ドキドキのご対面から早30分

迎えに来てくれたタクシーの中でも ドキドキしっぱなしで

 

大丈夫かな?

変じゃない?

 

って聞きたいのを年上のプライドでグッと堪え

 

交わした言葉はお互い

 

「どうも」

 

のみ

 

 

会場到着で、タクシーから降りるときも

スッと伸びてきた手につかまり

 

その後も、会場ついて受付済ませ、入るまで

サラっとエスコートされてる感じ

悪くない

 

いやいや、悪くないっていうか

彼は出来すぎ

かっこよすぎ

スーツ姿も会社で見る何倍もカッコイイ

 

それに比べて私

緊張MAXで

なんか、色々ちゃんと出来てない感じ

こんなんで、コイツの彼女役なんて出来るの?

大丈夫か?

いや、大丈夫じゃないでしょ

なに?あのオバサン、似合ってない

勘違いしてない?とか言われたりして

いやいやそれは何度も考えた

そう、想定内よ、あさひ

全部全部わかって引き受けたでしょ?

頑張るしかないのよ

 

よしっ!

 

 

主役のふたりはまだ現れてなくて

知り合いなんてひとりもいない私は

いきなりのアウェイ感、半端ない

 

だって・・・

コイツが入ってきた途端

会場、ざわついたもの

 

女性陣の視線の鋭さ

めちゃくちゃ伝わってきたもの

 

わかっては いたけど

やっぱり目の当たりにすると

やる気レベルが下降していく

 

あ・・

やばい・・

お腹痛くなってきたかも・・・

 

 

「森島くぅーーーん!ひさしぶりぃ~」

「森島!元気してた?」

「あたしのこと、覚えてる?」

 

 

すごい・・

 

押し寄せてきた

女の子たち

 

私のこと見えてる?

 

そして森島くん、何て応えるの?

誰の問いに?

 

 

「・・・ どうも」

 

・・え?

それだけ?

それ、私にも言ったやつ

 

くすっ

思わず笑っちゃった

あ、ちょびっとだけ緊張 解ける

 

 

「あの~・・ あなた、どういう関係の人です?彩芽の友達?」

 

「えっ?」

 

 

うわっ

いきなりキタ!

こっち・・・

 

どうやら彼女たちの視界に私は存在していたみたい

いや、最初から存在してたのか

気になって仕方ない邪魔な奴として

 

えと・・

ここは 森島君の彼女です、って答えるべき?

あ、森島君ってのはヤバいのか、快の彼女です?

 

「オレの彼女」

 

ドキッ

 

私が悩んでいる間に

隣で森島くんが発した言葉は

想定内のやつなのに

実際言われてみると

その破壊力たるや

想定外で

 

急にアツくなってきた

 

 

「え~~、森島ってそういうことする人なんだ?」

「彼女連れてくる?こういう席に」

 

 

やばい

皆の反応、めちゃくちゃ悪い

え?私

場違いだった?

 

 

「隆哉と彩芽が、あさひと一緒に来いって言うから来たんだけど。」

 

なんか、文句ある?

とばかりに彼女たちを見下ろす森島くん

 

・・・ に ちょびっとだけキュン

 

 

「え?あのふたりと知り合いなの?」

「森島君が呼び捨てにしてるぅ~」

「あさひ、だって・・」

 

 

聞こえてます・・

しっかりと

 

そしてやっぱり照れましたね、はい

全然慣れませんでした

呼び捨て

 

あーーー

無理っ

 

「あの・・ 森・・快!」

 

隣にいる森島君に腕を伸ばして引き寄せると

なに?と顔をおろしてくれたその耳元に呟く

 

「私ちょっと・・・ 化粧室行ってくるから・・」

 

「ん?あぁ・・・ 大丈夫?」

 

 

思いがけず、心配そうな顔を向けられ

キュンってなった

おいおい、あさひ、しっかり~

 

 

「大丈夫^^」

 

 

笑って手を振り、森島君の隣を離れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぅ~

 

トイレの個室で大きく息を吐く

 

落ち着いた・・

いや、落ち着いてないけど

 

あ~

こんなの、引き受けるんじゃなかった

激しく後悔

そう、後悔しかない

 

序盤でこれ?

まだふたりにも会ってないのに

 

あ、でも、主役たちが現れたら大丈夫よね?

彼女たちの気も逸れるわよね

 

にしても・・・

森島君が、想像以上にかっこよくって

そっちも想定外なのよ

 

アイツ、俳優の才能あるんじゃないの?

彼氏のフリ、うますぎるーーー

 

・・・ 慣れてない私なんて

軽く手玉にとられてる気がするわ

 

 

 

 

「ねぇ、森島くんの彼女、見た?」

「見た見た!まさか森島が彼女連れてくるなんて思わなかったわよ」

 

 

・・・ やばい

出遅れた

 

トイレに入ってきた子たち

彩芽ちゃんたちの友達か

そして噂の的になってるの、森島くんと私よね?

 

めちゃくちゃ出て行きづらい

 

 

「今日、森島くんが来るって聞いて、すっごい頑張ってきたのにぃ~」

「ほんとほんと、ワンチャンあるかな、って」

「でもあんな美人の彼女とか、無理ーーー」

 

 

・・え?

美人の彼女って・・ 私のこと?

 

 

「年上かな?入ってきたときのオーラ、すごくなかった?」

「そうそう、モデルかよ、ってくらいの美男美女」

「あれ、下手すると、主役のふたり、食われちゃうよね」

「それな」

 

 

////////////

別の意味で、ますます出づらくなってきました・・・

 

え?

私、認められてる?

森島君の彼女として・・・

 

 

「でもさー、今日、森島のこと狙って来た子いるでしょ」

「いるいる。さやかなんて、森島来るって聞いて出席にしてたもん」

「あー、あの子、ずっと好きだったもんね、森島のこと」

「まおも狙うって言ってたわよ」

 

 

さやかにまお?

森島くーーん

どんだけモテるのよ

 

 

「あ、でも今日って新見くん、来るんだよね?」

「え?マジ?」

「そうそう、私、彩芽から聞いたよ?ギリギリ出席の返事来た、って」

「ええええええええ、イケメン2トップじゃん!!てか、新見くん、こういうの来れるの?」

「皆、知らないんじゃない?」

「遅れるけど来てくれる、って彩芽、言ってたけどなぁ~」

「写真!!」

「撮ってもらおう!!」

 

 

・・・・ 新見くん?

森島くん並みのイケメンがもう一人いるの?

凄すぎる・・・

 

 

 

足音が遠ざかって行ったのを確認し

私はそろ~っとドアを開けた

 

 

「ふぅ~」

 

思わず漏れる吐息

 

鏡を見ながら、手をしっかり目に洗うと

持ってきていたハンカチで拭く

 

軽く髪の乱れをチェックし

戦場へと戻る戦士のように奮起

 

「よしっ」

 

 

いざ、向かわん!

 

 

 

 

 

・・・・ ドンッー

 

「キャッー」

 

 

化粧室を出たところで、誰かとぶつかった

 

ぐいっー

 

と思った瞬間、身体を抱かれるようにして、向きを変えられ

 

「ジッとしてて」

 

誰かの腕の中でそっと身を潜める

 

 

何が起きた?

見えるスーツと、ほのかに香るコロンが

森島くんではないという認識しか出来ないけど

 

だとしたらなんで?

ダレ?

 

 

 

「ユヅルくぅーーーーん」

「どこぉーーーーっ?」

 

 

 

通り過ぎていく足音と声

 

・・・ ユヅルくん?

 

ユヅル・・・

 

 

「・・えっ?」

 

ゴンッー

 

「・・デッー」

 

私が上を向こうと顔を上げると

どうやらその彼の顎にゴツンと当たってしまったみたいで

上からうめき声が漏れた

 

 

「あ、ごめんなさい、大丈夫ですか?」

 

「こっちこそ、ごめん、急にこんな、隠れるようなとこ、連れ込んじゃって・・・」

 

 

・・・ うそ

 

この顔・・・

 

ユヅルくん・・・って

 

 

私は、しゃがんだまま、目の前のイケメンの顔をマジマジと見つめてしまった

 

 

「あの・・ もしかして貴方・・・」

 

私が小声でそう言いかけると

 

「・・・ 知ってます?」

 

ちょっとお茶目な顔をして、彼が右目の目尻を下げた

 

その答えに、思わずテンション上がって声を出しそうになったけど

すんでのところで思いとどまり

そうか、さっきの・・・ もしかして、ファンの子とか?

 

「私、『キミとアオハル』、見ましたよ?主役の子より、貴方の演技にやられました」

 

トーンをおさえ、それでも興奮冷めやらぬ感じで伝えると

 

「マジっ?」

 

彼の方が大きな声で答えてくれた

慌てて口を押えてたけど

何だかその仕草が好感持てて、やっぱりファンになりそう

 

「主役の男の子、あたりさわりない感じで・・・ 少女漫画原作の実写映画なんて、って嫌々でもないだろうけど・・ちょっとそう言うとこあるのかな?登竜門みたいな? でも、貴方はあの役をものすっごく全力でなりきってやってたから、見ていて、思わず、ヒロイン、もうこっち、いっちゃえよ!ってなっちゃってー・・・ あ、すみません、年甲斐もなく・・・」

 

しまった

アツく語ってしまった

いや、もっと語りそうになってしまったよ

こんなの、引かれるよね?

と、見上げると

 

彼は、口元に手をやったまま・・・

 

「・・・ めちゃめちゃ嬉しい。」

 

なんて、照れてくれちゃってる

 

やばい

かっこいい!!

さすが!!プロ!!

 

「あ・・ すみません、えと・・ これじゃあ、さっきの女の子たちと変わりませんよね」

 

ファン丸出し・・・

 

「あの・・ 今日はどうしてこちらに?もしかして、何か撮影とかあるんですか?」

 

だったら見てみたいぞ!!

と急に野次馬根性がー

 

「いや。完全プライベート。友達の結婚祝いのパーティやるって言うから、来てみたんだけど、さっき、ここ入るときに、ファンの子に見つかっちゃって・・・ まだまだそんなバレるような知名度でもないって思ってたんだけどね」

 

友達の結婚祝い?

 

「もしかしてそれ・・ 彩芽ちゃんと隆哉くんの?」

 

「そう!・・え?もしかして・・ キミも?」

 

「////////」

 

キミ、って・・

あ~

未だかつて、こんな甘美な響きのする『キミ』ってあったっけ?

 

 

「じゃ、一緒に行く?ほら」

 

そう言われて、手を持たれてふたり、立ち上がった

 

さっきのファンの子たちの姿はなくなっていて

ホッとする

 

あ~

ヒールでしゃがんでたから

足、痛くなって

ちょっとしびれ気味・・・

 

・・って、手!!

 

私は繋がれた手を慌てて引っ込めた

 

 

「すみませんっー」

 

ちょっといい気になっちゃってた

 

 

「・・・ ね、よかったら、連絡先、交換しない?」

 

「え?」

 

 

ーー 連絡先、交換しない?

 

・・って言われました?

 

 

「いいんですか?だって・・」

 

「映画の感想とかもっと詳しく聞きたいし、アッチ行っちゃうとなかなか交換する機会ないかもでしょう?」

 

ほら、とスマホを出され

私もバッグからスマホを取り出した

 

いいの?こんなのー

 

 

「あさひっー」

 

 

ビクッー

 

 

いきなり、背後から私を呼ぶ大きな声が聞こえて

 

 

振り返ると、そこには見慣れたイケメンが駆け寄ってきてて

 

 

「何やってんだ?お前・・・ なかなか帰ってこないから、探しに来てみたらー。ほら、行くぞ」

 

 

探しにきてくれたの?

え?

私のこと?

森島くんが?

 

 

「快?・・・え?この子、快の連れ?」

 

自然と3人で並んで会場へと歩きながら

ユヅルくんが、森島くんのこと呼び捨てにしてる!

そうか!

このふたり、同級生!?

ってことは、ユヅルくん・・・ 3つ下か! ← そこっ?

 

えーーっ

ちょっとこんなふたり

並んだらヤバいでしょ

イケメン・・・

 

あ・・

もしかして、さっきトイレであの子たちが言ってたのって

ユヅルくんのこと?

新見くん、って言ってたっけ?

 

新見じゃピンとこないわよ~

 

 

「彼女だけど?」

 

 

ドキッー

 

森島くんの口から漏れるそのセリフ

やっぱ慣れない・・

 

 

「・・・ 彼女?」

 

「あぁ」

 

「つき合ってんの?」

 

「当たり前だろ」

 

 

 

いやいや、森島君

売り言葉に買い言葉になってるよ

事実を違うのに

なんでそんな普通に出てくるのよ

 

っていうか、ユヅルくんもそこ

ツッコまないでよー

 

やっぱり、そうは見えないのかな?

 

ま、事実と違うんだから

見えませんよね~

 

 

 

「え?・・・ってことは、映画ってふたりで?」

 

「あああああああーーー、ユヅルくんっ、ちょっと!!」

 

私は森島くんの後ろを通って、ユヅルくんの右側へと回り込み

 

「・・・ すみませんっ、さっきの、ひとりで見てるんで、内緒にしてくださいっ」

 

小声で頼み込んだ

 

「あ~・・ オケ!」

 

「・・・ 映画?」

 

ユヅルくん越しに森島君が見える

 

「なぁ~んでもにゃい」

 

ユヅルくんはそう言うと、会場の中を見て

 

「お~~ 結構集まってんじゃん。じゃ、あさひちゃん、またあとでね」

 

と言って先に行ってしまった

 

 

彼が入っていくと、あっという間に人だかりができて

皆に囲まれてる(主に女子)

 

 

「わぁ~、すごい・・・」

 

 

さすがだ

芸能人・・・

 

それに、あさひちゃん、って・・///////

私の方が3つも年上なのに

 

 

「・・・・ デレデレしてんじゃねーよ」

 

 

ボソッと上から声が・・・

 

 

「やだな~もう、妬いちゃって~」

 

彼女らしく、笑ってツッコんだつもりだった

 

 

なのに・・・

 

 

見上げた先に

 

あると思った見下ろす視線がなくって

 

見えたのは

彼が背けた顔の

 

赤い右耳

 

 

あれ?

 

なんか・・・

 

調子狂うじゃない?

 

 

 

 

「・・・ ごめん、調子に乗りました・・」

 

 

謝っとこう

あとで、絶対 怒られる

 

 

 

「別に。・・・ いいんじゃない?彼女なんだから」

 

 

 

・・・え?

 

 

「も、行こ。隆哉たち、入場終わって中にいる」

 

「そうなの?えー、もう入っちゃったのかぁ。じゃあ、お祝、言いに行かなきゃ。森島君はもう言ったの?」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・ん?」

 

「・・ 先に行くわけないでしょう?」

 

「あ、・・・ ごめん。そうよね・・」

 

「あと、・・・ 俺の名前。」

 

「え?あ////」

 

「忘れました?」

 

「まさか!ごめんごめん」

 

「今度呼べなかったら、罰ゲームにしよ」

 

 

あ、私より先、歩き出した

 

さっきまで、歩調、合わせてくれてたんだ?

 

 

「罰ゲームって、何それ」

 

ちょっと早歩きになって後を追いかける

 

 

「考える」

 

「考えるって、ちょっと待ってよ、ねぇ、も・・ 快!」

 

ギリギリ、セーフよね?

今の・・・

 

 

 

ドキドキ・・・