「何、ぼ~っとした顔で食べてるのよ、今日のランチ定食、味、してる?」

 

そういって、社食で同じくランチ定食のトレイを持って

私の目の前に座ってきたのは

 

昨夜、私に爆弾を投下した同期の二階堂 茜

 

「誰のせいだと思ってんのよ。いきなりあんな話を聞かされて・・・。おかげさまですーーっかり寝不足。今日はイージーミス、多発してます」

 

「うわぁー。自分のミスを人のせいにするの?・・にしても、完璧なアンタがそんなミス多発してたら周りもびっくりしてるでしょ」

 

「指摘される前に自分で気づいて直してます」

 

「それ、ミス多発してるって言う?」

 

「処理に要する時間、いつもよりかかってますからね」

 

「わーお。そりゃ問題ね」

 

「ね、この話、他に誰が知ってるの?まさか、私が最後とか言わないでよ?」

 

「上司と人事。あさひが最後のわけないでしょ。まぁ、皆には来月になってから言おうかな?って思ってるとこ」

 

「え?じゃあ、松永には?」

 

「あ~。松永?まだ言ってない」

 

 

松永というのは、私たちの同期の 松永 圭一郎 

入社当時は男女合わせて8人もいた同期だったが

今、この本社に残っているのは私たち3人のみ

あとは、地方の支社にいたり、女子はそれこそ結婚や出産で退職したり、だ

 

 

それがー

 

来月、茜が退職したら、松永とふたりになってしまうわけだ

 

 

「まー、いいんじゃない?あいつには言わなくて」

 

「は?」

 

言わなくていい、って

だって同期だよ?

 

「いやいや、他の皆と一緒に聞かされたらショックだって。」

 

「かな?」

 

「少なくとも私なら、ショック」

 

「ん~。でもアイツ、男だし。変わんないでしょ」

 

「ご祝儀、減るかもよ」

 

「それは困る」

 

アハハハ

ふたりで笑いあって

ようやくランチ定食の味がしてきた

 

「鯖味噌、うますぎ」

 

「よく、わからずに食べれたわね?あさひ」

 

「ほんと」

 

 

それくらい、衝撃が大きかったんだってば

まぁ、まだなかなか受け入れられてないけどね

自分でも驚くくらい・・・

お互い彼氏がいないもんだと思ってたから

 

そんな相手がいるってことを教えてもらえたかった、

っていうとこに対するショックが大きいのかもしれない

 

とはいえ、あの茜が?

出会って1年

ひとまわりも上のイケオジに一目惚れして?

何度も何度も口説いて口説いてやっと落とした

て聞いたときには

そりゃあもう、酒も進んで 昨夜は盛り上がりましたわよ

 

でもその分、帰って一人になったときに

ふと寂しさが押し寄せてきたのよね~

 

 

「あ、快くんだ・・」

 

「え?」

 

 

茜の呟きに振り向くと

すでに彼に気づいた女性社員が大盛り上がり

遠巻きに見つめるひと

声をかけに行く人

情報を聞きつけやってくる人

あっという間にうちの社食の人口密度が上がっていってる

 

「・・・ すご」

「相変わらず、すごい人気ね~」

 

森島 快くん

入社2年目にして仕事の出来るヤツって上司からも一目置かれている

院卒だから、スキルが高いのよね

大卒、短大卒で入った同期社員よりも

年も上なせいか、落ち着いて見える

それでいて、顔面偏差値も、芸能人レベル

とくれば、モテないわけがない

 

院卒で、2年目・・・

25歳?誕生日なんて知らないけど、今年、26歳?かぁ~

3つ下だな

 

高校も中学もかぶらないやつだ

 

 

 

「そういえば、快くんのあの噂、ほんとかな?」

 

 

突然、後ろの方の席から、話し声が聞こえてきた

 

さっきまで、私たちの周りに人などいなかったのに

森島君のおかげで上がった人口密度で

声がすぐ後ろから聞こえてくる

 

・・・ あの噂って?

そんなの、知らない私も思わず聞き耳をたてちゃった

 

 

「元カノ、親友にとられて人間不信になってるってやつ」

 

 

なんですって?

 

 

「彼女と別れたって聞いて告ってる女の子、皆それで玉砕してるって聞いた~」

 

 

な、なんとっ!!

みんな、告ってるの? ← ソコカイッ

 

 

「だよね?誰とも付き合う気ないって」

 

 

ふぅ~ん・・

誰とも付き合う気ないんだ

 

 

「でも隙あれば、って普通いくよね?」

 

 

いくのっ?

 

 

 

 

クスッ

 

今度は前から笑い声が聞こえ

ハッと我にかえると、茜と目が遭った

 

 

「なに?もしかして・・ あさひも快くん狙ってんの?」

 

「はっ?私がっ?まっさっか!!だって私、年下なんて好きになったことないよ?」

 

「アハハハッ 何、狼狽えてんのよ。逆にあるかと思っちゃうでしょーが」

 

「いやいやいや、ないないない」

 

「そうよね、アンタには、ハイスペックイケメン彼氏がいるもんね」

 

「ちょっとぉ~、急に大きな声・・」

 

私が睨むと、茜が視線を私の後ろへと一瞬ずらした

あっ・・・

 

そうか

やば

さっきの・・・

私、思ったより声出てた?

 

 

もしかして茜、それで後ろの女の子たちに聞こえるようにわざと言ってくれた?

 

 

「そうね、彼が一番♪」

 

 

エアーだけどww