「あれ?武田は?」

 

 

もうすぐ、丸々堂から返事がくるっていうのに

さっきから武田の姿が見当たらない

 

 

「あ、斉藤君が連れていきましたよ」

 

 

「斉藤?」

 

 

誰だ?

聞いたことないな

このプロジェクトには関わってない奴か

 

 

「武田さんの元カレですよ~。斉藤君がこっちに異動になって別れたんですって。遠恋が無理だったみたいで~ 斉藤君、それからずっと本社に異動希望出してるみたいですけどね~」

 

武田の元カレ!?

 

そんな奴がいたのかっ?

聞いてないぞ

 

・・って・・

 

まぁ、今までそんな話する機会なんかなかったしな・・・

 

いや、でも元カレって・・

斉藤?

どんな奴だ?

遠恋が理由で別れたってことは嫌いで別れたわけじゃないってことか?

 

 

「・・・ 松永さん?」

 

 

「んあぁ~?」

 

「松永さん、彼女いないって本当ですか?」

 

 

うわっ

 

いきなり、覗き込むように近づかれてたっ

何だ?この子・・・

 

 

「・・・ あぁ、そうだけど・・?」

 

 

「ええーーーっ、ほんとですかっ?」

「松永さん、好みのタイプは?」

「年上、年下、ダメとかありますっ?」

ドドドドドーーッ

 

「うわっ・・」

 

 

突然、人が押し寄せてきた

 

どこから?

え?

 

 

「おーおー、やっぱ、ここでもモテてんなぁ~」

 

「石田!」

 

同期の石田だ

S支社にいるのはわかってたが

今までプロジェクトにかかりっきりで全然会えてなかった

 

「二階堂の話、びっくりしたわ~」

 

「だろ?」

 

 

俺たちが話し出したから

自然と皆、離れて行ってくれた

これってやっぱ、助けてくれたのか?

 

 

「俺もびっくりよ。突然聞かされてさ~」

 

「おまえはどうなん?夏川とつき合うとか、やっぱないわけ?」

 

「あ~・・・ それな、ないわ。」

 

昨日、フラれたばっかだよ

 

「でもあいつも独身なんだろ?」

 

「ん。」

 

好きな奴はいるみたいだけどな

 

「じゃあオレ、今度狙っちゃおうかな、この前彼女と別れたばっかなんだよね~」

 

「は?・・・ まぁ、無理だろうけど、頑張れよ」

 

お前もフラれろ

 

「おう。ってことで、今度、楽しみにしてっから。幹事よろしく!」

 

「おう。また連絡するわ」

 

 

 

さて・・と

 

そろそろ丸々堂から連絡が来るはず・・・

 

 

 

「松永さぁーーーーん!!やりましたっ!!丸々堂さんからっ!うちにお願いしますってー」

 

 

「おおーーーーっ、マジかっ!!」

 

 

すごい歓声が上がった

 

他部署の方からも大きな拍手が鳴りやまない

 

 

「松永・・。やっぱ、おまえ、すげぇわ。大変な仕事だったってこっちでも噂にー」

 

「・・・悪いな、石田。話はまた今度ー」

 

 

オレは動き出していた

 

 

 

どこだ?

 

どこにいる・・?

 

 

丸々堂の仕事、獲れたぞ?

 

 

この喜び、一番にお前とー

 

 

 

・・・ いた!!!

 

「武田っー」

 

 

 

 

「あ、松永さんっ!聞きました?今、ーー」

 

 

 

ガバッー

ぎゅ~~~~っ

 

 

 

オレは武田を抱き締めた

 

「・・っ 松永さんっ!?」

 

「やったぞ、武田!!俺ら、やったぞーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ ったく。部長も鬼だよな、すぐ本社に戻れって・・・。おかげで打ち上げ、出れなかったじゃねーか」

 

「出れなくてよかったです。松永さんがあんなことするから、すっごい恥ずかしくて、あのあと、どんな顔をして打ち上げに出たらいいのかわかりませんでしたからね。部長に感謝です。」

 

「・・・ 悪かったよ、だって、真っ先にお前と喜びを分かち合いたかったからさぁ?」

 

「それはありがたいですけど、あれは行き過ぎだと思います」

 

「だから悪かった、って謝ってるだろうが・・」

 

 

 

部長に丸々堂の結果報告の電話を入れると、無情にもすぐ本社へ戻ってこいと言われ

私たちは新幹線に乗っていた

 

もうっ

松永さん

 

普通すぎるんですよ

 

 

やっぱり、覚えてないんだろうなぁ・・

 

私なんかあのあと、結局眠れなくって

すっかり寝不足ですよ

 

ふわぁ~・・・

 

あ・・

睡魔が・・

 

 

 

「・・・ なぁ、武田。」

 

 

「・・・ はい?」

 

 

頭がぼぉ~っとしてきた

 

 

「その・・ 斉藤ってやつと、何を話してたんだ?」

 

「・・・・・ 斉藤?」

 

 

斉藤って・・言った?松永さん・・・

斉藤って、あいつのことかな?

 

あ~・・

ダメだ・・・

 

も、目、あけてらんない・・・

 

あーー・・

 

松永さんに話しかけられてんのに・・・

 

 

「元カレ・・ なんだってな?そいつ。」

 

 

え~・・・ 元カレって言った?

なんでそんなこと、松永さんが知ってるの・・?

 

ふわぁ~~・・・

 

「・・・・・・・・」

 

 

「もしかしておまえ・・・ そいつと・・・ 」

 

「・・・・・・・・」

 

 

「・・・・・ って、武田?」

 

 

ガクッー

 

「うおっ!」

 

 

寝てるっ!?

こいつ・・・

 

武田の ガクンッと項垂れた頭を手で受け止めると

そのままゆっくり

俺の肩に、もたれかからせた

 

 

「・・・ 寝てんのか・・」

 

 

 

もしかして、昨夜

 

眠れなかったのか・・?

 

 

それってやっぱ

 

 

俺のせい?

 

だったり・・・ する、よな

 

 

ああああああああ

 

 

酔っていたとはいえ

 

いや、酔ってたからって許されないだろ

あんなことするなんて

 

上司失格だよな?

 

セクハラで訴えられてもしょうがないくらいだ

 

今朝、おまえから何て言われるんだろうか?って

 

びくびくしてたけど・・・

 

お前は朝から全然普通に接してくれた

いつも通りに

 

それって・・

 

昨夜のこと

何もなかったことにしてくれようとしてるんだろうなぁ

 

ふわぁ~~・・・

 

 

なぁ武田・・?

 

 

実はオレも

 

 

寝不足