さっきの子・・・

沢井さんって言ったっけ?

 

きっと、森島くんのこと好きなんだろうなぁ

森島くんの同期にあんな可愛い子がいたんだ?

知らなかった

・・って、知らなくて当然なんだけどね

 

森島くんと何かあるんですか?って

すっごい圧を感じた

 

何もないのにね~

 

ーー オレ、こいつと話していくんで

 

・・ 何を話すんだろう?

森島くん・・・

 

もしかして、『夏川さんとは何もない。オレが好きなのはお前だ。つきあってくれ!』

なぁ~~んって

 

・・・言いそうにないなぁ~

 

てこともない?

同期かぁ・・

 

入社2年目って、私、松永にフラれて

まだ諦められずにすっごい好きだった時だ(笑)

 

寝ても醒めても松永、で

どうやって諦めたらいいの?って

苦しんでたとき

 

 

森島くんから買ってきてもらったおにぎり

パクッと一口、海苔がパリッと音がして

唇に貼りつく

 

あの頃の松永への好きと

今の松永への好きは

 

なんか違う

 

あ、具は焼きタラコ、美味しい

昨日言ってたの、聞こえた?

 

好き、って気持ちも風化するのかなぁ

歳なのか?

もう、毎日がドキドキ、胸が苦しくなるような

彼の一挙手一投足に心躍るような

そんな、好きって感情なんて

歳を重ねるとともに、経験できなくなってしまうのか

 

松永にドキドキしないわけじゃないよ?

だって・・・

そうだな、例えば・・・ うちのチームの木村くんと松永では?

 

圧倒的、松永(笑)

 

何が?(笑)

 

 

じゃあ、次ー

 

 

「ハイ、レシート。よろしくお願いします。」

 

突然後ろから手が伸びてきて

私が受け取ると

 

テーブル席にある椅子をくるっと回して

私の背後にやってきた

森島くんが

 

「びっ、びっくりするなぁ~・・ え?これ、森島君の分も入ってない?」

 

出されたレシートを手に取り確認する

 

「バレました?」

 

「昨日は出さなくていい、って言ったのに」

 

「明後日、給料出るんで、奢ります」 ぼそっ

 

「ほんとっ!?」小声で喜びっ

 

「あの店でいいです?」

 

「もちろんっ!・・あ・・」

 

「・・・ なんです?」

 

「ごめん、行きたいのはやまやまなんだけど・・ そろそろ引っ越しの用意しないとヤバいんだった」

 

「あ~そうだ。いつ引っ越してくるんです?オレ、手伝いますよ?どうせ同じフロアなんだし」

 

ああああああああああああ

 

「そうだった!!森島くん、社員寮住んでるんだってね!?ビックリよ!聞いてない!!」

 

「いや、聞かれてないし」

 

「・・・・ 確かに」

 

どこに住んでるか、なんて、聞くことないもんな

 

「じゃあ引っ越し祝いも兼ねて、終わってからにしますか。で、いつです?引っ越し」

 

「今月の最後の週末・・・」

 

「・・って、今週末じゃないですか。え?そんなんで、準備出来てるんです?」

 

ほんとだ・・

来週末だと思ってたぁーー

あれ?なんで?

1週間の大誤算

業者に頼んであるっていっても

ある程度は自分でやっておかなきゃだし

やっておきたいし

 

 

「・・・・ 夏川さん?」

 

 

仕事もいっぱいいっぱいだっていうのに

こんな時期に引っ越し・・・

あーでも、社員寮に引っ越してしまえば

遅くなってもOKだし

ここは、今週だけNO残業にして家に帰って引っ越しの準備して

そう!

今日から引っ越し優先モード

社内にいるときには限られた時間内、全集中して仕事モードでいこう

 

 

「夏川さん?」

 

「え?・・ なんか言った?」

 

「ここ、・・・ シワ、寄ってる」

 

 

森島くんの右手の人差し指が伸びてきて

私の眉間を押した

 

 

「・・・ ちから、入りすぎ。」

 

 

「おーーい、森島ぁーー、ちょっとこっち、見てもらっていいーー?」

 

「はーーいっ、今行きますっー」

 

 

ス‐‐‐ッと椅子が離れていく音がして

森島くんが駆けていった

 

 

 

「・・・・ シワ?」

 

 

私はデスクの引出から鏡を取り出すと

覗いてみる

 

やばっ

 

縦にくっきり、跡 残ってる!!

 

慌てて横に、ぐしぐしぐしって擦って

伸ばした

 

 

 

 

心臓が

 

 

 

バクバクしてた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、お金!」

 

 

払ってない!

 

視線の先、パソコンに向かいながら

話している森島くんの横顔が見える

 

 

私はスマホを出すと

ポチポチポチ・・・

 

 

『ごめん、お金を』

 

 

ピコンッ

 

え?

打ってる途中で、森島くんから?

 

え?

あ、見るともうひとりでパソコン向かってる

 

 

ーー ユヅルの話

 

 

ピコンッ

 

 

ーー 何だったか

 

 

ぷぷっ

小刻み(笑)

 

 

ピコンッ

 

 

ーー 今夜聞かせて

 

 

 

ええっ?

今夜?

今夜って何っ?

会うっ?

いや、私、引っ越し準備あるって言ったよね?

 

 

ピコンッ

 

 

ーー 電話する

 

 

ホッ

 

電話かぁ~・・

 

 

え?

いやいや、電話?

 

慌てて森島君の方をみると

あー、今度はもう、話してる

すっかり仕事モード

 

 

さっき、入力していた言葉に

さらに付け足す

 

 

『ごめん、お金を払ってなかったです。用意して渡すね。それと、そんなたいした話じゃなかったよ?』

 

 

ポチッ

 

 

・・・ 長かったかな

 

既読はつかない

 

 

ふぅ~

 

私は、コンビニのレシートを見て、財布からお金を出す

小銭が・・・・

ま、ちょっとはサービスでいいか

 

使用済みの封筒を引き出しから取り出すと

レシートとお金を入れて

セロテープで封をする

 

あとで渡そう

 

 

 

 

 

ピコンッー

 

 

えっ?

 

デスクの上のスマホを見る

 

 

 

 

 

ーー それでも気になる