「おかえりなさぁ~~~~い!!!!」
パンパンッとクラッカーも鳴る
無事にプレゼンを終え、S支社に戻ると、チームメンバーが出迎えてくれた
「・・・おいおい、結果が出るのは明日だぞ?」
「リモートで見てましたけど、うちのが一番でした!!」
「そうですよ!BB社よりずっとよかったですっ!」
「それ、元々俺らが作ったやつだったけどなっ」
「アッハッハッハッ・・」
やっと皆に笑顔が生まれた
先週、俺と武田がここに着いたときは、全員、とても見れたもんじゃなかった
ひどい顔してたからな
「いや~、ほぉ~んっと、松永さん、すげぇっすよ!!」
「言葉遣い~!」
「そうだぞ、そんな言い方してると、また武田さんに怒られるぞ」
「すいませんっ」
「・・・ すみません、ね」
「あ・・・」
「まぁ最近は、すいません、も口語で認められてるようですが、私は使いません」
「はいっ、すみませんっ!」
ハハハ
武田、それくらいにしてやれよ
「ほいっ、みんな、聞いてぇー」
オレはパンッと手を叩いてメンバーを招集した
「まだ明日の結果が出てみないことにはわからないが、皆、本当によくやってくれた」
「そんなっ、俺たちは松永さんに従っただけでー」
「それは違う。君たちがいてくれたから、あそこまでのものが出来た。オレは最後、美味しいところを持って行っただけ」
「確かに」
ハハッ、武田
ナイス相槌
「ということで、土日も働いてくれたんだ。今日は早く帰ってゆっくり休んでくれ。そして、明日の結果がどうであれ、パ~~ッと打ち上げをやろうじゃないか」
「おおーーーーーっ!!」
「よしっ!じゃあ、解散っ!お疲れさんっ!!」
「お疲れ様でした~~」
ふぅ~~・・・
「・・・ お疲れ様でした。松永さんも早くホテルでゆっくり休んでください。ここ一週間、ほとんど寝ておられませんよね?」
「あぁ・・ 今、布団に入ったら、秒で寝れる自信あるわ」
「じゃあ早くホテルへ。ここはあと、私が片付けてー」
コトン
武田の肩に頭を乗せる
「お前もだろ、武田。」
「えっ?・・ 松永さんっ?」
「ふぅ~・・ ちょっと休憩」
「休憩っ?」
よしっ!
顔を上げると、自分の上着と荷物を持ち
ぐいっと武田の腕を引っ張ると、「ほら、荷物持って?」
彼女にも促す
「片付けなんか、明日でいいから」
「えっ?でもっー」
「でもじゃない。お前も帰って休むんだよ。これは上司命令だ」
「・・・ はい」
・
・
・
・
・
「・・・ じゃあ、ゆっくり寝ろよ」
「松永さんも」
ホテルの部屋の前
隣に並んだふたつのドアに
お互いルームキーをかざし
空いた音を確認すると
中へと消えた
バタン
一気にベッドへとダイブした
かすかなバウンドが心地いい
身体の向きをかえ
天井を仰ぐ
はぁ~・・・
疲れた・・・
けど、ミッションをやり遂げた妙な高揚感があって
実は不思議と睡魔には襲われていない
が、オレが帰らないとアイツは絶対帰りそうもなかったから
強引に連れて帰った
俺の我がままで、かなり無理をさせた
オレ以上に寝ていないはずだ
とにかく休ませたかった
「月曜かぁ~・・・」
夏川、引っ越し、無事に終わったかなぁ~・・・
オレはスマホを取り出すと
夏川の連絡先をポチッと押した
♪~♪~~
ーー はい
「あ、オレ。松永だけど」
ーー うん、元気?なんか大変なんでしょう?大丈夫だった?
「あー・・ 結果は明日なんだけど、とりあえずやるだけやった。」
ーー そっか。お疲れ!
それだけ?
おれ、結構頑張ったんだけど
「そっちは?引っ越し・・ 手伝えなくてごめんな?無事に終わった?」
ーー うん、大丈夫だよ。無事に終わった
あ~・・なんだろ
やっぱ、こんなテンションで電話するんじゃなかったかなぁ~・・
「帰るのは明後日になると思うんだけど、夏川のとこ、行っていい?」
あ、困ってる・・?
返事ない・・
「あー、・・ 明後日が無理だったら別の日でもー」
ーー ごめん。松永。部屋は無理。
部屋は・・ 無理?・・って?
やだな
なんか・・
「なんだよ、引っ越し、手伝わなかったから怒ってんのか?」
ーー そんなことないよ。大丈夫だって言ったでしょ?そうじゃなくて・・・
あ、嫌な予感
「夏ー」
ーー ごめん、松永とはつきあえない
ほらな・・・
電話、するんじゃなかった・・・
「つきあえない、て・・ なんで?」
ーー ごめん
「ごめん、じゃなくて。理由、あるだろ?俺とつきあえないって・・ なんで?」
ーー 好きな人が、できた
好きな人・・・?
「・・・ そいつと、付き合うの?」
ーー 私の片思い
片思い?
「は?だったらー」
ーー でも無理なの。他の人とか、考えられない。
おいおい、誰だよ
夏川にここまで言わせるの
めちゃくちゃ嫉妬するわ
「・・ そんな好きなの?」
ーー うん
はぁ~
俺に言って欲しかったわ
あ、言われたことあったか
「もう、絶対、ダメなの?」
ーー うん
「待ってる、って言っても?」
ーー ごめん。松永なら、もっといい人がいるから
「お前が言うな」
ーー ごめん
あ、これ以上言ったらコイツ、泣くかも
いや、もう泣いてんのかな
ーー 泣いてないよ?
エスパーかよっ
「なに?急に。」
ーー 松永、私のこと美化して、泣かせてるんじゃないかな?って思ってそうだったから。そんな弱くないし。
美化?・・・ ふぅ~ん・・
「なぁ?」
ーー うん?
「あの時、もしオレがおまえとつきあってたら・・・ 今頃、結婚してたかな?」
・・・あ、返事ないわ
「わりぃー」
ーー してたかもしれないし、別れてたかもしれない。それはわかんないよね
「・・・ だな」
ーー ねぇ、松永?
「なんだよ?」
そんな耳元で甘い声、聞かすんじゃねーよ
ーー 松永にはね、私よりいい人がほんとにいると思うよ?
はいはい、振るときの常套句だろ、それ
何度も言うな
「しつけーよ」
ーー アハハッ ごめんごめんっ
「おまえさ、そいつにフラれたらどうすんの?もう30だろ」
ーー まだ28!!・・・まぁ、今度の誕生日で29だけど・・
誕生日、祝ってやりたかったのになぁ~
さすがにそういうわけにはいかないか
ん?でもまだ日にちあるから、ほんとにこいつ、ふられてたりして?
「なぁ、誕生日、もしフラれてたらー」
ーー 松永。さすがにそんな虫のいいことは言わないよ。それにまだまだあるんだから、そんな怖いこと言わないでよ
「そっか。じゃあ、俺を振ったこと、後悔して過ごせ」
ーー わかった、そうする
もう、全然無理なんだな・・・・
「・・・ じゃあ、切るわ。さすがにねみぃ・・」
ーー あ、うん、ごめんね。おやすみ。ゆっくり休んで
「・・・ おやすみ」
ふぅ~・・・
「・・寝よう。・・うん、寝て忘れよう、な」