お昼休みの社食

 

 

「どうも~。松永、ここ、いい?」

 

「・・・ 座ってから聞くな。あれ?今日、夏川は?」

 

一緒じゃないのか?

二階堂ひとり?

 

「なんか、仕事があるからってフラれた。」

 

「あ~。今日からだっけ?新しいやつ。にしても、昼休みはちゃんと休めよな。ちゃんと食べるのかな。」

 

「心配しちゃってぇ~」

 

そう言えばにぎやかだった・・・

おまけに森島と一緒とか

大丈夫か?あいつ・・・

 

て、大丈夫じゃないのか俺か

 

彼氏と一緒だと

どんな顔、するんだろうなぁ・・・

 

見てみたいようで

見たくないようで

 

まっ、

見ないようにしてたけど

 

 

 

「ねぇ松永。今月、最後の週末、暇?」

 

「は?・・・・ なんで?」

 

何か手伝えとか?

変なこと言い出すんじゃないだろうな?

 

「社員寮、私のあと、あさひが住むから引っ越し、手伝ってあげてよ」

 

「え?夏川、社員寮、住むの?」

 

「うん、そう。だから引っ越しー」

 

へぇ~

社員寮にね~・・

結局、アイツが今 住んでるとこ

オレは部屋にあげてもらうこともできず

かー

 

引っ越しの手伝いね~

 

「俺じゃなくてもいるだろ。」

 

 

彼氏がー

 

 

「何言ってんのよ、男手は必要でしょうが!」

 

「だからぁ、俺じゃなくてもいるだろうが、彼氏が」

 

「は?」

 

「・・えっ?おまえ・・ 知らないの?」

 

やばい・・

二階堂のこの顔・・・

本気で知らないやつか?

森島とつきあってるの、内緒だって言ってたけど

まさか・・・

二階堂にも!?

 

うそだろぉ~~

夏川~

言っとけよーーーー

 

 

 

「何?彼氏って、あさひに?」

 

「・・・・・・・」

 

あーもうっ

どうすんだよ

 

「え?あんたじゃー」

 

「・・・ねぇよ」

 

「それってダレ?もしかして、知ってる人!?」

 

「・・・静かに。二階堂。声のトーン、落とせ。ここ、社食」

 

「・・・・(言わないと許さん)」

 

「・・・・・・・・」

 

 

許せ、夏川

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あさひっー」

 

 

ビクッー

 

 

ぼちぼち、お昼休憩を終えた社員たちが少しだけど席についている中

すごい形相の茜が現れた

 

 

「・・ どうしたの?」

 

「あんた、お昼は?」

 

「おにぎり、食べたとこ」

 

 

森島くん、私の分、千円で買ってお釣りと一緒に渡してくれた

律義すぎて申し訳なかった

 

 

「ちょっと、いい?」

 

とか言いながら茜、もう私の手を握って、引っ張り出そうとしてる

 

「どうしたの?何かあった?・・・ ちょっとだけだよ?」

 

 

時計の針は12時50分

昼休憩は残り10分しかない

 

 

会議室が続くフロアの廊下のずーーーっと奥まで連れて行かれると

もう誰もいないか、てとこで

茜が手を離した

 

 

「なんで言ってくれなかったの?」

 

興奮してるけど、それでもボリュームを落としてくれてる

なに?聞かれるとまずい話?

言ってくれなかった、って、私が?茜に何か秘密にしてるってこと?

 

「・・・ 何を?」

 

「森島くんとつきあってることよ!」

 

「ええっ?・・・ 誰にそれ・・・」

 

って口に出してから

そんなの、ひとりしかいないじゃん

って思い当たる

 

うそでしょーー

松永・・・

茜に言っちゃったの?

 

 

「・・・・ ちょっと待った、茜。それ・・」

 

「そんなの知らないからこの間私、森島くんに変なこと言っちゃったじゃない・・」

 

「変なこと言った、って・・え?森島くんに何を言ったの?」

 

「私のあと、あさひが越してくるけど、すぐ結婚して出て行くかも、って」

 

「ええええええええーーーっ、何言ってんのよ!!」

 

そんなの、森島くん、びっくりしたんじゃ!?

私に彼氏いないの、知ってるわけだし。

あーもうっ、何か言っとく?

いや、何て?

 

「だって、森島君とあさひがつきあってるなんて、全然知らなかったんだもんっ、しょうがないでしょ!!まさかそんなの、思わないでしょーーーっ、ひどいわ、あさひっ!!つきあってるならつきあってる、って言ってくれたらよかったのに、年下はないって言ってたくせにー」

 

「嘘だから!」

 

私は興奮している茜の両肩を掴んでそう言った

 

「・・・ へ?」

 

「森島君とつきあってる、なんて、嘘なの。」

 

「嘘?・・・ なんでそんなウソ・・・」

 

「いや・・まぁ・・ それは色々事情が・・ あるんだけど、それはまた今度ゆっくり話すから!今はもうお昼休み終わるから戻るよ?とにかく、嘘だから、それ。あ、松永には嘘だって言わないで。」

 

「・・ どういうこと?松永に、嘘、ついてるってこと?」

 

「だから、それは今度ゆっくり話す!!とにかく、茜に嘘ついてないから。ね?」

 

「・・・よくわかんないけど、ゆっくり話してくれるのね?いつ?今夜?仕事のあとすぐ!ね?それ決めてくれたらいい」

 

「うう~・・ わかった、今夜ね?うん、ご飯、しよ」

 

「おっけー!!じゃあ、戻ろう!」

 

ふぅ~・・

 

 

「あ~・・ 気になって午後から仕事が手につかないわ」

 

それはこっちのセリフよ!

あー、なんでいま、こんな面倒なことに

 

て、自業自得か!

 

「茜はもうすぐ引継ぎ入るんでしょ?」

 

「うん、来週には」

 

 

ふぅ~

ちらりと見やると、確かに茜の顔

気になって仕方ありません、って書いてあるようにしか見えないわ

 

 

それにしても・・・

松永ぁーーっ

誰にも言わないで、って言ったのに・・・

 

 

 

 

ブーブーブー

 

携帯が振動して、メッセージ画面を見る

 

 

ーー ごめん!二階堂に話してしまった

 

 

遅いわ、松永

 

 

・・ま、早く聞いたからって何の対処もできないか

 

元々私が嘘ついたのが悪いんだし

 

 

 

「それにしてもなんでそんな話題に?」

 

茜と並んで戻りながら、ふと思った疑問を口に出してみる

 

「月末、あんた、引っ越してくるでしょ?松永に手伝いなさい、って言ったのよ」

 

「なんでまた!?」

 

「だって、男手あった方がいいかと思って・・」

 

「そんなの、業者の人に頼んでるし」

 

「あ、でも、松永に森島くんとつきあってるって聞いたとき、それなら手伝ってもらうの楽ね、って思ったのよね」

 

「え?なんで?」

 

森島くんに手伝ってもらうとか

ないわぁーー

 

「え?だって・・ 彼、社員寮住んでるし。なんなら、同じフロアだけど?」

 

「ええっ?」

 

 

森島くん、社員寮、住んでたの?

おまけに同じフロアとか・・・

 

 

「そんなことも知らないのか、だったらほんとに嘘なのね、つきあってるってやつ」

 

「だから嘘だって言ってるでしょ」

 

 

へぇ~

そうかそうか、社員寮住んでるんだ?

森島くん・・・

 

 

「あー、ほんっと、午後が長いわ!!」

 

 

突然 隣で茜が叫ぶから

思わず笑ってしまった