「え?おまえ、飲まねーの?」
「うん、月曜だしね・・」
ーー また飲みに行くんですか?意外と酒好きなんですね
別に?
あんなの、気にしてるわけじゃないけど
「ま、そうだわな。じゃあ俺もやめとくわ」
「え?いいのに。松永は飲んでよ」
「いやいや、休肝日も必要です」
「なにそれ、ジジクサ」
「・・失礼だな」
笑って話してるけど、どこか落ち着かない
あれから数年経ってるとはいえ
私が告った同期なんだもん
バッサリ フラれましたけどね
それから誰かとつきあったわけでもないし
他に好きな人が出来たわけでもない
あ、だからと言って、まだ好きとかはないよ?
その辺は私もわきまえてます、ちゃんと
でも・・
一度好きになった人だし
松永は、私と気まずくならないように、あのあともずっと
こんな感じで接してくれている
だから、それにこたえてるうちに
まぁ、今ではいい同僚としてやっていけてるんじゃないかな?
って思ってるけど・・・
それにしてもふたりっきりはキツイ
今までもあったけど
これからはずっとそうなんだな、っていうか
本社に残る同期は私と松永だけなんだ
なんて思うと
やっぱり少しは緊張する
「それにしても、あの二階堂が結婚退職とはね、驚いたわ」
「だよね~。私も先週聞かされたときはほ~んっとびっくりして、週末とか、しばらくぼ~っとしちゃってた」
「なに?お前もそれまで知らなかったの?」
「そうよ、ひどくない?茜ったら・・・ 落とすまで誰にも報告とかしたくなかった、って言ってたけど、落としてからすぐ教えてくれてもいいよね?」
「落とすまで、って・・ え?二階堂から?」
「聞いてないの?」
「聞いてない、聞いてない、どんな人?」
あっきれた~
茜ったら、何も話してないんだ?
松永に・・・
ハハ、でもそんなもんか!
「ひとまわりも年上のイケオジだって!茜が一目惚れして、一年かかって口説き落としたって言ってた」
「・・・・ すげぇ・・。やるなぁ、アイツ・・」
「でしょ?!何度振られても諦めなかったんだって~。やー、私なんてそんなの無理だわー。告るのにどんだけ勇気振り絞ったんだ、って話で、それを何度もとか!心折れてるってー」
そこまで言って
自分がどえらい地雷を踏んでいることに気づいた
誰の前で
いったい何の話をしてるんだ、って
あーもうっ!
なんでこんなこと言っちゃったんだろ
どうしたらいい?
思い出させてない?
いや待て、松永、意外とスルーしてくれて・・・
チラッと顔をみると
松永も気まずそう・・・? に、黙ってる
あ、ウーロン茶入りのグラスを口に持っていき
ごくんと飲んだ
私もつられてゴックン
「そうだ、同期はみんな、声かけてみる?私、津田さんとかまだ連絡とってるよ?松永、支社にいる石田とか岩倉とか声かけてみてよ。とりあえずは同期だけでやる?それとも、送別会も兼ねて社内でも声かけてみる?あー、でも送別会は別にやるのかなぁ・・課の問題とかもありそうだし。それにあんまり人数多いと結局話せないもんね?旦那さんもびっくりされるだろうし。やっぱりとりあえず、同期だけでやろうよ。久しぶりでそれこそ、積もる話もあるだろうしー」
怒涛の攻撃か!
止まらない
でもこれで、話は逸れたはず
いやいや、そもそもこっちが本題なんだしね
「夏川」
え?
松永・・・
なんか、真面目な顔してない?
なんでここで、私の名前、呼ぶわけ?
え?え?
さっきの、スルーしてくれないやつ?
もしかしてあの 私の昔の告白
いまだに迷惑って感じなの?
「な・・ なに?」
「あの時は、ごめん。」
うそでしょーーー
また、ここにきて、そんな謝られないといけないの?
そんなのまたフラれてる感じじゃん
「やだな~、松永。いまさらまた、そんな謝らないでよ。あんな何年も前の話。もう昔話だよ?やめてやめて!もう、忘れてほしいんだから!あの時はごめん、って私のセリフ。はい、終わり。もう二度と、謝ったり、思い出したりしないでよね?じゃないと同期としてやっていけないから」
「・・・・・・・」
なんで黙ってるのよ!
やばいやばいやばい
松永にとって、いまだに私の告白、気にされるレベルなのか
あーーー
それもこれも、私に彼氏がいないせいよね
もしかして、未だに未練たらしく思われてるんじゃないか?
なんて時々思ったりしてるとか?
やばすぎーーーーっ
全然うまくやれてなかったぁーーー
・
・
・
・
・
何年も前の話?
昔話?
もう忘れてほしい?
俺としては、思いがけず触れられた話に乗っかって
あの時のことを謝って
よかったらもう一度考えてくれないか?
とか言おうかと思ってたけど
それは虫のいい話か?
そりゃそうだよな
振っておいて、今更好きだとかな~
いくら、夏川にいまだに彼氏がいないから、って
ずっと俺のことを?とは
さすがに俺も思ってはなかったけど・・・
どうする?
ここで、告るのは早計か?
・・だな
どうみても
ここは本題の二階堂の話に戻そう
「・・・ わかったよ。お前に同期をやめられたら、オレ、ボッチになるからな」
「そうでしょ?言っとくけど、私、松永が結婚するって聞いてもちゃんとお祝する気満々なんだからね?」
・・・・ は?
「なのにつきあってる彼女の話すら、聞かないけど・・・ あ、もしかして私に気を遣って黙ってるって言うんだったら、今ここでちゃんと言って!!」
・・・・ はぁ~~~!?
好きな女に向かって、他につきあってる女がいるなんて報告できるヤツがどこにいるんだよ
こいつ、オレが自分のこと好きになってるだなんて
微塵も思ってないんだな?
「・・・ いねーよ。つきあってる彼女なんて」
「ほんとにぃ?」
おいおい、睨んでも綺麗な顔だな
「別にお前に気ぃなんて、遣ってもないし。悪いけど本当にいません」
「なんで?モテるのに・・。私、何度も得意先の人から松永のこと紹介して、って頼まれたのに」
「へぇ~。そんな話、知らないけど?」
「え?うそ!言わなかった?いやいや、言った、って!別に邪魔なんかしてないものっ」
「そうなのか~?」
はいはい、確かに前に聞いたよ
速攻、お断りの連絡をしたけどな
あー、どうやったらこいつに、また、俺のこと好きになってもらえるんだ??
こりゃ、思ってた以上に前途多難だぞ?
まぁ、こいつに男がいないだけ
まだマシなんだけど・・・
ん?
そういえば昼・・・・
「夏川、おまえ・・ 森島と仲良かったっけ?」
あんなところで、ふたりで話してるなんて
何かあんのかと気を遣って声を掛けるのはやめて
電話してみたけど
「・・・・ えっ?森島くん?別に仲なんて良くないけど・・ なんで?」
なんだ?
別にオレの気にしすぎだったか
「ん~? おまえと森島が一緒にいるところを見てさ」
「えっ!? それって、いつっ!?」
なんだ?
その顔・・・
いつ?って
・・・ ふたりでいたのは、今日の昼だけじゃないってことか?
「なに?何かあるのか?森島と」
「は?いやいや、ないよ?何もあるわけないでしょ。あー、あれかな?お昼前にちょっと話してたやつかな?うん、それだけ」
それだけ、ってさ・・・
あんな、人気を避けたところで?
何年の付き合いだと思ってんだ?
ってか、オレがどれだけお前のこと見てきたと?
夏川、お前はさ
焦ると饒舌になるんだよ、無駄にな