「えっと・・・ どうも。こんばんは、森島君」
なぜこんなところで、彼に会うわけ?
ってか、連れはいないようだし
君もひとりで映画を?
「おひとりです?」
私も今、心の中で同じ質問をしたよ、君に
「ええ、まぁ。・・・森島君も?」
「・・ なんか、意外」
意外、って何が?
ひとりで映画を観ることが?
「快?」
え?
女の子?
森島くんの後ろから
可愛い女の子が現れて
彼の名前を呼んだ
なぁ~んだ、ひとりじゃなかったのか
森島君は
と思ってたら
「お、やっぱり!快だ!」
今度は男の子が現れた
なになに?どういうこと?
向こうはカップル?
連れじゃないってこと?
「あの・・ 森島君?」
呼ばれてるのに
すぐに振り向かないなぁ~
って思ってたら
ようやくー
くるっと振り返って
「おお。お前らも来てたんだ?」
彼らに声を掛けた
お友達と再会ですか
それは楽しい週末になりそうね
「じゃあ森島君、私はこれでー」
黙っていなくなるのも失礼かな、と思って
小声で彼の背中に声をかけ
去ろうとしたその瞬間
ぐいっと腕を引っ張られた
「・・えっ?」
森島君っ?
何が起きてる?
私の腕を森島君が掴んでる
「悪いけど・・ 俺ら、これから食べに行くとこなんでー」
え?
は?
俺らって言った?
その、俺らってのは、私も含まれてます?
「え?もしかしてその人・・・ 快の彼女さん?」
「なんだよ、快。彼女出来たんだったら紹介ぐらいしてくれよ。」
おいおい、森島君?
この漫画のような展開はいったい何なんだい?
って、私、目の前の出来事に
驚きのあまり、すっかり他人事
もう、森島君に合わせる覚悟できてるから
だって、昼間聞いたの、思い出した
ーー 元カノを親友にとられて人間不信なんだって
もしかしてこのふたりがそれ?
だとしたら、さっきの森島君の反応、うなずける
てか、なんなの?
このふたり・・・
森島君にひどいことしておいて
無神経じゃない?
て、なんなら腹までたってきた
「どうも。快くんのお友達かな?はじめまして。」
にこっ
思いっきり社内でも得意先でも評判のいい営業スマイルをかましてやった
「うわっ・・ すげぇ美人・・」
「わぁー!綺麗な人!やったね、快!はじめまして、私、快とは高校の時からの同級生で、木戸 彩芽と言います!ほらっ 隆哉も!」
「あっ、あぁ・・ えとオレは快とは幼なじみで・・ 佐野 隆哉って言います」
あれ?
意外と・・・ いい子たち?
しっかり挨拶してくれて・・・・
私、勘違いしてた?
やっちゃった、ってやつ?これー
慌てて森島君の方をみる
どうしよ
どうしたらいい?
「あー・・ 彼女は、俺の会社の先輩で、夏川あさひ、さん」
え?
しっかり紹介・・ されました?
「・・ 夏川です。」ぺこり
すごい
私のフルネーム、知ってたんだ?
部署も違うのに
なんてちょっと感動してたりして
「あのっ、快はちゃんと仕事してますっ?」
「こいつ、ちょっと不器用なんっすけど、いいやつなんです!」
うわっ
すっごい前のめりに来られた!
「あ・・えと・・ 仕事はちゃんとしてますよ。むしろ出来すぎて、上からの評価も高いと思います。それと・・・ 不器用?」
森島くんの方をみると
照れてるのか、目を逸らされた
ちょっとー
君に逸らされたらどうしていいかわかんないでしょう?
「どっちから告ったんですか?」
「えっ?」
「ちょっとお前ら!もういいだろ。ここも閉まるし。早く出ないとー」
そう言うと、森島くんは、手のひらでふたりに帰れ帰れとやってみせ
私の手を掴んだまま、エレベーターの方へと歩いていく
え?
かなり早足で、ついていくの、精一杯!
来ていたエレベーターに人が乗り込んでいき
そこに滑り込むように私たちも入って振り返ると
「あ、快!よかったらこのあと一緒にー」
後ろから来ていたふたりがこっちに向かって声をかけてる
がしかし、満員になったエレベーターは無情にも扉がしまり
彼らの姿は見えなくなった
「・・・・ すみません、ほんと・・」
突然、解放された腕と
森島君の謝罪に
ちょっと意地悪してみたくなった
「・・・ おなか、へったな~」
ちらっ
「・・・ 奢ります」
ふふっ
それにしても・・・
この満員のエレベーターの中
私が気になったのは
その窮屈さではなくて
イケメンっていい匂いがするのね
なんてことだった