ガチャ
バタン
「・・・ただいま」
当たり前のように、そう呟いてから
返ってくるであろう声がないことに不審に思い
部屋に上がる
「・・・ 三崎?」
部屋の中は綺麗に片付いていて
洗濯物はー
俺のものだけが、ベランダに干されたままになっている
シーツと
「三崎っ?」
トイレも
お風呂も確認した
どこにも彼女の気配はない
もしかして帰った?
いや・・
待て
買い物に行くって言ってなかったか?
そうだ
言ってた
だからこの部屋の鍵を渡した
ホッ
「・・ってオレ、何、ホッとしてんだ?」
ボスッー
取り替えたシーツのかかったベッドになだれ込むように落ちると
天井を仰ぐ
ーー 別れよ、虎太郎
楓の言葉が頭の中
何度も反芻する
初めてだった
俺たちの間で
別れ話が出たのは
傷つけた
ずっと大事にしてきたのに
オレが
傷つけてしまった
「・・・ ごめんっ・・・ヒック・・ごめっ・・ 楓・・」
でもオレ・・・
別れたくない
別れたくないんだよ、楓・・・
・
・
・
・
・
それにしても、遅くないか?
三崎のやつ・・・
洗濯物を取り込むような頃になっても
まだ帰ってこない三崎に不安が募っていく
そして改めて部屋の中を見渡し
彼女のものがなにひとつ残っていないことに気づくと
オレはスマホを手に取った
「三崎、みさー」
その連絡先を探そうとして
「うそだろ・・・」
彼女の名前がないことに気づく
車のキーを手に取り、飛び出したー
なんでだよっ
帰ったのか?
だったら、ひとことくらい、言っていけよ
っていうか、またあの男がきてるんじゃないか?
大丈夫なのかよ、そんなとこ帰ってー
オレは車を走らせる
昨日、彼女を送っていった場所をたどり
そうだ
確かあの自販機のところに男が立っていて
「・・・・・ ダメだ。住んでるとこも・・・ 部屋番号もわかんねー・・・」
車を停めて
ハンドルにすがりつきながら
項垂れる
このへんだ、ってことくらいしか
あのとき
このまま素通りしてったから
「・・・・ ま、いいじゃねーか。ちゃんと帰れたってことだ。ん、いつまでもオレんとこいるわけにはいかねーしな。」
よかったよかった
ちゃんちゃん、だな
「よし!帰るか!」
車のサイドブレーキを外すと
アクセルを踏み込み
車を走らせた