「はいはい、入る入る!あ、予約した二階堂です」

 

「予約ぅ~?」

 

会社帰りの、ちょっとご飯行こ、って話で予約!?

 

茜が店は自分が決めたから、と会社を出るなり連れてこられ

いざ来てみれば

 

よく来る店じゃん

別に予約するほどじゃないでしょ

それに、いっぱいだったら別のとこ、行けばいいし

 

今までだって、ふたりで食べるとき、そうだったよね?

 

「まぁまぁいいから。それだけ待ち遠しかったわけよ。別の店に移動する時間ももったいないほどね」

 

あ~・・ そういうこと?

 

「そんなすごい話じゃないんだけど・・・」

 

茜ったら、私に何を期待してるんだか

 

「はい、ここ、座って!あさひ、そっちね」

 

「う、うん・・」

 

私たちが座ると、すぐにお水とおしぼりが出てきて

ご予約席のプレートが持って行かれた

 

メニューは置かれている

 

「なんにする?」

 

と私が聞くと

 

「今日はいつもより高いものにしよう!・・・えと、この『ひとくちステーキ定食』」

 

「ええっ?茜・・ なんかいいことあったの?」

 

「ううん、だって、こんな機会、もうなかなかないかもでしょ?」

 

「そんな・・ 結婚したからって、遠くに行くわけじゃないんだから、言ってくれたら私はいつでもつき合うわよ?」

 

引っ越すって言っても、同じ街なんだし

 

「ありがとね、やっぱあさひ、いいやつぅ~~」

 

「・・・ なに?ほんと・・」

 

「でもあさひもこれにしよ?いつも食べたいって言ってたじゃん?ね?」

 

「うう~・・ん、まぁいっか!わかった」

 

「すみませーーーん!」

 

 

茜が、店員さんを呼ぶと、ひとくちステーキ定食をふたつ、頼んだ

 

 

「さてと・・・」

 

なに?

 

「なんで嘘なんかついたの?それも、松永に」

 

「いきなり?」

 

「当たり前でしょう?何時から待ったと思ってるの!!」

 

・・・ 仕事しなさいよ

 

「・・・ うう~ん・・・」

 

「早く!定食、来るまでにいいとこまで話、つけておきたいから」

 

「ええーーーーっ、何、それ」

 

「美味しく食べるためよ」

 

「ぷっ」

 

「笑いごとじゃなぁーーーい!!ほら、あさひ、吐きな!」

 

 

ここ・・・

取調室ですか?

 

 

ま、いつまでももったいつけててもしょうがない

 

茜だし

 

 

「・・・ 茜、結婚して会社、辞めちゃうじゃない?」

 

「うん」

 

「そしたら、本社にいる同期って、私と松永、ふたりになるでしょう?」

 

「そうね」

 

「・・・ 今までは、茜もいて、三人でご飯食べてたけど、これからは、ふたりじゃない?」

 

「まぁ、そうなるわね」

 

「この間、茜の結婚祝いパーティの話を松永とするためにご飯、行ったときね?松永・・急に、あの時はごめん、って私に言い出したの」

 

「はぁ?」

 

「なんかさー、まだ気にさせちゃってるんだ?って思ったら、申し訳なくなっちゃってねー。」

 

「・・・・・」

 

「私に彼氏がいないから、もしかして、いつまでもこいつ、俺のこと好きなんじゃないか?って思わせてるのかな~って・・」

 

「いやいや、いやいや、ちょっと待ってよ、あさひ。松永はそんなふうに思ってないと思うよ?全然!!」

 

「そうかなぁ~?」

 

「そうよ!絶対思ってない、って!」

 

「いやいや、茜は知らないから。だってさ~・・ 実際、松永のこと、嫌いになんてなれないじゃない?で、あいつこそ、彼女、作んないじゃない?これがさ、さっさと彼女作ってくれたら、もっとなんでもなくなると思うんだけど・・。アイツさ、たまにすっごいかっこいいこと、してくるのよ!そういう時、もう勘弁してよ~ってなるわけ」

 

「それってあさひ・・・ あんたまだ・・」

 

「いやいや、だから!そういうの、やだし、松永には絶対思われたくないから、いっそのこと、彼氏がいるってことにしたらいいかな~って」

 

「それで森島くん?」

 

「・・・ まぁ」

 

手っ取り早くて・・・ あの時は

 

「じゃあ、松永のために嘘、ついたんだ?」

 

「まぁ、他の人には私、彼氏がいるってなってるけど、松永と茜には、いないのバレてるし。具体的な人の名前だした方が、現実味あるかな、って」

 

「だからって森島君はないでしょう。むしろ現実味、なくない?」

 

「・・・・ 他に思いつかなくて」

 

だってあの時・・・・

 

 

「ね、いっそのこと、松永とつきあったら?」

 

「はぁ~?」

 

茜、頭、おかしくなっちゃった?

 

「何言ってんの?私、フラれてんのよ?茜だって知ってるくせに・・」

 

「それはもう、何年も前の話じゃん。松永だって、彼女いないんだし」

 

「いやいや、意味わかんないし」

 

茜ったら何を言ってるの?

 

 

「お待たせしました~ ひとくちステーキ定食、です」

 

 

店員さんが料理を運んできた

 

デーーーンッ

と、テーブルに置かれるや否や

 

 

「いただきま~~す!!」

 

茜が割箸を割って、すごい勢いで食べ始める

 

「ちょっと茜、そんな急いで食べなくても・・。せっかくなんだから、ゆっくりよく噛んで食べなよ」

 

「・・・ 私もそうしたいんだけど・・ いや、でもそろそろ・・ 限界かと」

 

「・・ 限界?」

 

 

「・・ ゆっくり食べれば?」

 

 

急に人影が横に現れたと思ったら

え?

 

どういう・・

 

理解に苦しむ

どういうこと?

 

「なんで・・?」

 

なんで松永がここにいるの・・?

 

「ほら、詰めて」

「ちょっと待ってよ、まだ食べてるんだからっー」

「だから、ゆっくり食べていい、って言ってるだろ?」

「そんなわけにもいかないでしょっ?」

 

 

「・・・ 茜?」

 

どういうこと?

どうなってんの?

なんで茜、この状況、受け入れてんの?

 

 

「まぁまぁ、私は今、これ食べたら消えるから。」

 

は?

 

「ちょっと待ってよ、茜、どういうこと?なんで松永がここにいるの?え?いつから?」

 

え?え?え?

 

 

まさか・・・

 

え?

 

うそでしょ

 

ちょっと待って

私、何を言ったっけ?