「森島くん、お待たせ~ こっち片付いたから晩御飯どこか食べにー」
そこまで言って気がついた
森島くんが、リビングのソファにもたれるように座って眠っていることに
私はそ~っと近寄ってみる
森島くんのだら~んと開いた右手を見てびっくり!
少女漫画の1巻が、パタンと閉じられて乗っている
え?なんでこのチョイス?(笑)
って突っ込みたいけど
俯いて寝ている森島くんの横顔
見入っちゃう
肌綺麗だな~
このほっぺ、触ったらめちゃめちゃ気持ちよさそう
睫毛ながっ!!
しかもくるんってなってる
あのうえ、つまようじ乗せてみたくなるなぁ
ほぉ~んっと、綺麗な顔してる
眠っていてもイケメンだってわかるもの
・・って、こんなことを考える時点で私
かなり、やばいくてイタイ
もうね
気づいちゃったんだよね
だってさ、こんなイケメンくんと一緒にいて
好きにならずにいられる人
いるんだったら出てきなさいよ
って叫びたい
そりゃあさ
彼女を女避けに遣うようなゲスい奴だけど
それにつきあわせただけの私に
ここまで手伝ってくれるんだよ?
仕事だって出来るし
年下なんてないわ~
って思ってたけど
好きになるのに年なんて関係ないんだね~
っていうか、あんたが規格外なのよ
あ~あ
こんな報われない想いを
また抱え込むことになるなんて
認めたくなかったけど
もう無理なのよね
自分の気持ちを誤魔化すの
認めて楽になろうって思いました
でもね
見の程は弁えてるわよ
告ったりしてあんたに嫌な思い、させないから
そこは安心して?
気楽に話せる上司として
頑張るから
せっかくのお休みを
私の引っ越しに付き合わせてしまってごめんね
疲れたよね
ありがとう
目が覚めたらそう言おう
だからもう少しだけ
・
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・
・
・
♪♪~~
ブルブルブルブルッー
・・っ? 電話?
寝ぼけたまま動かした手の先に見つけたスマホを手に取ると
「・・はい、もしもし?」
ゆっくり電話に出る
目が明かねー・・
ーー あ、森島?
耳に聞こえてくるこの声は・・
「・・ん~・・ 笹本?どうした?」
ーー どうした?って・・ 森島、今、どこにいんの?
「どこ、って寮だけど・・」
ーー え~?じゃあ早く開けろよ、さっきからオレ、ずっとピンポン押してるんだけど
「・・えっ?」
ガバッ!!
頭の下・・・ クッション?
身体に・・・ タオルケット?
えっ?
「オレっ、寝てたっ!?」
部屋はうっすら暗くなってる
そんな中、目を凝らしてみるも
彼女の姿が見つからない
出掛けてる?
ーー 寝てたのはわかったからさ~、早く開けてくれよ
「え?あ、・・ いや・・ え?なんで来たの?」
軽くパニクる
突然、足音が聞こえて、彼女が現れた
居たんだ?
オレはスマホを指差し、電話中だ、ってことを伝える
すると彼女はうんうん、と頷いて、ゆっくり近寄ってきた
ーー 森島、お金ないから飲み会は無理だって言ってたけどさ~、飯食うだけならいいだろ?
「飯?お前と?」
ーー ん?あと、中里と鈴村も一緒。森島も誘ってみるか、ってなったから誘いに来た。沢井は来ないってさ
あ~・・ 沢井、ね
「中里と鈴村もそこにいるのか?」
ーー いや、あいつらは店に直行するって。だからオレがお前を迎えに来た、ってとこ
「いやいや、お前も店に直行しろよ」
ーー だって近くにいたからさ、ついでに誘って一緒に行こうと思って
「いや、待って。オレ、まだ行くとは言ってないけど」
だって今日は・・・
「ブッー」
視界に入ってきた彼女に笑ってしまった
ーー なに?どうした?森島?
「・・ いや、悪い・・」
夏川さん・・
なにそれ?
ジェスチャー?
両手を前に振って、それって
行って行って?って言ってるつもり?
自分のこと指差して
私は大丈夫、ってこと?
面白すぎるんだけどっ・・
「わかった。行くわ。」
ーー ほんとか?じゃあ一緒に
「いや、オレ、マジ寝起きだから、準備して・・ それから行くんで、店、送っといて」
ーー わかった。・・なんだよ、オレ、待てるのに
「悪いな。ちょっと部屋も汚れててさ」
うそだけど
ーー ええーーっ、いつ来ても綺麗なのに?どうかしたのかっ?
「別に何も。俺だってそういうときもある、ってことで。じゃあ、先に行ってろよ?」
ーー あ、あぁ・・ じゃあ、絶対来いよなっ、店、送っとくわ
「おう。じゃ、後で」
プツッ
笹本との電話を切ると、クッションをソファの上におき、立ち上がった
手を伸ばして、タオルケットも拾うとたたんでいく
「ごめん、オレ、寝てた・・?」
いつの間に?
「少しだけよ?」
「これ、ありがとう」
そう言って、畳んだタオルケットもソファの上に置く
「ううん、私の方こそ。貴重な森島くんのお休みをつきあわせちゃってごめんなさい。おかげでめーーーーっちゃ助かりました」
「・・・まぁ、オレも前、貴重な休みをつきあわせちゃったんで」
「いやいや、あんなの、今回の引っ越しお手伝いに比べたら、ぜんっぜんレベル違うから。本当にありがとう。ご飯はまた、いつかお礼するわね?」
「いつか・・ あーそれ、消えちゃうやつじゃない?」
「絶対消えません!!」
「ハハ、冗談。オレも奢るってやつ、消えないから」
「え?ほんとに?やった!あの店行きたかったんだよね~」
「はいはい、しっかり覚えときますんで。じゃあ、・・・そろそろ笹本のやつ、行ったかな?」
「あ、笹本くんたち、待ってるよね?・・・・なんか、ごめんね?」
「なにが?・・・ それより、今夜、何、食べるの?」
「え?私?・・・う~ん・・ ちょっとその辺、散策してみて決める」
「そか。じゃあ、暗くならないうちに気をつけて。」
「ありがと。」
「あ、もし何かあったら連絡して」
「え?・・・ なんか、意外」
そう言うと彼女がくすくす笑った
え?
意外って?
今度は何?
「森島くん、超親切」
「・・・ 超・・ 親切?・・ 言われたことないけど」
「そうなの?・・ ふふっ」
あー
なんで笑うかなぁ~
ムカつくな
オレは人差し指で夏川さんのおでこを
ドンッて押すと
「それ、気のせいだから」
言い放って
バッグを肩にかけると、リビングのドアをあけ
玄関へと歩いて行く
後ろからついてくる足音
あー、おれ
帰るんだ?
玄関に見えた俺のスニーカー
あれ、履いて、あのドア出て行ったら
今度、いつ、ここ、入れるんだろ?
「・・ってオレ、何 考えてんだ?」ぼそっ
「え?どうかした?森島くん、何か言った?」
背中越しに聞こえた夏川さんの声
オレはくるりと振り返ると
すぐ後ろにいた彼女を壁際に押しやった
俺の身体と、壁に伸ばした腕までの間に
すっぽりと入ってる彼女
「・・ 森島くん?・・え?これって壁ドンっ?」
驚きながら俺を見上げる瞳が大きく揺れてる
なのに、何か間抜けなこと言うから
ほんっと、この人、面白い
「そうだね、きっと壁ドンだね」
息がかかる距離
オレは顔を近づけると
おでこをコツンと当てた
「・・ ほんとは俺に行ってほしくない、なんて思ってない?」
「え?」
「・・・・・・・・・・」「・・・・・・・・・・」
「ハァ~・・ オレだけかよ」ぼそっ
オレは、壁から腕を離すと
2歩歩いて
玄関でスニーカーを履く
「じゃあね、夏川さん」
背中越しに手を軽く振って
そのままドアをあけて、玄関を出た
とても振り返れんわ
・
・
・
・
ガチャ
バタンッー
ズズズズーーーッ・・・
私は玄関に座り込んだ
「え?・・・・ どういうこと?」