森島君、あのあと、ちゃんと帰れたんだろうか?
置いていっていいから、ってマスターに言われたものの
酔っぱらった会社の後輩を置いて帰るなんて
先輩としてどうよ!
って、週末、ずーーーーっと考えてた
これほど月曜が来るのを待ち遠しく思ったことはないわっ
いつもなら、仕事行きたくない~
って布団から出るのが10分は遅れるのよ
それがどうよ
いつもよりテンション高めよ?
あーー
でも、部署も違う森島くんのとこ
いきなり行って
呼ぶとか
ないわーー
って、思って逡巡しているうちに
もうすぐ昼休み
ランチに行く前、狙ってー
と、森島くんの部署の前まで来てみたけど
「・・・・ やっぱ無理」
またにしよう!
「何が無理だって?」
斜め上から声がした
くるっー
「出た・・」
森島君!
振り返るとすぐ後ろにいたから
ぶつかりそうになって
後ずさる
「出た、って・・ 人をお化けみたいに」
不機嫌そうな顔で
髪をかき上げ
見下ろしてきた
ちょっと君!
それ、わかってやってるでしょ?
森島悩殺プレイ①と名付けようか
「あのね、森島くんー」
「ちょっと!・・・ここじゃなんだから、あっちー」
「え?」
またですか?
腕、掴まれて、連れていかれる私
少し、人気の少ないところまで行くと
ようやく手を離してくれた
でも、逆にこういうところで話してるの見られたら
余計やばいんじゃ?
ってちょっと脳裏を過ったけど
せっかく会えたから、聞いちゃうわよ?
「金曜は大丈夫だった?ちゃんと帰れたかな~って思って」
「・・・ あぁ・・・ ほんっと、なんでこうなるんだろ。」
「ちょっと森島くん?私の質問!」
「俺なら大丈夫です。あそこ、マスターの家、近いんで、そっちで泊めてもらいました。」
「あ、そうなんだ?」
そんなこと、知らないんだから
心配するに決まってるでしょう?
そんな涼しそうな顔して言わないでよ
余計なお世話って思い知らされるじゃない
「・・っていうか、オレ、奢るって言ったのに、結局夏川さんが出してくれた、って聞いて・・・。ほんっとすみませんでした!」
「あ~それならいいわよ。マスター良心的だったし。」
「いや、ダメです。それにあんな時間なのに、女の子ひとりで帰すなんて・・」
女の子扱い?
すごい
っていうか、こっちの紳士的な方が、私のイメージする森島くんか
「・・・・ おまけにつぶれるとか、かっこわるすぎ・・」
お?
「もしかして、一番気になってたの、それ?」
なんか、可愛いいぃぃ
私の背が森島くんより高かったら
頭、撫でてあげたいっ
・・いや、そんな高かったら怖すぎるけどwww
「オレ、なんか変なこと言ってませんでした?」
「変なこと?・・え?もしかして、覚えてないの?」
「・・・・ 途中から・・・・・。やっ、でもオレ、酔って記憶なくすとか、社会人になってから一度もなくて、ほんと、金曜はどうしたんだろ、って感じで・・」
そっかぁ・・
じゃあもしかして、あのふたりに会ったことが原因だったり・・?
「変なことなんて言ってないから安心して。」
そう私が言うと、森島くんの顔があからさまにホッとした
「もう大丈夫?」
「え?」
あ、大丈夫?って聞くのはなんか変か
「あー、ほら。二日酔い・・とか」
「大丈夫です。もう月曜ですよ?」
「よね。ハハ。いや、年を取ると、結構残ってたりするのよね~」
「そんな変わらないじゃないですか!」
「・・・え?」
変わらないって・・
私と森島くんのことだよ?
違うでしょ
3つも
「え?って、歳でしょ?俺と夏川さん、そんな変わらないでしょ。」
「いやいやいやいや、結構違うって!高校とかかぶらないしっ」
「でも、大学ならかぶりますよ?」
「・・・・ あ~・・ そうかも?」
ていうか、森島くん、私の歳、知ってるんだ?
「ってことで夏川さんー」
♪♪♪~~~
「あ、ごめんっ、電話」
私のスマホが振動と共に着信音鳴って
ポケットから取り出し、着信画面を見てびっくり
同期の松永だ
「・・・ もしもし?松永?どうしたの?」
社内にいるくせに、わざわざ電話って・・・
『あー・・ さっき、二階堂から話を聞いた。』
あっ!!!
茜、話したんだ?
そうか
それで電話!!
さすが松永
皆に聞かれたら困るもんね
「うん。」
『それでー、色々、話をしたいんだけど、おまえ、今夜時間あるか?』
「今夜?うん、大丈夫だよ」
『じゃあ、晩飯食いながら打ち合わせしようぜ』
「打ち合わせ?」
『あぁ、ほら、祝いとか・・ 同期のみんなにも連絡とかしてさ』
「あー、なるほど!わかった。」
『じゃあ今夜』
「おけ」
ふぅ~・・
電話を切って振り返ると
森島君がまだそこに居てびっくり
「えと・・ ごめん、何か言いかけてたんだっけ?」
「電話・・・ 松永先輩からですか?」
「あ、うん、そうだけど・・」
「仲、いいですよね?」
「まぁね、同期だし」
「今夜、また飲みに行くんですか?意外と酒好きなんですね」
ピクッ
また?酒好き?
何だろ、森島くんのセリフに棘を感じたっていうか
ムカついた
「・・・ いいでしょ、別に。記憶なくすまで飲みませんから」
「・・っ!!?」
だから、つい余計なことまで言ってしまった
と思ったのは、森島くんの顔を見たとき
「じゃあ」
「どうぞ」
お互いお辞儀をして
また、という言葉をのみ込んで
私たちはバラバラな方向へ歩き出した
なんなのよ、もうっー