「システム開発部から、この企画チームに派遣されてきました、森島です。よろしくお願いします。」
キャーーーッ
森島くぅーーーんっ
第一ミーティングルームの中
チームの女子社員の喜びの声が舞った
私はひとり、ただただ、驚いていた
聞いてない
聞いてないし
え?
いつからわかってたの?
それ・・・
絶対、早くに言われてたよね?
週末に言ってくれてもよかったんじゃない?
驚いて
呆れて
終いにはムカついてきて
睨んでしまった
そんな私の視線に気づいて
二ッと口角あげた?
今・・
「はい、じゃあメンバー揃ったんで、打ち合わせを始めます」
ふんっ
誰が来ようが、関係ないし
仕事ができる、って先輩たちの間でも評判になってるっての
私も確かめさせてもらおうかな
くらいの気持ちで臨むわよ
・
・
・
・
・
「夏川さん、お昼休憩、行かないんですか?」
どこかから、声が飛んできた
お昼?
え、もうそんな時間?
パソコンから目を離し、顔を上げてみると
なるほど
フロアは人がいなくなってる
「あー・・ うん、ちょっとこれ、キリのいいとこまでやっといたら、午後から捗るかな、って」
そしたら皆も楽になると思うのよね
私は再び、パソコンのディスプレイへと視線を戻す
「だったらオレ、コンビニ行くんで、おにぎりでも買ってきましょうか?」
「うそっ!助かるっー」
顔を上げた視線の先
声の主は
道理で聞いたことある声だ、って思ったわよ
「・・・・ 何がいいです?」
「・・・ 梅以外なら何でもいい。適当に2つ。あとサラダとー」
「緑茶も。・・ですよね? 行ってきます」
「・・・ありがと」
言ったっけ?
コーヒー、飲めないの・・・
食後は緑茶派
森島くんも残ってたんだ?
お昼・・・
そう言えば、彼が社食に現れるのって、ちょっと時間遅かった・・?
今日は社食じゃなくて、コンビニなんだ?
あ、給料日前で?
「森島くんっー」
私が立ち上がって名前を呼ぶと
もうドアのところまで歩いて行ってた森島くんが振り返った
「私、お礼にお金出すから。君のお昼分も。好きなの買っていいよ。」
金欠・・・
なんだよね?
すると森島くん、スタスタとこっちへ引き返してきた
「だったら先にお金くださいよ。」
ヌッと彼の大きな手が伸びてくる
「え?あ、うん・・ そうよね」
私は慌てて財布から千円札を2枚取り出すと
その手のひらに差し出す
森島くんは、そのうち1枚だけ抜き取ると
「・・・ あざ~~っす。夏川先輩!」
そう言って、歩いて行こうとする
から、私はー
「ちょっと待ってよっ!」
森島くんのシャツを引っ張ったもんだから
その裾がベルト付きのパンツから飛び出しちゃって
「・・・・ 何やってくれるんです?」
上から見下ろす森島くんの視線の冷たいこと!!
「・・・ ごめん。でもさ、なに?さっきの・・・『あざ~~す、夏川先輩』ってやつ!社会人としてどうかと思うけど」
「そっちこそ、何で俺の分まで出す、って言うんですか?ついでだ、って言ったでしょう?こういうのは、チーム全体に向けてするべきだと思う。」
あ・・・・
「・・・ 確かに。ごめん・・」
先輩として面目ない
ほんと・・・。森島君の言う通りだ・・。
つい、森島君が金欠だって頭に浮かんじゃって・・・
私ったら軽率
情けない
「じゃー」
「あっ、まだー」
ぐいっー
・・・・ また引っ張ってしまった
さっき、森島くんが、入れたばっかのシャツ
「・・・・ なんです?」
あ~・・ オコです?その顔、その声
でも、どうしても言いたかったし
まわりには、もう誰も残ってないみたいだし
「・・ なんで言ってくれなかったの?うちのチームに来るってこと・・。もうわかってたんでしょう?」
手をそえ、若干小声で聞いた
「・・・・・・・・」
なに?
何で何も言ってくれないの?
「会社で挨拶くらいしてもいいかな?って私が言ったとき、笑ってたんでしょう!」
「・・・ お昼、終わっちゃうんで、離してもらえます?」
「あっ、そうか!」
時間っ
パッー
私は慌ててシャツを離した
「じゃ、買いに行ってきますー」
えええええ
ちょっとぉーー
私の質問の答えはぁーーーーっ
・・・ 行っちゃったよ
仕事しなきゃ
何のために買いに行ってもらうのか
わかんなくなるよね
ストンッー
椅子に座ってパソコンに向かう
キーボードをカタカタカタ・・・
なんか私ばっかり あたふたしてない?
ムカつくなぁーーーーっ
カタカタカタカタカタ・・・
ピコンッー
スマホが鳴った
チラッと画面に視線をくれる
ーー 驚いた顔、最高だった