「・・・ 楓?」

 

俺の部屋の前で立っている楓を見つけて

テンションが上がった

 

のも束の間

開いたドアから半身出ている彼女の姿を見つけ

頭の中がパニックになった

 

これってもしかして・・・・

何だかヤバい状況か?

 

いやいや、ヤバいことなど何もない

昨夜は泥酔して帰れないと言う彼女を

俺の部屋まで連れてくると

泊まってっていいから、とトイレや風呂の場所を教え

俺はキョーちゃんの家に転がり込んだ

そこまでは、店を出るときにもう、話がついていた

まぁ

本当に彼女を送ってすぐに戻ってきた俺を見て

キョーちゃん、驚いた顔はしてたけど・・・

その顔の理由は容易に察しがつくわな

 

自分でもよく理性が働いたと思ったよ

俺も大概酔ってたからね

 

朝、俺を起こしたキョーちゃんが、

ササッと朝ごはんにこれ、持ってけ

ってホットサンドを作って渡してくれたから

それを持って戻ってきたところだった

 

 

まさか、こんなに早く楓が来るなんて

思ってもみなかった

さっきキョーちゃんところでようやく楓からのラインに気づいたばかりだった

なんて返信しよう?

って思ってた矢先のコレ

 

そもそも、楓が俺のアパートに来るなんて稀で

ヤバいっつうのに

 

どうする?

何て言う?

絶対、楓、誤解してるよな?

 

 

「虎太郎・・・ これって・・」

 

「ねっ!!やっぱり楓ちゃんだ!!私のこと、覚えてるっ!?」

 

 

俺の方を向いた楓が

彼女のセリフで強引に視線を戻された

 

 

ちょっ、おいっ!

何て言うつもりだっ?

 

 

「三崎っー」

 

 

思わず駆け寄る

 

 

「三崎?・・・え?三崎って、もしかして・・ ちぃ?」

 

「そうだよっ!ちぃ!千尋だよー!覚えててくれた?わぁ~~!久しぶりっ!楓ちゃんっー」

 

そう言って彼女は楓に抱きついた

困惑で強張っていた楓の頬が少しずつ緩んでいく

 

「え?マジ?すごい久しぶりじゃんっ!!ちぃったら・・・ めちゃくちゃ綺麗になっちゃってー」

 

「楓ちゃんはかわらないねー!!すぐわかったよ!!」

 

 

おまえ・・

それ、微妙な返しだぞ?

なんて心の中で突っ込んでみる

 

なんだよ

緊張した空気はどこへ?

 

 

「ちぃ・・ どうしたの?なんでここに?」

 

「昨日偶然再会したのっ!ぶらっと入った飲み屋さんで。」

 

「キョーちゃんとこ?」

 

そう言って楓がこっちに確認するような視線を向けてきた

俺は頷く

 

「それで懐かしいーー!って盛り上がっちゃって・・・ 私が酔っぱらいすぎちゃって・・・コタローが泊めてくれたの!あ、でもコタローはキョーちゃんのところに戻って行っちゃったから、今、帰ってきたとこ。ね?」

 

「ん?あ、あぁ・・」

 

 

すげぇ

オレが言おうと思ってたこと

全部言ってくれた

 

 

「キョーちゃんから朝ごはんに、って貰って来た」

 

ホットサンド入りの袋を持ち上げて振って見せる

 

 

「・・・ そっか。じゃあ・・何だか私、お邪魔だったみたいね?」

 

 

その瞬間

楓が袋を後ろ手に隠すように回したのが見えた

 

え?それってもしかして?

俺に朝ごはん、作ってくれようと?

あーそうだ

酔った翌日、たまに楓はこうしてやってきてくれる

 

げぇええええ

なんてことだよ、俺・・・

 

普通だったら、めちゃくちゃ嬉しい展開なのに

 

 

「そんなことないよ、楓ちゃんとも久しぶりにもっと話したいし、上がってってよ」

 

 

はぁああ?

上がってって、って俺の部屋だぞ?

それはオレのセリフだろーが

 

彼女は楓の両手を掴んで引っ張ってる

 

 

 

「ごめん、私ちょっと、用事があるからー」

 

 

楓がー

 

彼女の手をやんわりとふりほどくと

そう言って笑った

 

 

「・・・ 楓?」

 

「ここにはついでに寄ってみただけだったの。じゃあね、ちぃもまた!」

 

「あ、うん・・」

 

 

ふわっと

楓の匂いだ、なんて思った

 

俺の横をすり抜けるようにして通り過ぎていったあと・・・