「どうした?火曜からすっごいお疲れな顔してるわよ?」

 

 

社食で今日もランチ定食

先に来ていた私の向かい側に

毎度のごとく、茜が座ってきた

もちろん、手にはランチ定食のトレイを持って

疲れが顔に出ている私を心配してのこの発言

 

「うん、寝不足。」

 

あ~あ

もうこんなやり取りも、あと1ヶ月なのか

うわぁーーーーん

 

「なに?昨日、遅かった?」

「仕事は早かったけど、家に帰るのが、ね」

「ふぅ~~ん・・ 遅かったんだ?」

 

森島のせいで、ね!!

 

「ねぇあさひ、あんた、社員寮、空きが出たら入りたいって申請出してたわよね?」

 

「え?あ、うん。・・・あああああああああ」

 

「声、大きい!!」

 

 

一気に注目を浴びてしまったようで

まわりの人たちが一斉にこちらを振り向いた

 

すみません、すみません、とお辞儀

 

社員寮

私が入社するときは申し込みが多くて抽選で

そこで外れたらなかなか入れなくて

年度替わりは新入社員優先だし

途中で誰かが退出しないと入れないんだけど

そういうのって、気づいたらもう誰かが入ってて

 

そうか!!

茜、結婚退職するってことは、社員寮も出るんだ!!

いつも、繁忙期で遅くまで残業したときは

茜の部屋に泊めてもらってたけど

あそこに住めたら、これからは何の心配もしなくていい!!

 

「総務に言っておいたから。」

 

「(助かるぅーーー!!)」

 

やったぁーーー

って叫びたいーー

 

だってうちの社員寮

設備も充実してるし、築年数もそんな経ってないのに

家賃格安!

うちの会社の福利厚生でも断トツの存在

これからは浮いた家賃を貯金できるっ!!

 

「独身のうちしか住めないからね。あんたもそのうち、すぐに出ていくことになるんじゃないの~?」

 

茜がエビフライを口に含みながら

ニヤニヤと笑って言う

 

「・・・・ 喧嘩売ってるの?茜さん?」

 

にこっ

 

私に彼氏いないのわかってて、その意地悪か?

 

「あら。ハイスペックイケメン彼氏がそろそろプロポーズでもしてくれるんじゃ?」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 

どうしたどうした?茜?

エアーのハイスペックイケメン彼氏がどうやってプロポーズしてくれるんですか?

教えてください

 

 

「はぁ~~・・・ 茜の冗談に付き合ってる気力なんてないわ。」

 

「あ、そうそう。忘れてた。寝不足の理由、聞かせてもらおうじゃないの!何かあったんでしょう?私に言いたくなるようなことが」

 

え?

なんでわかるの?

茜ってエスパー!?

・・・じゃなくて

 

「あったなんてもんじゃないのよ、もう~。聞いてよ、茜ー」

 

 

・・・・・ あ

 

ここまで言って、ふっと我に返る

 

茜に何を言うつもり?

森島くんって 全然いい男じゃないわよ?

エアー彼氏バレて、脅されて、彼の友達の結婚式になぜか同席することになったんだ、って?

 

 

言えない、言えない

言えるわけない

しかも、こんな、誰が聞いてるかわかんない社食で

 

 

はぁ~~~

 

大きく溜息をついた

 

 

「何よ?言いかけてやめるなんて気持ち悪い。」

 

「ん~?・・・ なんでもない。やっぱたいした話じゃなかった」

 

 

ってことにして?

 

 

 

「よ!お疲れ!ここ、いい?」

 

 

「松永」「あ・・」

 

 

いい?って聞きながら、返事は待たずに座るっていうのは

同期だからこそ、よね

あーでも、気まずいなぁ、昨日の今日でこれは

松永のためにも、早く彼氏作んないとな~って気がしてきた

いや、でも、今までできなかったのに、そんな簡単に出来るのか?

茜みたいに電撃的一目惚れするような出会いが落ちてこないかな

いやいや、そんなことを言ってるから出来なかったわけでー

 

 

「ちょっと松永ぁ~。昨日は遅くまで、あさひのこと、連れまわしたんだって~?おかげで寝不足だって愚痴ってるわよ?」

 

 

「え?」「え?」

 

茜の言葉に

松永、きょとん

そして私もー

 

「ちょ、ちょっと茜!私、そんなこと言ってないでしょう?勝手に話、作らないでよ」

 

「え?違うの?」

 

松永、こっちを向いて首を傾げてくる

 

「昨日は・・・ そんな遅くなかったよな?飯食って、軽く打ち合わせて、解散。月曜だったし。」

 

「え?家に帰るの、遅くなった、って言わなかった?」

「・・・ おまえまさか、あのあと一人で飲んだりしたのか?」

 

どうしよう

ひとりじゃないけど、誰とは言えるわけなどなく

 

「あ~・・ その・・ ちょっと寄り道・・したかな?・・はははは 」

 

「は?月曜から飲んで何?二日酔い?もう若くないんだから気をつけないと。そりゃだるくもなるわよ」

 

「・・・・ 面目ない」

 

飲んでないよ~ お酒なんて・・・

 

「なんだよ、酒はやめとく、って言ってたのに、結局飲んだのか?言えばつきあってやったのに」

 

「・・・・ そうだね、私、先行くわ。そういうわけで、午後からの準備もまだ出来てないし」

 

 

トレイを持って立ち上がる

これ以上ここにいると、変なこと言ってしまったらまずいし

松永とも気まずい

 

 

「え?そうなの?」

 

「うん、おふたりはごゆっくり~」

 

「・・・ あぁ、じゃあな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏川が行ってしまうと

二階堂がジロっと横から睨んできた

 

「松永。あんた・・・ 昨日、決めなかったの?」

 

「・・・ 言うな」

 

「任せとけ、って言わなかった?」

 

「そんないきなりは無理だろ。」

 

「いやいや、いきなりって、何年あったのよっ!!」

 

「口にモノを入れたまま喋るな、って」

 

「あ・・ 森島君だ!道理で人が増えてきたわけね」

 

「単純に時間の問題だろ」

 

「ひがむな、ひがむな。松永も昔はあんなふうにモテモテだったわよ?」

 

「うるせー。人を終わったみたいに言うな」

 

「わっ!森島君、こっちに来るわよ?もしかしてこの辺、座るのかしら」

 

 

イケオジと結婚するんじゃないのか?

なに、イケメン相手にキャッキャッしてるんだよ

 

 

「お疲れ様です。松永さん、昨日、アレ、どうでした?」

 

えっ?オレ?あっー

ガタガタッー

椅子を下げ、立ち上がって森島の目線に合わせた

 

「助かったよ、森島!おまえのおかげでプレゼン通った!」

 

「よかったです。ちょっと気になってましたから」

 

「あー悪い!そうだよな、俺の配慮が欠けてた。すぐ連絡しなきゃ、だったよな。あんなふうに世話になったくせに。」

 

「いえいえ。そんなつもりで言ったんじゃないですよ」

 

 

仕事も出来るし、このルックス

そりゃあモテるよな

 

178cmの俺でも少し見上げる感じだから

180は軽くあるな

 

 

「あっ、ねぇ、ふたりでそんな立って話してないで、よかったら森島君も、ここ、座ったら?」

 

「いえ。 俺、人見知りなんで。失礼します」

 

 

ペコリ、と頭を下げると

森島はぐるっと回って別の席についた

 

周りにあんまり人が・・いや、女子がいないとこ

 

 

「人見知りだって~ かぁわいぃーーー」

 

 

隣で二階堂がはしゃいでいる

 

ひとまわりも上の彼氏と比べりゃ

そりゃ、可愛いんだろうな

 

 

「なぁ二階堂ー」

 

「ん~?」

 

「夏川と森島って、なんか接点あったっけ?」

 

「えー、ないでしょ。聞いたことないけど・・。何?まさか、心配してんの?私も昨日だったか、森島君のこと気になるぅ~?って聞いてみたけど、だぁいじょうぶよ、だってあさひ、年下は好きにならないし。まぁ、それ以前に森島くんだってないでしょ。」

 

・・・ ふぅ~ん

ま、二階堂がないって言うなら

ないのか・・・

 

あ~ そういえば年下はないって確かに言ってたな

 

「・・・ ならいいけど」

 

「そんなことより、まずはキミが、頑張りたまえ!!」

 

 

バンバンバンッー

 

「ゴホッー・・・ おっまえっ・・ 人が食べてるとこ、背中、叩くなよ」

 

キャラも違うだろ

誰だよ、それ

 

ふぅ~

 

言われなくてもわかってるよ、そんなこと