私が家を出て、乗り込んだ場所にまたー

ゆっくり静かに車が停まった

 

着いちゃった

 

 

キスのこと

なぜ?って聞きたいようで

言い出せなくて

 

降りなきゃ

という気持ちと

まだ降りたくない、って気持ちが交錯して

 

なかなかドアに手がかからない

 

 

「まだ大丈夫なら、・・・・ もう少しどっか行く?」

 

 

そんな私の迷いを気遣ってか

拓海くんがそう聞いてくれた?

 

 

「ううん、帰る!帰らなきゃ」

 

 

すぐ戻るって言って出てきた

コンビニなんか行かないって言ってたのに

行ってしまった(トイレだけど)

 

 

「あーあ、帰っちゃうのか」

 

 

ドキッ

 

 

え?

なんかそれって・・・

拓海くん、残念がってくれてたり?

 

 

いやいやいや

ないよね?

私なんか・・・

 

うん

やっぱ、あのキスは、流されてしちゃった

ってくらいの

 

そう

拓海くんにとってはそれくらいのヤツよね

 

 

うん

よしっ

 

帰ろう!

 

 

「じゃー」

 

ガチャ

 

ようやくドアを開けること、出来た

 

 

「あ、楓ー」

 

 

ドキッ

 

呼び止めてくれたっ?

 

「何っ?」くるっー

 

 

拓海くんの方へと向き直る

 

 

「ケーキ!・・・ 忘れてる」

 

 

あ~~~

 

「・・・ そうだった、ごめんごめん」

 

何しに来たんだよ、ってやつだ

 

 

拓海くんが、腕を伸ばし

後部座席からケーキ箱をとってくれた

 

近くで見える伸ばした首筋のとこ、かっこいい~

 

私、この辺のラインに男の色気を感じるっていうか

好きなんだよね

ここ好きと思えたらその人のこと好きっていうかー

 

・・・え?

 

 

 

「はい!忘れずに」

 

 

 

好き・・?

 

 

 

「・・・ 楓?」

 

「えっ?あ、ごめん!うん、ありがと」

 

 

いやいやいや

違う違う違う

 

 

「大丈夫か?ぼぉ~っとしてたけど・・」

 

 

目の前にー

超至近距離に拓海くんのイケメンフェイスがー/////

 

 

「楓・・」

 

「・・うん?」

 

 

近いまま

この距離で話しかけないでー/////

 

 

「さっきの・・・ 流されてシたんじゃないから」

 

「え・・」

 

 

さっきの、って・・ キス?

流されてじゃないって

 

 

「じゃないと姉貴の友達、呼び捨てになんかしないでしょ」

 

「・・・・」

 

 

え?え?え?

 

 

「それは・・・ どういう・・・」

 

 

「・・・・。帰ったら電話して?」

 

「え?電話?あ、でも・・ 拓海くん、運転中・・」

 

「あ、そっか。じゃあ、帰ったら俺からかけていい?」

 

「いい・・ けど」

 

「じゃあ、おやすみはそのときに」

 

「え?」

 

「・・ん?」

 

「あ、うん、わかった。帰るね?じゃあー」

 

 

降りなきゃ

 

うん

降りる

 

 

ドア、開けたままでした

 

ようやく地上に足をおろすことができた

 

 

私がおりると

車はあっけないほどすぐに走り出して行ってしまった

 

 

 

あれ?

 

なんか・・・

さっき話してるとき

もしかして、拓海くん、私のこと好きなの?

 

なぁ~んって

ちょっと思っちゃったけど・・・

 

 

あの名残惜しさのカケラもない去っていき方を考えると

 

 

「やっぱ違うか」

 

 

やばいやばい

勘違いしそうになった

 

 

 

 

 

玄関を入り

 

冷蔵庫にケーキを箱ごとしまうと

 

そ~~っと二階の自分の部屋までいこうと思ったのに

 

 

こういうときに限って

 

母に気づかれたりするのよね~

 

 

「・・・ ただいま」

 

 

「ずいぶん遅かったのね~」

 

 

「あはははは」

 

 

笑いながら母の横を素通りしていくと

階段を一気に駆け上がる

 

 

「まあね?もう子供じゃないんだし、とは思うけど・・・ あんたたち、そろそろどうなの?」

 

 

最後のほう、強めの口調で尻上がり

階下の母を見下ろすように振り返った

 

 

あんたたち?

 

 

「・・・ そろそろ結婚話とか、出てないの?」

 

 

「結婚?」

 

 

「お父さんとも、虎太郎くんだったら反対なんかしないから・・・ っていうか、とっとと貰ってってほしい、って話してるのよ?」

 

「そうなの?」

 

 

ふたりでそんな話、してたんだ?

 

 

「どうなの?」

 

「さあ?」

 

「さあ?え?出てないのっ? あんたたち、何年になるのよ!それはそれでどうなの?ちょっと今度虎太郎くん来たら母さん、話してみるわ」

 

「やめてよ、そんなの!あ、お風呂、入っていい?」

 

「いいけどもう、お湯、冷めてるわよ?」

 

「大丈夫大丈夫。私、ぬるめの好きだからー」

 

 

 

部屋に入って着替えを用意する

 

 

虎太郎と結婚

 

 

そりゃあ、考えなかったって言ったらうそになる

 

どころか、考えてました

 

 

 

だけど・・・・

 

 

 

 

虎太郎

 

ちぃといるのよね?今・・も?

 

 

電話だって、ちっともかかってこないし

 

 

「あ、見るの忘れてた」

 

 

もしかして、かかってきてたかな?

 

 

 

着替えをおいて

部屋においたままだった携帯を手に取る

 

 

 

着信履歴はー

 

 

登録のない番号が表示されるだけ

 

 

 

ただその番号を見ただけで

 

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

 

ポンッー

 

携帯をベッドの上に投げると

 

再び着替えをもち

私は階下へと降りていった