ここではなんだから、あとで、って会社の子たちには引き下がってもらい

宮下くんにも謝って店を出た

 

ランチをどんなふうにかきこんだのか

まったく記憶に残ってないくらい

 

とりあえず翔琉には連絡をした

 

午後もそのまま外回りをして会社には帰ってこないで、って

 

どうしよう

 

どっち?

 

実はつきあってる

 

つきあってない

 

 

正解は、後者のつきあってない、しかないんだけど

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで?岩田さん、どういうことなんですか?」

 

 

 

話を聞いたのか、会社で私を囲む人数は異常に増えていた

 

 

ちょっとこれ、やばくない?

 

 

「SNSでふたりの写真を見たっていう人もいるんですよ?」

 

「えっ」

 

 

 

ほらぁ~~~

だからやばい、って言ってたじゃないのよぉーー

 

なんて思っても、全てが後の祭り

 

ふぅ~

 

どうする?

 

でもこれ、つきあってないって言うとしたら

じゃあなんで?ともなるんじゃないの?

 

あ~・・

 

私の小さな見栄がこんな大きな事態を巻き起こすことになるなんて

 

それもこれもみんな、翔琉がイケメンすぎるせいだわーー

 

 

・・・ううん、私がバカなせいです、はい

 

ごめんね、翔琉

 

 

私は覚悟を決めて、大きく深呼吸をひとつ

 

 

 

「あの・・・ 実はー」

 

 

 

 

 

 

「なんでこんな騒ぎになってんの?皆、仕事は?」

 

 

この声っー

 

なんで?

戻ってくるな、って送ったよね?

 

なのに・・・

 

 

人混みの向こうから聞こえてきた声

 

私を囲んでいた人たちもくるりと振り返る

 

 

 

「そんなに他人のことが気になんの?」

 

 

「翔琉・・・」

 

 

 

人混みの向こうに見えるよ、翔琉が・・・

 

呆れ気味に怒ってる

 

あれって、ここにいる人たちだけじゃなくて

私にもきっと、向けられてる

 

 

 

「まーいーや、ちょうどいい」

 

 

 

・・・ ちょうどいい?

 

 

 

「社内では迷惑をかけないようにしてくんで、温かく見守っていってやってください。俺らのこと。」

 

 

・・・ へ?

 

 

「うそー!なに?それってやっぱりつきあってるってこと?」

「俺らっていった?」

 

 

ワイワイガヤガヤ

すっごく周りがうるさいけど

 

何も聞こえてこないっていうか・・

 

 

「ほら!香子!おまえも頭下げろよっ」

 

「えっ?頭っ?」

 

 

なんか、人混みを挟んで、頭の上で会話するってなに?

しかもこの会話、なに?

 

 

「あの・・ よろしくお願いします」

 

 

私が頭を下げると

皆のざわざわが、一瞬ピタッと鎮まって

 

 

「はい、解散!みんな、仕事してー。もう午後、始まるよー」

 

 

翔琉がパンッと手を叩いたのをきっかけに

人がまばらに散っていく

 

 

なにこれ、なにこれ

 

腰が抜けそうなんですけど・・・・

 

 

目の前には、翔琉だけになって

 

その翔琉が近寄ってくる

 

 

 

「・・・ ごめん、でもどうして?私、戻ってくるなって・・・」

 

「そうか?俺にはSOSにしか見えなかったけど?」

 

「・・・ 翔琉ぅ~・・・」

 

 

こんなところで

 

会社のロビーで

 

私を泣かせるつもりですか?

 

 

 

ふわっと温かくなって、翔琉の腕の中にいるのを感じる

 

腕の中・・・

 

入れてくれたんだ

 

私が泣いてるの、わかんないように?

 

 

 

温かい・・・

 

温かいよぉ~

 

翔琉・・・

 

 

 

 

 

「・・・ 大丈夫。つきあってる、って言ったわけじゃないから。安心しろ」

 

 

 

 

 

頭の上から聞こえてくる 心地いい翔琉の声

 

 

・・・ つきあってる、って言ったわけじゃない?

 

・・・ 安心しろ?

 

 

翔琉のセリフの意味を考え

 

思い起こしてみる

 

 

 

翔琉、さっき、なんて言った?

 

 

あぁ、そっか

 

 

ほんとだ

 

なんだ

 

私まで勘違いしちゃった

 

 

って、なに?

勘違いってー

 

なんだ?ってなに?

 

 

 

私は翔琉の腕の中を飛び出した

 

 

 

 

「お?」

 

 

「・・・ 仕事に戻るから。」

 

 

「お? ・・ おぅ」

 

 

「じゃ、翔琉も頑張って。」

 

 

「ん。」

 

 

 

あれ?

 

あれれ?

 

何かすっごく恥ずかしいんですけど//////

 

 

私、今までどんなふうに翔琉と話してたっけ?

 

 

 

 

「香子!」

 

 

「え?」

 

 

 

もう、翔琉のところから少し離れていたのに

 

呼ばれて振り返る

 

 

 

「今夜 来たとき、晩御飯作ってよ!」

 

 

はぁ~!?

 

 

「晩御飯っ?」

 

 

作って、って・・・

 

 

「頼むわ、よろしくぅ~~~」

 

 

軽くウィンクをすると手をひらひらって振って、走って行っちゃった

やっぱり午後も外回りだったんだ?

 

 

周りで見てた人、こっちを見てひそひそ何か言ってる

 

わざと?

聞こえるように言った?

 

 

 

 

 

「・・・ ちょっと待ってよ、もう~~・・・」

 

 

 

これ、絶対勘違いされるやつだって