「ふぅ~~」

 

フロアに残るまばらな人影を確認しながら

椅子にすがり、大きく伸びをする

 

何とか午前中の遅れを巻き返し

一区切りつく、予定のところまで終了

 

こんな金曜は、飲みにでも行きたいところだけど

まぁ、二日続けてってのもね

それに何といっても

 

今まで一緒につきあってくれた同僚は

もうすぐ人妻になって会社も辞めてしまうわけですか

だから私との飲みも、昨日の木曜だったわけですか

 

「はぁ~・・・」

 

さみしい話だ

 

とはいえ、やっぱりこのままひとりの家には帰りたくないわけで

そういうときのお楽しみは・・・

 

スマホでちょろっと検索してみる

 

あ・・

最終の上映時間、今からでも間に合いそう

 

ササッとデスク周りを急いで片付けると

バッグを持って席をたつ

 

 

実は私、ひとりで映画を観に行くのが趣味で

まぁ、それには色々理由があるわけなんだけど・・・

 

今日のは、お気に入りの少女漫画が実写化されたやつなんで

こんなの、誰かとみるような歳でもないわけで

だけどどうしても観たくって・・・

 

調べてみたらまだ最終上映時間に間に合いそう

ってことで

急いで映画館へ向かわなきゃー

 

 

「・・おっと、・・夏川?」

 

 

エレベーターへと向かう角を曲がったところで

誰かとぶつかりそうになった

 

 

「松永?」

 

 

なんと同僚の松永だった

 

 

「今、帰り?」

「あー、うん。松永は?戻ってきたとこ?」

「そうだけど・・ これ、置いたら帰れるから、どう?一緒に飲みにでもー」

 

うっわぁーー

さっきまでの私だったら

即、のっかってた(オイオイ、二日続けてそれはどうなんだ?)

 

でももう、今の私は映画モードなのよぉーー

絶対絶対観たい

 

「ごめんっ、ちょっと予定あって・・ 急いでるから。また今度!」

 

「そっか・・ 残念。じゃ、またー」

 

 

若干、後ろ髪引かれる思いだけど・・・

まぁ、昨日の今日で松永と飲みに行ったら

茜のこと、話しちゃいそうだし

ヨシとしよう!うん

 

それよりー

 

映画映画♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ めちゃめちゃよかった・・・」

 

 

 

エンドロールを見ながら

つい漏れた感想コメント

 

正直、想像以上だった

 

特に私が見入ってしまったのは

ヒロインとくっつかない方の

いわゆる当て馬役の彼を演じた子

 

まさか日本人であんなに彼を再現できる子がいるなんて・・

 

尊い・・・

 

彼を演じた子の名前を必死で確認したくて

エンドロールにも見入ってしまったわけですよ

 

しっかり見ました

その子の名前はー

 

 

「・・・ ユヅル」

 

 

これから要チェックだわっ!!

とりあえず、何かドラマとか出てないかチェックしなきゃ

今まで観たことない気がするんだけど・・・

 

あー、若い子の映画とかかなぁ

漫画原作じゃなきゃ見ないしな~

 

 

あーー

こんなことなら、上映前にパンフレット買っておけばよかった

最終上映後はもうショップは開いてないんだよね

まさかパンフが欲しくなるくらい、いいとは思いも寄らず

くぅーーー

 

 

なんて、上映後もさっさと立ち去らずに残っていると

他の映画も終了を迎えたようで

観終わった人たちの波が押し寄せてきた

すごい人

 

あ~ 今日から上映になった話題のやつか

 

 

「・・・・・・・」

 

 

うそでしょ

なんとなく視線を向けただけだったのに

 

バッチリ目が合ってる人がいる

 

 

慌てて目を逸らしたけど、とき、既に遅し

 

歩いてくるよ、こっちに

 

 

どうしよ

立ち去るわけにもいかないよね

変に思われるだろうし

 

かと言って

何を話す?

 

え?ほんとに来る?

 

 

 

「夏川さん?」

 

 

 

来たぁーーーー!!

 

しかも話しかけてきた

私のこと、知ってるのか