どこに行ったんだろう?

森島くん・・・

 

そろそろお開きなのに・・・

 

 

会場を出て、トイレの方とか行ってみる

 

 

先に帰った?

 

いやいや、そんなはずはないよね

 

 紳士用トイレの前、のぞいてみる


 

「・・・・ 離せっ・ ばかっ・・・おいっー」

 

 

え?今、声が聞こえた?

 

どう見てもこの先・・

やっぱりトイレしか・・

 

私は、紳士用トイレの前まで歩み寄ってみる

 

やっぱり中から誰かの声のようなものが聞こえてくる・・?

 

私はもっと近づいてみた

 

 

 

「・・ しんっじらんねー。・・ トイレまで来るとか、お前っ・・ 痴女かっー」

 

「だって、快くん、全然ひとりになってくれないし~ さやか、絶対今日、快くんと、って思ってたんだもんっ・・・ ね?私とつきあって?」

 

 

・・・・ はぁ?

トイレで告られてる?

いや、これ・・

森島くん、襲われてる?とか?

 

 

どうする?

誰か呼んでくるっ?

いや、でも、こんなお祝いの日に

それはないか?だったらー

 

 

「・・誰か入ってきたらどうする気だ?」


「誰か入ってきたら?そしたら服脱いで快くんに襲われたことにする」


「そんなやつと誰がつきあうか。そもそも俺には彼女がー」

 

「あんな人、別れたらいいよ。さやかの方がずっとずっと快くんのこと好きだもん!もう何年もずっと!!ね?さやかとつきあうでしょ?」


「無理。」


「そんなこと言うんだ?さやかがここで服脱いで悲鳴あげたら、快くん、犯罪者になっちゃうんだよ?」



 

「犯罪者になるのはあんたの方でしょ!!!」

 

 

気づいたら飛び出してた

隠れてなんかいられない!

 

きゃっー

「誰ぇ~~!?」

 


 

「ダレ?って?そいつの彼女ですけどっ?」

 

 

「ここっ、男子トイレよっ!?」

 

「その、男子トイレに入ってアンタは何してんのよっ!!警察、呼ぼうか?」

 

「警察っ!?」

 

「さっきからの会話、録音させてもらったから」


私がそう言ってスマホをかかげると

 

バタバタバタバタッー

 

服を直しながら彼女は慌てて逃げるように走っていった

 

 

「あさひ・・・」

 

「森島くん、大丈夫?」

 

「すげぇ・・。助かった・・。」


「やばっ、ここ、男子トイレ!!あんたはちゃんと手を洗ってから出なさいよねっ」


私も逃げるように飛び出すと、後ろで笑い声が聞こえた

よかった

大丈夫みたいね・・















「送ってくれてありがとう。」


「いや、こちらこそ。今日は付き合わせてすみませんでした。」


うちの近くまで送ってくれると、森島くんも一緒にタクシーを降りた。

あとは公共交通機関で帰るんだとか。


「なんか、今日、すごかったね。森島くんのこと追いかけて男子トイレまでいっちゃうとか・・・」


「・・・助かりました。あの時はほんと、めちゃくちゃかっこよかったなぁ、夏川さん」


あ、森島くんの呼び方、夏川さんに戻ってる


「からかわないでよ。私こそ、びっくりしたんだから。でも・・森島くんがあんな目に遭ったのも、私が女避けとして、役不足だったからよね、ごめんなさい」


「いや、そんなことないよ。夏川さんは完璧でした」


「完璧って・・ それを言うなら森島くんの方だよ!完璧彼氏!!もう私、めちゃくちゃ気分よかった!ありがとうね」


それはほんと。

彼氏ってこんな感じなんだ?て

ドキドキすらしちゃいましたよ

なんか、忘れちゃってた

あまりにご無沙汰すぎて・・・


 「ありがとう、って・・・」


森島くん、照れてるよね、それ

人差し指で耳んとこ、こすってる


この短期間で、森島くんの仕草、少し知っちゃったんだよなぁ


 緊張もしたけど、終わってみれば楽しかった

それもこれも、もうおしまいかぁ

なんか寂しかったりして


週が明けたら森島くんとこんな距離で話すこともないんだ

なんか残念


まぁ、そんなこと思ってるのは私だけなんで・・・


「じゃあ、」


名残惜しいような気もするけど

いつまでも引き留めておけないし

挨拶するしかないよね


「ええ、じゃあ。また、会社で」


会社で?


くすっ


「今まで会社で会うこと、なかったよね?」


「・・ですね」


「すれ違うこととかあったら、挨拶してもいい?変かな?」


「いいんじゃないですか?同じ会社の社員なんだし」



同じ会社の社員


そう

それが私たちの関係を表す言葉だよね

ほんの数時間前まで彼氏彼女だったのに

あ、フリか!

ふふっ


「じゃ、また。会社で」


「はい」



私たちは、握手をして別れた