「ただいまー、疲れたー、お腹すいたー。拓海ー、何か作ってー」
「おかえり。そういうと思って、ご飯、作っといた」
「拓海んっ!!最高っ!!あー、持つべきものは料理上手な弟よね~」
「・・・ じゃないでしょ。どうする?すぐ食べる?」
「食べるっ!」
「じゃあ、手、洗っておいで」
「はーーーい!」
今日の俺はご機嫌だよ?
だってさ
俺にチャンスをくれたのは
姉貴なんだから
まぁ
うまく活かせたかどうかは、わかんないけど・・・
ただひとつだけ
後悔していることがある
それは
スマホ、連絡先を交換しなかったことだぁーーーー!!
いくら考えてもキッカケが浮かばなかった
だからと言って?
姉貴に聞くのも変だし
って、今までもずっとそれで聞いてこなかったわけだけど
今日は聞けばよかった
だってさ
ちゃんと帰れたの?
今、何してる?
今日ほど連絡したいと思ったことはない
人間ってほんと、欲張りな生き物なんだな、って思うよ
会えるだけでいい
からの
一度デートできるだけで
からの
もっと一緒にいたい
また会いたい
すぐ会いたい
声聞きたい
「俺、そろそろここ出て、また一人暮らし、考えようかな」
俺が切り出すと
姉貴の箸が止まった
「は?だってあんた、一人暮らししてたとき、元カノがいつまでもしつこくやってきたり、変な女があとつけてきたり、部屋の前で待ってたり、そりゃあ大変だから、って私と一緒に住むことにしたのよね?何を好き好んでまた一人暮らしを始めよう、って?」
だって、楓は実家だし・・・
ここだとお前がいるし・・・
ふたりでいちゃこらできねーじゃん
なんて、言えるわけもなく
「・・・ そりゃあそうだけど・・」
「まぁね、そろそろ考えてもいいかもね。私もいつまでもあんたと一緒にいられるわけでもないんだから」
「え?」
「実はね、おねーちゃん、プロポーズされましたぁ~」
・・・・ は?
「嘘だろ、姉貴・・・。だって彼氏なんか連れてきたことあったか?」
「今度、連れてくるわ。拓海にも会いたいって言ってくれてるし」
「え?姉貴の妄想じゃなくて、ほんとにいるの?そんな人」
「いるから言ってんでしょーが」
「そんなの・・・ 楓は知ってんの?親友なんだろ?」
「そうなのよね~ 本当は今日にでも言おうかと思ってたんだけど・・・。楓の話を聞いてたら仕事呼ばれちゃったし・・。それに楓の方が先に結婚すると思ってたから余計言い出せなくって・・・あ、でも楓、彼のことは知ってるわよ?当たり前でしょ。・・・・あーーーー!!」
ご飯を食べ終わった姉貴がいきなり叫んで立ち上がると
冷蔵庫を開けた
「どうしたんだよ、」
もう、さっきからびっくりしてばっかだよ
「今日、楓が買ってきてくれたケーキ、後で一緒に食べようと思って冷蔵庫入れてて・・・」
「え・・」
「食べるの忘れてた・・・ どうしよ、ふたりで食べちゃう?」
ケーキ入りの箱を冷蔵庫から取り出し
にっこり微笑む姉貴に
「ダメだろ、そんなの」
口ではダメ出し
心では感謝
「え?でも4つも入ってるのにー」
もう箱をあけて中身を恨めしそうに見つめている姉貴
「じゃあ半分出して・・・ 残りは、オレが届けてくる」
「え?届けてくるって・・ 今からっ?あんた、楓ん家、知ってたっけ?」
「まだそんな遅くないだろ。前に姉貴が酔っぱらったの迎えに行ったとき、楓も一緒に送ってった!」
上着と・・・
財布、あとー
スマホ
玄関で靴を履くと、スマートキーを手に取る
「楓に連絡しといて、オレが行く、って。じゃあ車、使うからっー。」
おっとっと
箱の中でケーキがぐちゃぐちゃになりませんようにー