「松永さん、何だか今日はご機嫌ですか。いいことでもあったんですか~?」
後輩たちからの指摘に
やばい、オレ、顔に出ていたか?
と焦る
「いや、別に。何も?」
これで何人目だ?
「そうですか?どうでもいいですけど、ケアレスミス、量産しないでくださいね」
「武田?・・ オレ、そんなケアレスミスするか?」
「松永さん、こんな感じの時、集中力が切れてケアレスミス、おきがちです。気づいてませんでしたか?」
そうかのか?
武田に言われるとなんか・・・ そうなんだろうな
って納得してしまうわ
オレ以上に俺のことを把握している部下だな
「とにかく!そういうことなんで、気をつけてくださいね。今日は10時にN社の専務に再プレゼンしに行くんですよね?」
「あぁ」
「私も同行します」
「は?いいよ、俺一人で大丈夫」
「普段の松永さんならそうですが・・ ミスの許されない今日は、念のためです。従っていただきます!」
普段なら、って・・
オレ、今日、そんなヤバいのか?
「松永さーん、武田がそう言ってんだから、今日は一緒に行ってくださーい」
「そうですよー。武田に任せておけば安心安心」
おまえら・・・
上司は俺だぞ?
ま、確かに・・
こいつらの言うことはもっともで
武田に任せておけば安心
それはオレも同感だ
「じゃあ、頼む」
「・・・ ハイ、行きましょう!」
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「なんだか私、最近よく、松永さんにご馳走してもらっている気がするのですが・・」
「いや、もう、ほんと助かった!!武田がいてくれなかったらN社の件、絶対失敗で終わってたと思う。面目ない」
大事な添付資料忘れてくるとか、ないだろ
途中で説明に詰まるところもあったし
武田のフォローがなかったら、と思うとゾッとする
今日のオレはプレゼンテーターとして最低だった
お詫びに、いや、お礼に、と
N社を出るともうお昼だったこともあり、武田と近くの定食屋に入った
「いえ。そのために私が同行したのですから、全然大丈夫です」
「や、確かに集中力が欠けてた。すまなかった。」
「松永さん。部下が上司のフォローをするのは当然です。いつも、松永さんには、それ以上のことを教えてもらってますから。それに、そこは、すまなかった、ではなくて、ありがとう!ですよ?」
「でもなぁ、それを言うなら、上司が部下のフォローをするのが当然だろ・・。ほんとにお前には助かるよ、・・・ ありがとう」
「はい。そっちの方が嬉しいです」
「・・・・」
「ほんとに何かあったんですか?昨日。すぐ帰られましたよね?」
「・・ あ~・・」
「あ、言いたくなかったらいいです!っていうか、言わなくていいです!もし、言いたかったら言ってください、聞きますよ、ってくらいで」
いつも冷静な武田が、たまにこうして焦ったようにしゃべると
可愛く見えるな
「まぁ、あった、と言えばあったし、なかった、と言えばなかった・・・かな?」
夏川に告白することはできた
昨日、あの店で話を聞いている限り
オレはてっきり、付き合えるんだと思ってたんだが・・・
夏川の返事は昨日は貰えなかった
「・・・ はぁ。なんです?それ」
「ハハ、わかんね~よな~?」
オレもわからん
女心ってやつは・・・
まぁ、長年同期でやってきて、いきなり告られても困るか
断られなかっただけ
脈ありと思って待つしかないんだろうけど・・・
「武田って、つきあってるやつとかいるのか?」
突然、気になって聞いてみた
「いませんけど、それ、セクハラじゃないです?」
「あ、悪い」
そうだそうだ、最近はこんな発言はヤバいんだった
「もしかして、彼女さん、出来たんですか?」
・・・?
「出来てませんけど、それ、セクハラじゃないです?」
「っ//////////」
武田の真似して、返してみたら
真っ赤になりやがった
「信じられません、それ・・//////」
「アハハ、悪い悪い。なんかお前見てたら、つい、からかってみたくなってー」
「松永さん、Sですか?私の予想ではMだったんですけどね」
「はっ!?おまえっ・・//// えむって・・なっ//////」
「あ~、すみません、松永さん見てたら、からかってみたくなっちゃって~」
「あほかっ!!」
「でも元気出ましたね。よし!」
「・・・・・」
なんだよそれ・・
「ありがとな、ほんと」
「もうさっき、言ってもらいましたよ。それより、早く食べないと冷めちゃいますよ?」
「あ、そうだな」
豚肉の生姜焼き定食のオレに対して
焼き魚定食の武田
「おまえ、めちゃくちゃ綺麗に魚、食べるなぁ~」
「私、魚、大好きなんですよ」
それにしても、こんな綺麗に食べるやつ、初めてみたけど
「もしかして、魚、捌けたりするの?三枚におろしたりとか」
「出来ますよ。」
「すげぇーーーー!!マジで?尊敬!!」
「・・・ そんな、尊敬されるようなことはー」
「オレの母親、魚捌けなくて、子供の頃、友達の父さんが釣ったからって新鮮な魚もらったりするだろ?でも三枚におろすことできないからって断ってて、そしたらわざわざ刺身の状態にしてからわけてもらったりしてさ~・・ なんか、その時、友達のこと、羨ましくなっちゃってさ~・・・」
「私も、母親、出来ませんよ?だから出来るようになったんです。今では、私が家に帰ると、いつも魚が買ってあります」
「・・・ すげぇな、お前。自分が出来るようになるって・・ そんな発想はなかったわ。そうか、俺が出来るようになればいいのか!なぁ武田、今度教えてくれよ」
「・・・・・・・」
「・・・ん? ダメか?」
「いいですけど・・ それは、どこで・・?」
「どこで、って・・」
俺のー
ああああぁぁぁぁ
そうかそうか
「そうだな、どこで、って言われるとヤバいか」
「今度、お薦めの動画、送ります。」
「動画?」
「はい、私も動画見て学んだんです。わかりやすいやつ、見繕って送ります」
「あ、あぁ・・。頼む」
動画・・
そうだな、最近は何でもあるもんな
「今度、出来るようになったら教えてくださいね」
「おうっ、楽しみにしとけ」
「はい」
食べ終わり、伝票を持ってレジのところに行くと
いきなりスッと隣に立った武田が
「割り勘でお願いします。焼き魚定食で」
財布を出して店の人にそう言っている
「は?おい、ちょっと待て武田。今日はオレがー」
「先日もご馳走になりました。今日は割り勘で」
言ってるそばから、もう支払いを済ませている
結局オレは、生姜焼き定食のお金を払い
店を出た
武田はもう、外で待っていた
「後輩と食事する度に奢ってたら、松永さん、破産しちゃいますよ?」
「あほ。こう見えても結構貰ってるわ」
「私も新入社員じゃないですから。ここの食事代くらいは出せます」
「それでも、今日はオレがご馳走したかったんだよ!」
ほんとに助かったんだ
武田のおかげで・・・
「・・・・・・ すみませんでした。先日もご馳走してもらってたので、申し訳ないと思ってしまって・・。」
「そんなところで気を遣うな。」
「ありがとうございます。じゃあ、次は私には出せないようなところ、お願いします」
「・・・ おまえなぁ~!調子乗るなよ?」
「うそです。さ、帰りましょう!皆、待ってますから。あ、上手くいったことは、既に報告済みですが」
「・・・ ありがとうございますぅ 」
ほんとにお前は・・・
最高の部下だよ