「あさひさんっ?・・・ もしかして、あさひさんじゃないですっ?」

 

 

松永と別れて、早足で帰路につく私を呼び止めたのは

耳慣れない若い女の子の声だった

 

しかも、あさひさん、だなんて

そんなふうに私のことを呼ぶ若い子なんていないわよ

とばかりに振り返ると

 

 

「・・・・・ えと・・  彩芽ちゃん・・だっけ?」

 

「わぁ~!覚えていてくださったんですねっ?」

 

 

うそでしょう

信じられない

まさか彼女と再会するなんて・・・・

 

そう

先週、出会って、二度と会うこともないだろうと思っていた

森島くんの元カノ?

 

 

「今日は・・ ひとり?」

 

 

そんなに遅くはない、とはいうものの

女の子の一人歩きは危ないわよ?

 

 

「はい。今、エステの帰りなんです!」

 

「エステ?」

 

そんなの、通わなくても全然大丈夫でしょう?

ハリッハリよ!!貴女!

 

「もうすぐ結婚するかもなんです!・・・ 聞いてませんか?快から」

 

「・・・ えぇ、ちょっとそこまでは・・・」

 

 

聞いてるわけないでしょう

なんて まさか言うわけにもいかず・・・・

 

「あの・・ 隆哉くん?だったっけ?・・ この前の彼と?」

 

「当たり前じゃないですか!他に誰とするって言うんですか、もう~!あさひさんったら!天然です?それ」

 

「・・・・・ごめんなさい」

 

「ねぇあさひさんっ、ちょうどよかった!私、また会いたいって思ってたんですよっ」

 

私はそんなこと、ちっとも思ってませんでしたけど

 

「今、時間いいですっ?あそこのマック、入って話しましょうよ!」

 

「え?ちょっ、ちょっと?」

 

 

これ、時間ないって言っても連れていかれるやつ?

この子たちって、連行癖があるのかしら?

私は彩芽ちゃんにぐいぐい引っ張られるままに、マックへと入っていった

 

 

 

 

あ~・・

こんな時間によくないよ?

ほんと・・・

 

なんて頭では思っても

入るとこの香りにあっという間にやられる

 

ポテトのLサイズと飲み物を買って席についた

 

はぁ~

どうして月曜のこんな時間に

この、会って二度目の女の子と

マックなぞ・・・

 

向かいに座る彼女はあろうことか、ハンバーガーを食べている

 

「・・・いいの?その・・ 結婚式前なんでしょう?」

 

普通、ダイエットとか、してるよね?

 

「あ~ 大丈夫です!私、太らない体質なんですよ。それに式だって出来るかどうか・・」

 

「・・・・・ え?」

 

太らない体質って、この子、女子、敵に回すタイプだなぁ~

でも、森島君、この子のこと好きだったんだよね?

 

「式が出来るかどうか・・って?」

 

「快から、色々聞いてます?私のこと・・・」

 

「あ~・・・ いえ・・・特に何も・・・^^;」

 

聞いてるわけない

 

「ですよね、快は・・ 絶対、人のこと、悪く言ったりしないですもん。私・・ 快にひどいことしたのに。快と別れて、よりによって、快の親友とつき合ったんですから」

 

・・・ あの噂、ほんとだったんだ・・・?

 

「私、高校に入ってすぐ、快に一目惚れして、何度も告って、ほぼ返事もさせずに強引に彼女になったんです」

 

・・・ どこかで聞いたような話だな~ 流行ってるのかしら

 

「でも快って、無表情じゃないですかぁ?確かにあの顔が好きで彼女になったんですけど、私が何を言っても、いいよ、って聞いてくれるばっかりで、全然気持ちが見えなくて・・。」

 

無表情・・・

確かにクールかもしれないけど

照れたりしてたよね?

 

ていうか

 

「彼の顔が好きで付き合ったの?彩芽ちゃん」

 

 

だからか?

あのとき、森島君が荒れてたわけは・・・

こりゃ、顔が好き、って禁句ね

彼には・・・

 

 

「そうなんですけど、でも無表情は辛くて・・・ ほんとに私のこと好きなのかな?って不安になるばっかりで・・・それにほら、快ってかっこいいからモテるし」

 

まぁね

モテるでしょうね

でも・・・

 

 

「そんなに無表情だった?彼なりに表現してくれてたんじゃないの?」

 

 

彼にとって、トラウマになっちゃうくらい影響与えてるってことは

それだけ好きだったんだと思うよ?

貴女のこと

 

 

「いいえ。無表情でした。」

 

「え?あ・・ そうなんだ・・」

 

 

そこは、ゆずらないのね?

 

 

「だから私、辛くて・・・ いつも隆哉に相談しているうちに隆哉の優しさに甘えちゃって・・・」

 

 

こんなあるあるパターンであの森島くんが振られたの?ほんとに?

 

 

「そしたら快、何て言ったと思います?」

 

「え?」

 

 

知らないわよ!!

 

 

「「隆哉のことがいいんだったら、いけば?」 ですよっ!?」

 

「・・・・・」

 

 

ちょ、ちょっと待って?

えと・・・

元カノを親友にとられた、って話じゃなかったっけ?

いけば?って・・・

 

 

「ていうか、実はその前に、隆哉が、私のことを好きになったんだけど、おまえから奪ってもいいか?って快に言ってくれたみたいでぇ~」

 

 

えええええええーーーーっ

急にそこ、惚気?

っていうか・・・

なに?この話・・・

 

 

「でも、なんかみんな、私が悪女みたいに噂してて・・・ 結婚式、したいんですけど、皆、来てくれなさそうで・・・・」

 

そりゃそうなるわよね

 

「私が悪いのはいいんです。ほんとに、悪かったと思ってるから。でも、そのせいで、隆哉まで祝ってもらえないのは、かわいそうだな、って思って・・。だって隆哉はすっごくすっごくいい人なんです!!私なんかにはもったいないくらいで!!・・・実は、私と結婚なんて、やめとけって言われたりもしてるみたいなんです・・・ 彼は言わないけど・・・。へへ」

 

「・・・ 彩芽ちゃん・・」

 

 

彼女が へへ、っと笑った瞬間

大きな瞳から

ポタリと涙が零れ落ちた

 

なんなのっ

なんなのよっ、もうっ

 

最初は確かに小悪魔ちゃんかと思ったけど

なんなのっ?ちょっと健気じゃないのよっ

お姉さん、なんなら愛しさすら芽生えるわっ

 

 

「それで、あさひさんにお願いがあるんです!」

 

「え?私に?・・・ お願いって・・・」

 

 

なになに?

これはヤバいやつじゃない?

 

っていうか、そもそもこんな話、私、聞いてよかったの?

いいわけないじゃないの

ここはもう、早々に帰らなきゃー

 

 

「快と一緒に結婚式に来てもらえませんかっ!?」

 

「えええっ!?」

 

 

結婚式に来いですって!?

森島君と一緒にっ?

なに?

この子、何を言ってるのっ?

 

 

「快が来てくれたら、皆もお祝してくれるような気がするんですっ!」

 

「ちょ、ちょっと待って?彩芽ちゃん。確かに結婚式に彼が行くのはいいことだと思うわ!でも、だからってなんで私がー」

 

「だって、快はめちゃくちゃモテるんですよっ?もし快が来るってわかったら、いきなり女子の出席率が上がることになりますっ!そして、そんなところにひとりで来ようもんなら、快目当ての女の子の餌食になること、間違いなしですよっ!そんなの、彼女として、心配じゃないですかっ!?」

 

 

確かに結婚式は婚活パーティとも呼ばれる集い

そんなところに独身の森島くんが行けば、どんな状態になるのかは

自ずと知れたところ

 

だけど、そんなの、私の知ったことではない!

 

「別に・・・。いいんじゃないかなぁ?それで」

 

だって、もしかしたらその中に、森島くんにとっての素敵な出会いもあるかもしれないでしょうし

 

 

「・・・ あさひさん・・ もしかして、快の方があさひさんにメロメロなんですねっ!?」

 

「は?・・・な、なんでそうなる・・?」

 

「だって、快が女の子に囲まれても心配じゃないなんて、すっごい愛されてるって余裕じゃないですか!!すごいっ!まさかそんな人が・・・ あ~だから、さっきも快のこと、無表情じゃないって・・ やだぁーー!!見てみたい!あさひさんと一緒にいる快のこと!!」

 

「いやいや、そんなんじゃなくて、あのね?」

 

森島君が私にメロメロなんてあるわけないじゃないの

 

「あさひさんっ!快のこと、式に出てくれるように説得してくださいっ!!あさひさんの言うことだったら、快も聞いてくれますよねっ!?」

 

んなわけないじゃないの!

 

「ちょっと待ってよ、彩芽ちゃん。説得して、って言われてもー」

 

「もうすぐ快、ここに来ますから!」

 

 

 

 

「・・・・・ はい?」

 

 

今、何て言いました?

 

 

「マック、入ったときに、トイレで、隆哉と快にライン、送っといたんです」

 

 

どういうことなのよぉーーーーーーーーーっ!!!!