「・・・ 食べないの?冷めるだろ」
「あ、うん・・ 松永は?何か食べないの?」
「オレはもう食べた。」
「あ、そうか・・ うん」
びっくりしすぎて食べても味がしない
まさか、松永が私の後ろの席にいたなんて
茜が帰って行くとき、松永にごちそうさま~って言ってた
だからか、あんな高いの食べるなんて・・・
っていうか、ほんとにもうー
ありえないでしょう!!
どうしたらいいのよ
これはいったい
どうなってんの?
「今日は・・・ いったい・・?」
「えと・・ 何から話していいのか、だけど・・。まず、さっきの、お前が俺のことをまだ好きなんじゃないか?ってやつ・・ そんなふうに思ってないから」
「・・・ 」
いやいや、なんの公開処刑ですか?これ
「っていうか、そうだったらいいなぁ~とは思ってたけどな」
「・・・ え?」
「この間は、俺の言い方が悪くて・・・悪かった。」
「この間、って・・?」
「ちょうど一週間前だよな?ふたりで二階堂の結婚祝いの会の打ち合わせで飯食ってるとき、」
あ~・・ あの時はごめん、ってやつか・・
「あのあと ほんとは、こう続けるつもりだったんだ」
そう言うと、松永、大きく深呼吸をして
「今度はオレがお前のこと、好きになったんだけど、つきあってくれませんか?って」
「・・・・・・」
え?
え?
松永・・・?
今、何て・・・?
松永が・・ 私のことを好き・・?
「待って待って、松永?え?」
「でも言える雰囲気じゃなくて、長期戦で行くか~って思ってたら、森島とつきあってる、なんて言いだすから」
「え?ちょっと待って?え?」
長期戦?
え?
「でも、嘘だったんだよな?」
「え?」
「森島と、つきあってないんだよな?」
「あぁ、うん、つきあってない」
「じゃあオレ、・・・・ 諦めなくてもいい?」
「・・・ だからぁ~・・ ちょっともう、なんなの?松永・・ 急にそんなの・・・」
今までそんな素振り、ぜんっぜん見せなかったくせにー
「急? ・・ オレはずっと好きだったけど?」
ええっ?ずっと、って・・
松永が?
「ずっと、って・・ いつから?」
「・・・ いつからだろ?前すぎてわからん」
「もうー、なんなん?それ」
前すぎてわからん、とか・・
だったらもっと早く言ってよ~
「な? つきあってくれる?俺と」
いやいや、ちょっともうーーっ
松永ぁ~
はっきり言って、あたま、パニックだよ
「・・・ ダメ?」
「ちょっと!!待って!!!松永・・ 急にそんなガンガン来られても、正直まだ、全然ピンと来ないっていうか・・」
「・・・・」
松永、テーブルに両肘ついて、手を組んで
そこに顔を埋めた
「・・・ だよな」
ボソッと声が漏れた
下を向いてるから、顔が見えない
「・・・・ 松永?」
もしかして・・・
ショックうけてる?
え?
でも私、別に振ったわけじゃー
ないけど
やっぱりすぐには返事できないよ
「ごめん、少し考える時間が欲しい」
「・・・ん。」
まだ下を向いてる
「松永・・?」
「よしっ!」
そういうと、ようやく松永が顔を上げた
「まぁ、一度はもう手に入らないって思ったわけだし、考えてくれるんなら、待つよ。」
「あ・・・ うん」
なんかもう、マジ照れる
向かい合って座るのって、やばいね
こういうとき・・・
「じゃあそれ、食べて?送ってく」
「あ、うん・・」
もうお肉はとっくに冷めてた
でも、さすがだ
冷めても美味しい
ようやく味が感じられた
けど、欲を言えばもっと
温かい、最上の状態で食べたかったな
そう言うと、松永が
また今度な、って笑ってくれた
・
・
・
・
・
店を出ると、松永が
「手、繋いでいい?」
って見下ろしてきた
もう~
ほんと、なんなん?
松永・・
こんな甘いの?
「・・ん」
私が手を伸ばすと
それを掬うように手を絡めてきた
あ・・これ
恋人繋ぎってやつだ
なんか照れるね、ほんと
と思いながら
私はふと
この前
森島くんと手を繋いだ時のことを思い出していた
あの時は
森島くんに差し出された手を
私がとらなくて
あとで繋ぎに行ったんだったな
ふふっ
「・・・ どうかした?」
「え?」
「笑ってるって・・ 喜んでいいの?オレ」
「あ・・・ ハハ」
どうなんだ?
返事に困る
私たちは
家に着くまで、ずっと手を繋いでいた
「送ってくれてありがと。 じゃ」
立ち止まり
松永に向き合ってそう言うと
私は繋いでいた手を離そうとした
けど・・
ぐいっー
そのまま掴んで引き寄せられた
松永の腕の中に
スポッ
「・・・ やっと抱き締められた」
頭上から聞こえてくる言葉通りに
抱き締められた
強く
ぎゅっ、て
「///////////」
なんかもう
松永のスピードについていけない
「引っ越し・・ 手伝うな?」
「・・・ うん、ありがと。助かる」
顔が松永の胸に押しつぶされ
それだけ言うのがやっと・・
でも
松永の心臓が、バクバク鼓動しているのがわかる・・
あ~・・
私、本当に松永の腕の中にいるんだ?
入社一年目の
松永のことが好きで好きでたまらなかった私に
教えてあげたい
「オレさ~・・ お前が森島とつきあってる、って言ったとき・・ すっげぇショックでさ」
「・・・・」
「あ~・・ 俺って夏川のこと、めちゃめちゃ好きなんだなぁ~って思い知らされたわ」
「・・・・」
ただただ、恥ずかしい
「なぁ?・・ 森島とは、ほんとに何もないんだよな?」
ドキッ
「え?何もない、って・・ 逆に何があるのよ」
「だって、何で森島?って思って・・ そのあとすぐ、森島はないだろ~ オレ、勝ち目ないわ、って思った」
「ぶっー 勝ち目ないって・・」
「だってあんなイケメン、なかなかいないだろ」
「確かに・・。」
それは、認める
激しく同意
「おいっ」
「でも、松永も、イケメンじゃん?」
「・・・・・・」
・・・・ あれ?
「おまえ・・・ それは反則だろう」
「ごめんっ、そんなつもりじゃー」
見上げた私の唇
あっという間に塞がれた
そして・・・
優しく離れ・・
おでこをぐりぐりって合わせると
松永の顔が超至近距離で
「許せ。我慢できんかった・・」
そう言ってもう一度
塞がれる
「wwwwwwww っー 松永っ!!」
ドンッー
いつまでも続くキスに
思わず突き飛ばしてしまった
「私っ、まだっ・・」
つきあうって言ってないのにっー
こんな、流されるようにっ・・ なんて・・・
「悪いっ・・」
松永のこんな顔・・・
初めて見る
「マジごめんっ・・ オレ、調子に乗った・・ほんっと悪い!!ごめんっ!!」
「・・・ もう、いいよ。そんな謝らなくても・・」
「もしかして、嫌になった?」
「そんなことないよ」
「ほんとに?」
「・・・ 何年のつきあいだと思ってんの?松永のこと、嫌いになることなんて、ないよ」
そんなの、絶対にない
「・・・・ いい返事、期待してもいい?」
「バカ」
「・・・ 可愛いこと言って俺を誘惑するなよな」
「え?」
「あ~・・ 帰りたくないけど、帰るわ。じゃ、また明日」
「うん、また明日」
松永が歩きだしそうにないので
私がさきに踵を返し
家に向かって歩き出す
「夏川っー」
もうーーーっ
背中に届く声に、くるっと振り返る
「おやすみ!」
松永が大きく手を振っている
「おやすみ!」
私は軽く手を振って、向き直ると
そのまま家へと突っ走った
なんなのっ
アイツ・・・
ううー、信じられないわよ。こんなの。