ふぅ~

 

今日は後輩の仕事も引き受けず

自分の仕事もキリのいいところまで片付け

早々に会社を出た

 

チラッとみた森島くんの机の上は

まだ片付いてなかったから

 

社内に残っていたはず

 

 

映画館前のトイレで

化粧直しは軽く・・いや、いつもよりは割と念入りに済ませ

ソファに座って彼を待つ

 

上映時間まであと20分

 

もしかして・・・

やっぱり彼は来ないのか?

 

 

と思ってたら

 

視界の端に

 

おっそろしいイケメンが入ってきた

 

まっすぐ私の方へ・・・

来るのかと思いきや

 

途中で女の子二人組にナンパされとる!!

 

無理無理

その人、塩対応で断るんだから

 

って・・え?

珍しく笑って話してる

 

で?

ご丁寧にも彼女たちに手を振ってから

 

こっちへと向き直ると歩き出した

 

なになに?

変わった?

 

 

っていうか

本当にかっこいいなぁ~

 

ナンパしたくなる彼女たちの気持ちもわかる

 

あ~あ~

 

あの人が、私の彼氏だったらいいのに

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん、遅くなった。時間、大丈夫?」

 

 

私に向かって歩いてきて

 

私に話しかけてくれるだけで嬉しくなる

ダメだ

惚れた弱み

 

「あと20分もない。まだチケット買ってないの」

 

もしかして来ないかも、と思ってたから・・・

 

 

「オケ。じゃあオレ、買ってくる」

 

「待って。一緒に行く」

 

 

ひとりで行かせたら、またナンパされそうだもの

 

 

 

「さすがにもう、人が少ないね」

 

埋まってる席の少なさに、贅沢感が生まれた

 

「ほぼ貸し切り?」

 

「でもひとりで来てる人、数人、いるね?」

 

「でしょ?だからまぁ・・ 慣れてる」

 

ひとりで映画観ること

 

 

「もう慣れないで」

 

 

ドキッ

 

 

なに?

コイツはもう~~

 

いちいち私をドキドキさせてくれる

 

 

 

 

 

 

 

うう~~

 

ユヅルくん

 

まさか、貴方が出ている映画を

森島くんともう一度みることになるなんて

 

夢にも思わなかったよ

 

 

二度目の映画は

 

 

内容なんて

ぜんっぜん入ってこなかった

 

隣の人の足がめちゃくちゃ長くて

何もしなくても当たってしまうこととか

 

森島くんが間に肘置いたら

肩や頭、めちゃくちゃ近づいた、ってこととか

 

やっぱり今日もいい匂い

ってこととか

 

私の全神経は

全力で隣の人に注がれてました

 

 

 

 

「・・・ アイツ、すごいな。ユヅルであって、ユヅルじゃなかった」

 

「でしょう!?もうね、主役よりも記憶に残ったでしょう?途中、もう、ヒロインがこっちに行っちゃってもいいんじゃないの?って思わなかった?」

 

「・・・ それは・・・ 思わなかった」

 

「そうなんだ?・・・うう~ん・・ それはやっぱ、男女の違いなのかな?」

 

「・・ってか、熱量すごすぎ・・」

 

「え?あ、そうだ!!ねぇ、こっちこっちー」

 

私は森島くんの腕をひっぱって

映画のパネルの前に連れて行くと

 

「ここ、ユヅルくんの顔の横で写真撮ろ?」

 

「はぁ?」

 

びっくりしている森島くんにはお構いなしで

私はスマホを取り出し

 

「ほら、いい?はい!」

 

 

カシャ

 

 

「おおーーーっ、いい感じ!見て?3人並んでるみたいでしょ?」

 

撮った写真を森島くんに見せる

 

「・・それ、どうすんの?」

 

「どうって、ユヅルくんに送るの。森島くんと観に行ったよ~って」

 

「ちょっと待て。オレが送る」

 

「え?オレが送る、って・・」

 

「ほら、こっち!」

 

 

カシャ

 

森島くんのスマホで撮られた写真

 

微妙に後ろのパネルとの感じが違うんだけど・・・

 

「・・ ユヅル・・ユヅル・・と・・ ハイ、送った」

 

「え?もう?」

 

「・・・ 見る?」

 

 

森島くんが見せてくれた、ユヅルくんに送ったスマホの画面

 

写真の下

 

『あさひと観てきた』

 

 

画面の文字にドキッとさせられるって

なんなのっ?

 

あさひとー

 

画面の中で呼び捨てにされてるだけなのに

瞬間的にぼわっと熱くなって

 

そのあと、冷静になると

あー、そうだった

ユヅルくんたちの前では私は森島くんの彼女なんだった

って思い出して

 

こんなスマホの画面ひとつで

私は一喜一憂させられている

 

 

落ち着け、私

 

 

「あー、腹減った。・・・ もう、食べに行こ?いい?」

 

「うん、もちろん」

 

 

ねぇ森島くん

 

今日、どうしたの?

いつもより・・・

あれ?

こんなだったっけ?

 

なんか、いつもはもう少し、私との会話って

敬語が出てたような気がするんだけど・・

 

~ですか?とか

 

今のだって、いつもなら

『食べに行きます?』とか言いそうなのに・・・

 

なんか・・・

彼女みたいでこそばゆいんだけど

 

ちょっとだけ

勘違いしててもいい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?今日、カウンター、座るの?」

 

「そ」

 

 

森島くんが店に入るなり

狭いカウンターに座っちゃうから、びっくりした

 

だって、いつも座るテーブル席はまだ空いているんだもん

 

カウンター席だと

狭いから・・・・

 

 

「どしたの?座って?」

 

「じゃあ・・」

 

 

少し背伸びして、カウンター席に座ると

ほらね?

足も当たるし

身体だって・・・

ほぼほぼ、コツンコツン、当たるよ?/////

 

私は別にいいけど////

 

嫌じゃないの?

 

 

 

「マスター、今日、俺の奢りだから、安いやつ出して」

 

え?

 

「ちょっと!」

 

「うそうそ、ハハッ・・ 今日のおすすめ、適当にお願い」

 

「はいよ」

 

「飲み物、どうする?」

 

そのどうする?っていうのは

アルコールを入れるか入れないか?

 

 

「う~ん・・ 木曜だから、最初の一杯だけ、いただこうかな?」

 

「じゃ、オレも」

 

 

だって

お酒の力を借りれば

 

身体がちょっと揺れても

許されるじゃない?

 

だからって

酔っぱらうほどは飲みたくないし

 

だから一杯だけ