「・・・で? 私のところまで逃げてきた、ってわけ?」
「逃げてきたわけじゃー・・・・・ あるけど」
自転車で行けるちょうどいい範囲に私の親友の家があっただけ
っていうか、彼女の家はとっても居心地がよくって
仕事の愚痴とかもいつも聞いてもらっているもはや駆け込み寺
「ひとり?拓海くんは?」
料理上手なイケメン弟くんとふたり暮らしの明海(アケミ)
土曜の午前中だから、てっきりいるかと思ったけど
どうやら明海のほかには誰もいないようで・・・・
「昨夜から帰ってきてません!」
「えー、残念。食材買って来たから、美味しいもの作ってもらおうと思ったのに・・・」
「は?あんた、色気より食い気?だからコタローにも愛想つかされたのよ」
「・・・・・ だろうか?」
「間違いない」
「っていうかさー、その女、コタローの部屋においてきたんでしょう?まずくない?」
「・・・かなぁ?」
「まずいでしょ!いくら昨夜は何もなかったとしてもよ?部屋においとくのはまずいでしょ」
「・・・・」
「今頃、コタローとなんかあったりして」
「えー、まさかぁ~・・・」
「ないって言いきれる?」
「だってコタローだよ?」
「コタローだって男だよ?」
「確かに。」
「・・・ ねぇ、楓ってさ?」
「うん?」
「ず~~っと思ってたんだけど・・・ コタローのこと、本当に好きなの?」
「え?」
「なんか、傍から見てると、いつもコタローの方が楓のこと好きすぎて・・・ たまに気の毒になることがある」
「え?そうなのっ?」
「うん、だから実は・・・ 今回のことはかなり意外。まさかコタローが他の女を部屋に泊めるなんて」
「そうなのよね、だから私もびっくりしちゃってー」
「びっくりして?・・・ それだけ?」
「え?」
「うちに逃げてきたのは、びっくりして?ショックだったからじゃなくて?」
「いやいや、ショックだったよ?まさかコタローの部屋から女の人が出てくるなんてー」
それも、それが小学校の頃一緒に遊んでた子だなんて・・・
引っ越しちゃって会うことなかったけど
あんなに綺麗になっちゃってて
「へぇ~、コタロー、浮気したの?」
「拓海っ!?」「拓海くんっ!?」
突然、ニョキって拓海くんが顔を出した
びっくりした~
玄関、開く音したっけ?
「ども。・・・お!楓、それ何?もしかしてオレに何か作って欲しい系?」
「あ、うんっ!いいのっ!?」
「いいよー。俺も腹減った。ちょーだい。適当になんか作るから」
「わーーい!」
「・・・ わーい、って楓も・・・・。 ちょっと拓海!朝帰りっ!連絡くらい入れて、っていつも言ってるわよねっ?」
「携帯、電池なくなってた」
「充電すればいいでしょうが」
「めんどくさくて・・・」
「めんどくさいってアンタねー」
この姉弟喧嘩も もう見慣れたもんだ
♪♪~~~
「姉貴、電話鳴ってる」
「え?あ、ごめん。会社からだ・・・」
ガタガタっと椅子を動かし、明海は携帯を片手に出て行った
拓海くんがこっちを向いて、舌をペロッと出した
彼のこの仕草はたまにあるんだけど
こっちはなかなか慣れない
なんだろう?
拓海くんがイケメンだからかな?
ひどくエロく感じるんだよね
あ、もういい匂いしてきた
イケメンでちゃちゃっと美味しいもの作れちゃって・・・
さぞかしモテるんだろうなぁ~
「拓海くん・・・」
「なに~?」
あ、名前、呼んじゃってた
「えと・・ あ、朝帰りってやっぱ、彼女とか?」
なんて聞いたら
拓海くん、顔だけこっちに振り向いて
「気になる?」
上から見下ろす感じでニヤリと笑われた
ドキッ
「いや、えと・・ 気になるっていうか、ほら!拓海くん、イケメンだからやっぱりモテるだろうな~って」
あー、私、何言ってんだろ////
「へぇ~・・ 俺って、楓にとってイケメンなんだ?」
楓にとって、って/////
「誰がどう見ても、拓海くんはイケメンでしょっ!!」
「そう?イケメンの基準なんて、人それぞれ、十人十色でしょ。ま、楓にとってオレがイケメンってことなら?素直に嬉しいけどね」
「またまた、そんな!私だけじゃなくて、かなりの女の人から見てイケメンだって」
「かなりの女の人からじゃなくて、誰に、ってとこが重要。」
ドキッ
こ・・・
この子、無駄に私をときめかせてくれるんだよな~
もう~~
バタバタと足音が聞こえて
明海が戻ってきた
「ごめーーん、会社でなんか、トラブっちゃったみたいで、出勤しないといけなくなった~」
「え?今から?」
休みの日なのに・・ 大変だなぁ~
「ってことで、私、着替えて出掛けるけど、楓どうする?」
「え?」
あ、そうか・・
明海、出掛けちゃうんだ
「あー、だったら私もー」
「出来たよ、楓。これ、食べてくでしょ?」
拓海くんがフライパンからお皿に料理を盛りつけると
ふわふわぁ~んと美味しそうな匂いが鼻腔をつく
途端に、お腹が鳴った
・・・・ お恥ずかしい
「わぁ~かった。楓はそれ、食べていきなさい。じゃあ、拓海!あとよろしくね」
「ほ~い。いってら~~」
「行ってらっしゃい」
拓海くんとふたり、明海を見送る
何だか不思議な感じ?
「さてと・・・ じゃあ、食べますか」
こんなふうに、誰かの家の食卓で男の人とふたりで向かい合って食べるのって
なんか・・・・
思ってた以上に恥ずかしい?
「どうしたの?」
正面から見ると、拓海くんの顔ってこんなだっけ?
なんてドキドキしたりして
私ったらバカみたい
親友の弟に
いや、だって、今まではそこに明海もいたからー
「え?あ・・ なんか、不思議だよね、明海がいないのに、こうしてふたりで食事するのって・・」
「そう?」
あ・・・
よく考えたら、虎太郎となら、普通にあるのか
えー、でもなんか違う
「もしかして楓、ドキドキしてるの?」
「うえっ!!?」
あ、変な声がフォント大で出た!!
だって拓海くんが変なこと言うから
「やだな~もう、ドキドキだなんて//////」
「いいね、・・・・ もっとしてよ。・・・・ ドキドキ」
「へ?」
だから~
もう~
その舌ペロ、やめなさい///////!!
「彼女じゃないよ?」
「え?」
「朝帰り」
「あ?・・・あぁ~・・ そうなんだ」
・・ん?
何か今、私、ホッ、てした?
いやいや、なによ、それ
あ~
弟に彼女いなくて何だかホッとしたようなやつ?
だよねっ!!
「ぷっ!・・・ 楓って、めちゃくちゃ顔に出るよね」
「えっ?顔に出るって、何が?」
私、何か顔に出てた?
「・・・・ わかってないんだ。じゃあ無意識か。・・・ ふぅ~ん」
「ちょっとちょっと~ 何よ、それ!年上をからかうのやめてよ」
「あ、急に年上面した」
「だって年上じゃない!」
「どうする?このあと」
「へ?」
このあと?
どうする?
「よかったら付き合ってほしいんだよね」
「・・・・・・・・」
付き合う!?
えっ?
つき合ってほしいっていった?は?
何言ってんのっ!?
「ぷっ!!・・・ ちょっと欲しいものあって・・買い物、つきあってほしいんだけど」
「買い物ぉ?」
「そ。女性の意見聞きたいんよね~・・・ ダメ?」
「・・・・・・」
その上目遣いで甘えてくるの
反則でしょうが!!
弟ってこんな感じなのっ?
明海ってば、大変だなぁ~
まぁでも、美味しいもの、食べさせてもらったしね~
「しょうがないなぁ~・・ 別にいいけど?」
「・・・ ありがと(にっこり)」
「////////////」
可愛かっこいい・・・