ドンドンドン
ホテルの部屋のドアを叩く音が聞こえた
え?
誰?
そろ~っと近寄ってみる
ドンドンドン・・・
「・・・ 武田ぁ~。・・・ オレ・・」
・・・ 松永さん?
私は急いでドアをあけた
「お~・・ 武田ぁ~・・・・オレの部屋の酒がなくなってさ~・・ 」
入ってくるなり松永さん
抱きついてきた
珍しい・・・
けど、
酒くさっ!!
「・・どうしたんです?・・・ 打ち上げは明日するんじゃなかったんですか?」
抱きついてきても
決して力を入れるわけじゃない松永さんを
抱き締めてあげてもいいのか悩む
打ち上げのお酒じゃないことは
顔を見ただけでわかってた
何か・・・
あったんだ
松永さんにお酒を飲ませてしまう何かが・・・
「打ち上げ?・・・あ~・・ 打ち上げね~・・ じゃあ、武田もつきあってくれる?ふたりで打ち上げやろう」
そう言うと松永さん
ガバッと離れて、部屋の中へと入っていき
とっととベッドに座ってしまった
まだ飲むんですか?
「・・・ じゃあ、少しだけですよ?」
私は冷蔵庫からビールを2本出すと
1本を松永さんに渡した
プシューッと音がして
開けたビールを飲みだす
それを見ながら、ソファへと座ろうとした
「んあっ?そっちじゃないだろ、武田。こっち!!」
「はいっ?」
松永さん
自分が座る横を、ぺんぺんって叩いている
「こっち、こっち!!ほらっ、はやくっ!!」
「・・・・・」
誰ですか?
この可愛い人は・・・
わかりましたよ
それでも、少し距離を置いて、座ると
「なんだよ、なんでそんな離れんの?ふぅ~ん・・いいよ、じゃあー」
ぽすんっ
「・・・・・・・」
え?
ええーーーーーーっ
松永さんが、私の膝の上を枕にするようにして倒れてきた
「・・・ どういうことですか?これは・・・」
「あーこれ、ちょうどいいや・・・・」
いや
いやいやいや
ちょうどいいとか、何が?
「・・・・ オレさぁ~・・ フラれちゃったんだよね・・・」
「・・・・・・・・」
プシューッと私は手に持っていたビールを開けると
ごくごく飲み始めた
「・・・ 慰めてよ、武田・・」
ふぅ~~・・
「大丈夫です、松永さん。どんなに今が辛くても、夜明けの来ない夜がないように、必ず明るい明日が来ますよ」
「・・・・・・・・・」
「・・・ 松永さん?」
「・・・・ もっと。・・・ もっと慰めてよ・・」
「もっとですか?・・・・うう~ん、しょうがない。では、松永さんのいいところを思いつく限り言っていきます」
「ブハッ・・おっまえ、何だよ、それっ・・・ ビールこぼすだろっ・・」
「じゃあこれ、もう取り上げちゃいますね?」
「えっ?」
私は松永さんの手からビールを取り上げると
そのまま手を伸ばして、台の上にビールを置いた
「じゃあ、松永さんはそのまま、ゆっくり目をつむって聞いていてくださいね?」
「・・・・ん」
武田が腕を伸ばしてビールを台の上に置くとき
背中が押されるようにして・・
そのまま肩にむにゅッと・・
柔らかい感覚があって
ちょっとヤバいことになりかけてる
「まず、松永さんはかっこいいです。」
ボワッ(〃▽〃)ポッ
うわっ・・
なんだこれ?
「仕事が出来る!」
「自分もめちゃめちゃ忙しいのに、部下の仕事量もちゃんと把握して、振り分けてる。無理している人がいないよう、気を配ってる、この、声をかけるタイミングが絶妙なんですよね」
「・・・ そうか?(〃▽〃)ポッ・・ 普通だと思うけど・・・」
なんだよ、もうっ・・・
そんなふうに見てくれてんのか?
俺のこと・・・
恥ずかしいけど
正直、もっと聞きたくなる(〃▽〃)
「他部署の人へのフォローも凄くて、出張とか行くと、ちゃんとお土産を買って帰る。あ、明日も買って行きましょうね、部長にも忘れずに」
「・・・・ それは、お前がそうやって言ってくれるからだろ」
「私がいつもついて行ってるわけじゃないじゃないですか。あ、取引先へのフォローも素晴らしいです。仕事があるときだけじゃなくて、ないときにも定期的に声をかけて、近くを通れば顔を出してる。」
「普通だろ、それこそ」
「そんなことないですよ?皆、仕事をしている時だけになってしまいがちですもん。忙しいと日々に追われますから。だから、松永さんを見ていると、すごく勉強になります」
「ハハッ・・」
やばいな、これ・・
気持ちいいかも・・
武田がゆっくり肩をポンポンってしてくれるのも
そのリズムが絶妙で
うとうと・・ してくる・・・
「・・ 嬉しいけど、なんかおれ、仕事人間みたいだな・・・」
「違いますよ、仕事も出来るかっこいい人です!めちゃめちゃモテますよ?今回もS支社で、松永さんのことカッコイイって騒いでいる人たち、いましたよ」
「そうなの?・・・全然気づかなかった・・・ じゃあオレ、まだイケるのかな?・・」
「全然イケますよ?だから最初から言ってるじゃないですか、明るい明日がやってきますよ、って」
「ハハ・・ なんか、いいね・・・」
明るい明日かぁ~・・・
ふわふわしてきた・・・
「どうです?これ、弟にしてやると、すごく喜ぶんですよ」
「弟ぉっ!?」
「はい、弟は、落ち込んだり嫌なことがあると、これやって~って私のところに来るんです。」
「・・・・ へぇ~・・」
オレは弟と一緒かよ"(-""-)"
「でも、弟以外の人にやったのは初めてです。喜んでもらえたらいいんですけど・・」
ふぅ~ん・・・(*^-^*)
弟以外の人には初めて、なんだ・・?
「・・・ 喜んだよ、すっごく・・ このまま眠りたいくらい・・」
「えっ?このままっ?松永さんっ!?ちょっと待ってください!寝るなら自分の部屋に戻らないとっ!松永さんっ!!?」
バンバンバンッー
「いててててっー」
さっきまでポンポンって優しく撫でるようにしてくれてたのにー
ぐいっー
って力強く肩、掴んで起こされた
ベッドに座って
向き合う
「はい、起きて自分の部屋に戻って寝る!!」
「・・・・・・・・・」
やっと視線が合った
なんだよ・・
いつも後ろでひとつに束ねている髪
おろしてたんだな
「・・・ 可愛い」
オレはゆっくり顔を近づけると
ちゅっ
その唇にキスをした
「・・ おやすみ、武田」
キス・・・
した?
松永さんが
私に・・?
なんて固まっている間に
松永さんは何事もなかったかのように
すっくと立ちあがって
私の部屋のドアを開けて出て行った
「・・・ 可愛い、って・・・/////////」
あれって、私のことですか?
うそうそうそうそ・・・
嘘ですよね
あ~・・
松永さん、酔ってたんだった・・・
うぬぼれることなかれ
平常心、平常心
私は台の上に手を伸ばし
ビールをぐびっと飲み込む
「・・・あっ、これっ、松永さんの!!」
やば・・・
間接キス・・
って、キスしてるのよー!!
「いやいや、平常心、平常心・・・・」
すぅ~~~
はぁ~~~
ごめんなさい
松永さん・・・
フラれたって
夏川さんに、ですよね?きっと・・・
あんなに酔うほどショック受けておられたのに
私・・・
内心、喜んでました
すみません
すみません
あんなの、きっと
明日目が覚めたら
覚えておられませんよね?
酔った勢いで、ちょっと魔が差した、ってやつですよね
大丈夫です
私もちゃんと、なかったことにします
でも
忘れません
それくらいは、ゆるしてくださいね?
松永さん・・・