれたガーゼに包んだ気温計などを使い、気温と湿度、日差しの強さから算出する。環境省によると、1954年に米国で提案された。単位は気温と同じセ氏で表示し、熱中症の起きやすさを5段階に分けている。暑さ指数が31度以上だと「危険」で、指針では「特別の場合以外は運動を中止する」と定められている。28度以上が「厳重警戒」、25度以上が「警戒」。以下「注意」「ほぼ安全」と続く。

出典:http://www.sankei.com/politics/news/170220/plt1702200003-n1.html

大阪府東大阪市の市立中学1年だった平成22年8月、バドミントン部の部活中に熱中症となり、脳梗塞を発症して左半身にまひが残ったとして、短大生の女性(19)が市に約5600万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が22日、大阪高裁であった。佐村浩之裁判長は1審大阪地裁判決に続き、学校側の過失を認定。賠償額を約80万円増額して、市に約490万円の支払いを命じた。

 判決理由で佐村裁判長は、温度計の設置など熱中症予防の環境を整えていなかった学校側の過失を指摘、熱中症に続く脳梗塞発症との因果関係を認めた。

 損害額をめぐっては、女性に血液が固まりやすい症状があり、それが発症に7割程度影響したと1審の判断を踏襲。一方で若い女性の逸失利益については、社会意識の変化を踏まえて「女性労働者の平均賃金を用いるのではなく(男性を含めた)全労働者の平均賃金で算出するのが合理的」として賠償額を増やした。

 会見した原告の父親(43)は「子供たちは部活に必死で気温を認識できない。学校が把握しなければ熱中症事故は防げない」と話し、温度計や予防指針の活用を訴えた。

出典:http://www.sankei.com/west/news/161222/wst1612220083-n1.html