「え?うちの企画書、通ったんですか?」
課長が呼んでいるからと、ミーティングルームに行くと
思いがけず吉報が告げられた
「あぁ。だから、すぐに必要メンバーを補充して、大掛かりなチームを立ち上げてくれ。秋のイベントの目玉にする、とのことだ」
「はいっ!ありがとうございますっ!!」
やった、やった、やったぁーーー!!!
「システム開発部からも、ヘルプで誰か寄こすように頼んであるから。人数に入れといて」
「はい」
「他の仕事との兼ね合いもあるだろうが、当面はこの企画を最優先で頼む」
「はい」
何を言われても頬が緩む
課長がミーティングルームを出られ
ひとりになったら軽く叫びたい
「じゃ、期待してるから」
「はいっ!!」
ガチャリとドアを開けて、課長が出ていかれた
ううううううううう~~~っ
「やったぁーーーーーーーーっ!!!」
こぶしを握って引き寄せる
そして、両腕上げて、大きくジャンプ
そして、私の雄たけびが聞こえたのか
「夏川さん、もしかして・・・ 企画、通ったんですか?」
ぞろぞろと、私の班にいる人たちが入ってくる
みんな、うずうず、って顔してる
「はいっ、通りましたぁーーー!!!」
私の声に
皆がウォーーーッて答えてくれた
あ~
この喜びを分かち合う感じ
溜まらない
これから始まる苦悩のことは
一瞬だけ棚上げして
今は皆で喜び合う
「よしっ、じゃあ皆、今、手持ちの仕事についてまとめて持ち寄って、早速スケジュール組んでいこう!20分後にここで打ち合わせ、始めるよ。」
「はいっ」「はいっ!!」
ブーブーブー・・
スマホが振動したので手に取り確認すると
松永からメッセージ
ーー 企画、通ったか?おめでとう
同じフロアだから
バレバレか
ーー うん、やったよ!ありがとう!!
すぐに返信する
ーー 休憩コーナーの自販機の前、集合
ーー 時間ないよ
とか言いつつ、動き出してる
だって、目の端で、松永が動いたの、見えたから
私がつくと、自販機がゴトンッと音を立て
出てきたペットボトルを渡された
「ほら。お祝い」
「ありがと。打ち合わせで飲む」
「これから色々大変だろうけど、何かあったら遠慮なく言って」
松永は何度も企画を通してきているから
私よりもずっと経験も実力もある
だからって、なるべく頼らず乗り切りたい
っていう同期の意地みたいなものもある
「うん、ありがと」
けどやっぱ、こうしてすぐに祝ってもらえること
声かけてくれること
嬉しくてたまらないから
ありがと、って言っちゃうよ
「やっと通った企画だもん!それも秋のイベントの目玉にしてくれるって。頑張るよ」
「まぁ、頑張りすぎないようにな。ほどほどに。チカラ、抜いていけよ?」
「え?」
「ほら、おまえ、こういうときほど、ひとりで頑張りすぎる癖あるだろ。気をつけないと」
「・・・・・・・・・・」
な・・んで?
そういうとこ・・ 気づいてくれてたってこと?
「ちゃんとまわりに頼れよ?俺もいるし。それだけ。じゃあなー」
去り際に くしゃくしゃ、って
私の頭
ちょっとそれ
少女漫画でイケメンがヒロインにやるやつだよ?
松永ぁ・・・
そういうとこだよ
松永に手渡されたペットボトル
両手で握りしめ、立ち尽くしてしまう
だって
私今、無駄に赤い顔してるもの
こんなんじゃ仕切れないよ
あーもうっ
松永のバカバカバカバカバカ
だから、私をこんなときめかせちゃダメでしょうが
今、振り向いて
席に戻るとき
こんな顔してるの
もし、松永に見られた日には
また心配かけちゃうことになる
それだけは避けたい
気まずくなんて、なりたくない
やっぱ・・・
アレしかない!!
「うんっ、よしっ!!」
気合を入れなおすと、私は自分のデスクへと戻った