「・・・ は?松永先輩に、俺とつき合ってるって言った?」

 

 

彩芽ちゃんたちの結婚式の打ち合わせってことで

森島君に教えてもらったお店で待ち合わせ

あの裏メニューを頼んだところで、私は切り出した

 

ら、あの無表情の森島君が

目を真ん丸くするくらい、驚いた顔してる

 

「・・・ まぁ、そういうこと」

 

そりゃそうか?

 

「なんでそんなことっ・・・ ハイスペックイケメン彼氏はっ!!」

 

「同期の松永と茜は、いないって知ってるんだもん」

 

「知ってるんだもん、じゃないでしょ。それでどうして俺とつきあってる、って話にしないといけないんですかっ!!!」

 

 

それはだって・・・

 

松永がかっこよくて

また惚れそうになるっていうか

でもフラれてるのに、そんな気持ちが大きくなったら

困るでしょ、ダメでしょ

松永に迷惑かけちゃうでしょ

気まずくなりたくないでしょ

 

なんてことは言いたくなくて

 

「それは・・ 松永に君とふたりでいるとこ見られて、なんか誤解された感じだったし?ほら!君も、私が送ったメッセージ、松永に見られたかも、って言ってたでしょ?だから、つきあってるってことにしたら、松永も変な誤解なんかしないで、納得してくれるかなぁ~、って」

 

「いや、意味がわかりませんけど。普通、そこは、誤解を解くとこじゃないです?」

 

「だってね?キミとつき合ってるって言ったら、松永、最初はびっくりしてたけど、なるほど、そういうことか、って納得してくれたのよ、実際!」

 

ーー 本当にハイスペックイケメン彼氏が出来たわけか

 

って言われたことは言わない

 

 

「納得してくれた、じゃないでしょう!!」

 

 

あんまり目の前のイケメンが声を荒げてくるもんだから

いい加減むかついてきた

 

「いいじゃない、別に。私だってキミの友達の結婚式にキミの彼女役としてついていくのよっ?だったらキミだって、私の彼氏ってことにしてくれたっていいじゃない。それでどこかに一緒に行ってくれって言ってるわけじゃないし、松永には、皆には内緒にしてほしいって言っておいたから、きっと誰にも言わないだろうし」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「ほんとよ?だって松永、そりゃ、あの森島となら、秘密にしないとやばいよな。て言ってくれたもの」

 

「・・・ 要するに、松永先輩にだけ、オレは夏川さんの彼氏ってことに?」

 

 

あ・・・

あれ?え?そうなるの?

やば・・

私、なんか墓穴掘った?

いやいやいや、そんなわけない

 

「とにかく!会社で私たちって接点ないんだから、彼氏のフリとか必要ないし、いいでしょ。」

 

「・・・ ふぅ~ん。」

 

「な、何よっ」

 

「ま、それならいいですよ。確かに、俺の方が迷惑かけてますし」

 

 

「ハイッ、お待たせ~」

 

私たちが注文した裏メニューパスタが、テーブルの上に現れた

なんと運んできてくれたのはマスターだ

 

「あれ?マスター、・・・ ひとり?」

 

森島くんが声をかけると

 

「そうなんだよ。バイトの子が風邪ひいたみたいで急に休まれちゃって・・。平日の夜だし、いいかなぁ~って思ったんだけどね・・」

 

と言ってるところで、スミマセーーン、というお客さんの声に反応して

マスター、行っちゃった

 

 

「・・・ 大変そう・・。」

「あぁ・・ これ以上、混んでこなきゃいいけど」

「そういう日に限って、お客さんが来たりするのよね」

 

森島君、黙ったか思ったら、

私がいただきま~す、なんて言ってる間にもう

食べ始めてた

 

 

「ね、マジで何を着ていったらいいか悩んでるんだけど・・・。」

 

「え?別に、なんでもいいんじゃないです?」

 

「だからそれ、一番言っちゃダメなやつ。」

 

「あ~・・」

 

「なんでもいいって、なんでもいいわけないでしょ。だいたいね、キミの女避けってことはよ?すんっごい注目浴びるってことでしょう?いったい何人の女の子たちから厳しいチェックを受けることか!って思ったらゾッとするわ。気張りすぎず、それでいていい感じの服・・・あ~、そういうのって意外と高いのよね・・・ま、いっか。この際、買っちゃおうかな」

 

「は?いやいや、隆哉たちのためにそこまでしなくてもー」

 

「いいのよ、そしたら茜の時にも着れるし」

 

「え?」「え?」

 

「茜って・・ 二階堂さん?結婚されるんです?」

 

「・・・・」

 

 

やっちまったぁーーーー!!

エア彼といい、茜のことと言い

どうして私、森島君といるといつも、こうなってしまうんだろっ

 

「・・・ 会社の皆には、来月言うらしいから、それまで内緒でお願いします」

 

「何だか・・・ 夏川さんって、意外と抜けてるんですね」

 

「はぁ?」

 

唇についたパスタソースをナプキンで拭うと

森島君は、グラスの水を口に含んだ

 

ちょっと頬を膨らませてから

一気に飲み込む

 

この間もその所作、やってたし

もしかして、水を飲むときの癖なのかな

 

 

「もっとこう・・ きちんっとしてる人かと思ってました」

 

「なにそれ、私がきちんとしてないってこと?」

 

「いや、そうじゃなくって・・ 隙がないっていうかー」

 

「あー、はいはい、要するにイメージダウンってことでしょう?」

 

「いや、逆。」

 

 

ドキッ

 

 

え?逆って・・・

 

なに?イメージ、アップ?したってこと?

 

「それってー」

「すみません、ちょっとオレ、手伝ってきます」

 

そう言うと森島くん、ガタガタッと椅子をずらし

自分の空いた皿を持って、カウンターの方へと駆け寄って行った

 

マスターに声を掛けると

勝手知ったる、とばかりに、中へと消えていき

店のエプロンをかけて現れた

 

プハハハハッ

なによ、アイツ

ビジネスシャツにエプロンとか!

 

振り向いて店内を見ると

ほぼ満席状態だった

 

私は背を向けてたからわからなかったけど

森島君、店内見渡せる方に座ってたから

ずっと気になってたんだろうな

 

いいとこあるじゃないの

 

 

森島君が料理とお酒を運んでくると

女性客、一瞬びっくりして

そのあとすぐ、すっごい笑顔で喜んでる

 

あ~、学生時代もこうだったんだろうなぁ~

目に浮かぶわ、うんうん

 

と、振り向いたままなのも変だから

結局、店内には背を向ける状態に戻り

 

テーブルの上の皿にまだ残っているパスタを見つめ

フォークでグルグル巻いては

口の中へと運んでいく

 

 

これって・・・

私も手伝うべき?

 

いや、それほどの店内の広さでも、集客数でもない

 

2人もフロアーをバタバタしてたら

狭苦しいし、何よりこの店の雰囲気に似合わないって感じ

 

私が手伝えるとしたら、中で皿洗いくらいよね

でもそれもー

頃合いを見て森島君がやりそう

やっぱり、ふたりは多すぎる

 

まぁ、お客さんも喜んでおられることだし

 

っていうか、手伝うタイミングを逃してしまったんだから

このままここにいるしかない

えー、でも、それっていつまで?

 

考えながら食べてたら

私のお皿も空いてしまった

 

これを持って行って

そのまま、洗い物だけでも手伝います、って言っちゃう?

 

 

「お客様、空いたお皿をお下げします」

 

聞こえてきた声と、伸びてきた手にビクッとなって

思わずその伸びてきた手

掴んでしまった

 

「っ!? 夏川さんっ?」

 

森島君、びっくりしてる

 

「ね、これ・・ 私が洗ってもいい?」

 

「え?」

 

「だから・・ カウンターの中で、私、洗ってもいい?一応、喫茶店でバイトしたことある。かな~り、前だけど・・・」

 

「あ、そういうこと?」

 

 

私の気持ちを汲んでくれたのか

森島君、店内を見渡し

 

「じゃ、ちょっとだけ・・ いいです?」

 

って、私を案内してくれた

ふたりの荷物を持って

 

あ、そうか

ふたりとも席を立ったら

ここにバッグとか、置いとけないもんね

 

 

「・・・・・・・・・」

 

中に案内されるだけなのに

辿り着くまで

すっごい注目浴びてたような気がする

そんなに広くない店内で

 

あ~・・・

イケメンの隣

練習出来てる?もしかして・・・

 

っていうか、この人数でこの圧ですか

 

私・・・

彩芽ちゃんたちの結婚式

 

耐えられるだろうか?