なんで私、すぐに返事が出来なかったんだろう

松永からの告白に

うんってうなずくだけでよかったのに

 

あのあと、電話をかけてきた茜にも

びっくりされた

 

ーー なんですぐにつき合わないの?

 

ほんと

なんでだろう

 

何年も前にフラれてから

恋愛対象としては見ないように、って強制的にだけど

外さなきゃ、って思ってしまったからか?

 

嬉しいか嬉しくないか、で言ったら

間違いなく、嬉しい

ドキドキも、した

うん、流されてキスしちゃったくらいだし

 

でも、松永が

急にオトコ出してきたのには

正直戸惑ってしまった

なんて言ったら、ずっと男だけど?って突っ込まれそうだけど

 

 

「夏川さん、今日も社食、行かないんですか?」

 

言われて気づく

もう昼休憩か

しかもまた、出遅れてる

残っていた彼の声

 

「森島くん・・は、今日もコンビニ?」

 

座ってる私

立ってる森島くんとは余程見上げないと全く視線が合わない

視界に入るのはせいぜい腰くらいまで?

 

「給料日までは。・・って、あと2日ですけど」

 

 

社食はねぇ~

茜も、遂に解禁したようで、今日は同じ部署の人たちと外でランチだって言ってたから

社食に行ってもし松永と顔を合わせたら、どうしたらいいかなあ

って気持ちがある

 

でも今日はあんまり姿を見てないから

もしかしてどこか出先?

 

 

「夏川チーフ、受付からで、お客様だそうです。」

 

内線を取った女の子が、そう呼んでくれた

 

「お客様?」

 

私に?誰だろ?

今日は来客予定、入ってた?

 

「新見さんって言う男の人だそうですけど、なんかちょっと怪しい雰囲気だとかでー」

 

にいみ?

にいみ、にいみ、新見!?

 

そうだっ!!忘れてたっ!!!

 

「行くっ!すぐ行くって伝えて!!」

 

「え?新見って・・」

 

立ち上がると、もう 少し出口に向かって歩き始めていた森島くんが振り向いて

呟いたのと目が合った

 

とりあえず、財布とスマホ!

手にとって、私はフロアを早足で抜ける

 

忘れてた、忘れてた

なんで忘れてたのよっ

すぐ連絡するつもりだったのに

色々考えてるうちに

 

もっとすごいことが起きちゃって

すっかり忘れてた!!

 

 

エレベーターまで行くと

森島くんも乗り込んで来た

 

「大丈夫、私に用があるってことだから」

 

気になるって顔をしている森島くんに

見上げてそれだけ言う

 

「だからなんで?」

 

なんで?って・・・

 

エレベーターの中には他にも人がいて

森島くんが乗ってきたとき

軽くキャッと喜ぶ女の子の声がした

 

だから、変なことは言えない

親しすぎるのもダメだ

 

 

「っていうか彼、大丈夫なの?こんなところ来て・・・」

 

バレたりしてないかしら?

 

「そんな心配、してる場合かよ」

 

森島くんの言葉に

親しそうにしないでよ、とばかりに睨みつける

 

 

エレベーターが1階について、後から乗ってきた人たちが降りると

私は小走りで受付へと向かう

 

後ろからめちゃくちゃ近い足音も

 

 

 

「あのっ、すみません、夏川ですけどー」

 

受付で名前を言うと

 

「あさひさーーんっ!こっちこっち!」

 

 

ロビーの方から声がして

振り向くと、そこには背の高いサングラスをかけた男の人が立っている

 

ーー なんかちょっと怪しい雰囲気だとかで

 

って言ってたの、そういうことか

なるほど、確かに

でも彼ならしょうがない

サングラスくらい、しないとね

 

 

「ユヅルッー お前、どうしたんだよ?」

 

「あれ?なんで快まで来ちゃうの?オレ、あさひさんに、って言ったのに」

 

「森島くん、名前、呼ばない方がいいと思う」

 

森島くんのシャツ、引っ張って小声でつぶやいた

いつの間にか、私より先にユヅルくんのそばに行ってるんだもん

 

「あ、・・・そか」

 

「いやいや、そんな知名度ないって」

 

「にしては、サングラス」

 

「これは、かっこつけてるだけ。」

 

「でも、気をつけるに越したことないでしょ。っていうか、どうしてここ、わかったんですかっ?」

 

「あ、また敬語だ。そんなさ~ 快と同じ会社だって言ってたから、隆哉に聞いてきた。言ったよね?オレ、連絡くれないと~、って」

 

あ、そうか

そっちから繋がっちゃうんだ

 

「ごめんっ!ほんとうにごめんっ!連絡するつもりだったんだけどちょっと色々あって、バタバタしてて・・でもまさか、こんなにすぐ来るなんてー」

 

「そうなんだよね、実は近くで仕事あったからさ、ちょうどいいや、って」

 

「おい、連絡くれないと、ってのはなんだよ。お前、この人になんか言ったの?」

 

「・・『この人』?自分の彼女のこと、そんな風に呼んでんの?この前はあさひ、って呼び捨てしてたのに」

 

「っ!」「っ!!」

 

ゲゲゲゲッ

森島くぅーーーーん

 

「それは・・」

「会社では内緒にしてるのよっ・・・ ほら、森島くん、このとおり、めちゃくちゃイケメンでモテるでしょ?こんな人が彼氏だなんて言ったらもう~ 私、女子社員から袋叩きにされちゃうわ」

 

何か言いかけた森島君の言葉にかぶせるように、釈明した

 

「 『森島くん』・・ ふぅ~ん、秘密にしてるんだ?会社では。なるほどね~、それは随分萌えるね、秘密の社内恋愛ってやつ?」

 

 

ふぅ~

何とか誤魔化せた?

 

 

「でもさ、さっきから俺ら、めちゃめちゃ注目浴びてる感じだけど?」

 

・・え?

 

ユヅルくんに言われて振り返ると

 

確かに!!

なんか、受付の方から、こっちを見る人だかりが出来てるっていうか・・・・

 

昼休みで外に行こうと降りてきた人たち

逆に戻ってきた人たち

 

立ち止まってこっちを見て、何か話してる?

 

 

 

「・・・ どうする?」

 

森島くん、皆には背中を向けたまま、身体を傾けて私に聞いてくる

私も振り返っていた身体を元に戻すと

皆には背を向け

 

「どうする?って言われても・・・ どうしたらいいの?」

 

同じように森島くんに応える

 

大失敗だ

すぐにユヅルくんを連れて外へ出ればよかった

 

 

「快、お前が先にどっか行けばいいんじゃないの?オレ、あさひさん、呼び出したわけだし」

 

 

「・・・・・・」

 

それで・・ 解決する?

 

「3人でここに居続ける方が、あんたら、怪しまれるんじゃない?」

 

確かに!

「・・・・ そうかも」

 

「そうか・・?」

 

「森島君は、ユヅル君とたまたま知り合いだったってことにしよう。それで挨拶だけして、去る、ってことで。」

 

「オレの方が同級生なのに?・・・ま、いっか。同級生だから、挨拶に寄ったってことにすれば。わかった。でも・・・ 大丈夫?」

 

「え・・?」

 

「コイツとふたりで。」

 

 

あ、私のこと、心配してくれたの?

 

「何を心配してんだか。大丈夫に決まってますよ?俺は紳士なんでね」

 

「どの口が?」

 

「だから早く行け!って。」

 

「・・・・・」

 

「森島くん、私なら大丈夫だから行って。これ以上注目浴びないうちに早く」

 

「じゃ、何かあったら呼んで」

 

そう言って行きかけた森島くん

私の横で立ち止まると

 

かがんで私の耳元で

 

「・・・ 後で教えて」

 

 

私をドキッとさせて、歩いて行った

息がかかった耳、あっついじゃないのっ///

 

心臓に悪い・・・

 

 

「・・・・ったく。アイツ、過保護すぎじゃない?よっぽどあさひさんのこと好きなんだね」

 

えっ?

好きっ!?

 

「いやいやいや、ないないない」

 

「・・・・・ ない、って・・ 彼女なんでしょ?」

 

あ・・・

 

「・・ でした。」

 

「ハハハハッ!やっぱあさひさん、面白いわ。」

 

「面白くはないでしょ。」

 

「あ、それより大事なこと忘れてた。オレ、あさひさんに俺の演技、見てもらって、色々感想聞かせてほしいんだよね」

 

「はぁ?ええっ?なっ・・・」

 

何をおっしゃいますか??

 

「演技の感想って、こんな素人の意見・・・」

 

「いや大事。素人から見てどんな?って話。ちゃんと伝わってんのかな~?どんなかな~って気になるでしょ。」

 

「だからって私なんかー」

 

「いやいや、ひとりであの映画見てくれるほどだから?色々見てるんじゃないかな~って思ってさ」

 

うっ・・・

それは・・・

確かにそうなんだけど・・・

 

「それでコレ、オレが今まで出た作品の、持ってきた」

 

ユヅルくんは、肩にかけたリュックをおろし、中から袋の包みを取り出した

 

「え?」

 

ユヅルくんの作品っ!?

 

「ちょっとしか出てないのとかばっかだけど・・・見て、感想もらえたら嬉しい」

 

「いいのっ!?嬉しいっ!」

 

「・・・・え?」

 

「動画とかで捜そうと思ってたのよね、映画観たあと。色々検索してたんだけど、ユヅルくんの出てる作品 なかなか見つけられなくて・・だから嬉しい!!」

 

「・・・ マジで・・・?」

 

「ファンだ、って言ったじゃない!主演より断然よくて、感情移入しちゃって・・・ 最後には応援してたんだもん、すごいよ。漫画読んでるときは断然あの主人公の方推しだったのに」

 

「待って待って、あさひさん・・ 改めて聞くとちょっと・・ 嬉しすぎて照れるんですけど/////」

 

しまった・・!!

私の熱い想いが・・・

 

「ごめん、でもね、決してお世辞とかじゃなくてね?」

 

「うん、わかる。だからオレも、聞かせてほしくなったんだよね」

 

「うう~・・ ほんとにいいの?私なんかで」

 

「あさひさんがいいの!じゃ、スマホ出して。」

 

「え?」

 

「そこ、手に持ってるでしょ」

 

あ・・・

そうだ、財布とスマホ、持ってきてます、はい

 

私はスマホをユヅルくんに手渡す

 

「・・・・ はい、これでOK。俺の連絡先、入れといたし、俺のにも、あさひさん、入ったから」

 

「すごい・・ 芸能人の連絡先」

 

「ハハハハハ、そこ、今更?」

 

 

ブーブーブー・・・

 

「あ、・・・ マネージャーからだ。ごめん、行くわ」

 

「うん、頑張ってね」

 

 

バイバーーイ、って手を振る

 

今夜の愉しみ、できちゃった

(* ̄▽ ̄)フフフッ♪