拓海くんとの電話が終わってから
あれやこれや色々、もう、ほんっとうに色々考えてたら
こんなの眠れなぁーーい!
って思ってたのに
割とあっさり、眠りについてしまっていたようで
しかも爆睡レベルだったから
いつもより朝寝坊
でも今日はまだ日曜日
これくらいの寝坊は両親だって想定内のはず
と思って階下へと降りていくと
いつもなら聞こえてくるはずの話し声が
聞こえてこなくって
食卓の上にいくつかのおかずがラップをかけて置いてあり
横にメモが
ーー お父さんと、〇町のおばあちゃんのところまで行ってきます
「・・・ 出掛けたんだ」
冷蔵庫をあけると
昨夜
拓海くんに届けてもらったケーキ箱が目に入った
手に取って、開けてみる
「・・・ひとりで2つは多いじゃん」
自分で買ったやつなのに
ボソッとつっこむ
いつもなら
虎太郎に電話をして一緒に食べよう
っていうところだ
でも
一夜明け、この時間になっても虎太郎からの着信はなく
もう一度私からかける勇気など到底なく
・・・だって、またちぃが出たりしたら・・・
スマホを持ったまま
結局持て余して
また食卓の上に置く
虎太郎とつきあって
もう、何年だろう
思い返してみる
中学校の卒業式で告白されて
その時はまだ
よくわからなくて
高校の入学式を迎えて
ぐんと増えたクラス数に生徒数
急に虎太郎が遠くなった気がして
寂しくて・・・
つき合うことにした
つきあっているのだから
キスもしたし
セックスもした
虎太郎はずっと
私のそばにいてくれて
それはほんと
至極当然のことなんだと思ってた
だから
虎太郎が、私以外の女と一緒にいるなんて
まったくの想定外で
もうびっくりで
だけど・・・
それよりも
想定外なのは
虎太郎のことを考えなきゃ、て思っても
虎太郎のこと、怒ろうと思っても
この2つのケーキを見て
誰と食べようって私の頭の中 最初に浮かんだのは
ーー オレ、甘いもの苦手
と言った人のことで
彼女はいないし
好きでもない女とキスなんかしないし
・・・って
わかった?って
私の勘違いを
合ってる、って
ちゃんと顔見て言いたいから
って言ってくれた人のことで
何を言ってくれるんだろう?って
ドキドキして
ワクワクして
早く聞きたくて
でもほんとはそんなの聞いちゃダメだってわかってるのに
もう会いたくて
だって私には虎太郎がいる
ちぃを泊めてるけど
何もないって言ってくれた虎太郎が
こんなのよくないよね
って思っても
頭ではわかってても
会いたいってドキドキして
彼の言葉を聞きたくて
虎太郎の部屋にちぃがいること
嫌なくせに
赦せないくせに
なんで
虎太郎以外の人に会いたいって思っちゃうのか
そんな自分が
一番想定外で嫌なの
♪♪♪~~
目の前に置いたスマホから
着信音が鳴り響いた
おそるおそる、ひっくり返して
画面を見ると
表示された名前を確認し
心臓が跳ねる
ほら・・
「もしもし?」
「あ、オレだけど」
「うん・・」
わかってるよ?
以心伝心なの?ってくらいなタイミングに
驚いて喜んでるの
私・・・
「昨日・・」
昨日?
「ラインのID、聞き忘れて・・ 楓の、むずい?」
「えっ?あ、あ~」
ラインのID?
「ううん、簡単、だと思う」
「じゃあ教えて?俺の、ちょっと長いんだよね」
「わかった・・えと・・ 〇〇〇〇ー××〇△〇△」
「簡単じゃないじゃん」
「え?そう?」
「・・・ 何してたの?」
「えっ?」
「今・・。今日、何か予定ある?」
どきっ
え?
これって・・
予定ないって言ったらどうなるの?
もしかしてー
「ない・・ けど。」
「・・ けど?」
「ちょっとは、出掛ける・・ かも」
どうしよ、どうしよ
なんていうのが正解なの?
「でも、まだ起きたばっかで、何も用意してないしー」
そこまで言って、目の前のケーキが目に入った
「ケーキ・・ ひとりでふたつは無理かな~って思ってた・・・」
「ケーキ?まだ食べてなかった?・・ってか、あれ?そんなこと言ってたっけ?」
あ、笑った
電話の向こう
声がちょっと太くなって・・
「オレ、昨夜帰ったらもうなくなってた。ふたつとも」
「明海、ふたつとも食べちゃった?」
「あ~あ、俺も食べたかったなぁ~」
「甘いもの苦手、って言ってたよね?」
「うそ。オレ、そんなこと言った?」
「言った言った。そうなんだ、って思ったもの」
「今から、食べに行っていい?・・・とか?そしたらラインのID、すぐ交換できるし」
ドキッ
「・・え・・」
くる・・?
今から?
ウチに?
「なぁ~んてね、ちょっと言ってみただけー」
「うん」
「・・え?」
「えっ?」
うそうそうそうそ・・・
言ってみただけなの?
「あっ・・と今のはー」
「行くわ。これから」
えっ
「えーっ、ちょっと待って待って」
「いやいや、もう撤回とか受け付けません」
「じゃなくてー」
どうしよ
嬉しいの、私
会いたいの
昨日も会ったくせに
「あ、そっか・・。ご両親とか・・おられる?」
「ううん、ふたりともおばあちゃんのとこ出掛けてて、今誰もー」
あれ?
何だかこれって・・
もしかして私、誘ってる?
「そこで黙んないでよ。・・・ いい?オレ、そっち行っても」
どうしよう
でも、私の答えなんて
電話をとった瞬間からもう
決まってたようなもので
「いいけど、30分、してから来て!私、実はまだ寝起きなの」
「そんなの別にオレは全然ー」
「ダメです!!」
無理です
それは絶対に
「・・・ わかった。何か欲しいものあったら買ってくけど、ある?」
他に欲しいもの?
「ん~、特にない」
「了解。じゃ、あとで」
「うん、じゃ」
プツッー
あああぁあぁぁあぁああ
「・・・ 呼んでしまった・・・」
なんでしょうね
私ったら
ダメだってわかっていながら
こんな・・・
浮かれ気分で
洗面所へと向かう
食卓の上に伏せて置いておいたスマホが
鳴ってるの
全然気づかなかった