「じゃあね、ふたりとも、気をつけて帰ってね!」
「おう、サトミもな。送っていけなくて悪い」
「大丈夫よ、タクシーなんだから」
神田、って呼んでたくせに、サトミ、になってるし
「香子も!だいぶん飲んでたけど、二日酔い、気をつけてね」
半身をタクシーに入れながら、サトミが手を振った
私も振り返す
「大丈夫。おやすみ、サトミ」
サトミを乗せたタクシーが、交差点を曲がって消えていく
「じゃ、俺らもタクシー、拾うか」
「ん」
俺ら・・・
翔琉が言う『俺ら』って響き、なんか好き
「にしても、おまえ、ザルかよ。あれだけ飲んでて、最後までちゃんとしてるなんて・・・お!あれ、乗ろうっー」
ぐいっと翔琉に腕を掴まれ、引っ張られる
ふにゃら~
ガクッ
「えっ、ちょっと待ってよ、翔琉・・ 足、もつれる・・」
「はっ?」
うわっ、転ぶっー
ぐわしっ
・・・ 転ばなかった
翔琉にしっかり掴まれて
「・・っぶねー。なんだよ、お前、足にきてるのか?」
「・・・ どうだろ・・ きてるってことなのかな・・・」
さっきまで、どれだけ飲んでも全然酔えないって思ってたのに
「なのかな?じゃなくて、完全にきてるだろ、これ」
ほら、掴まれー
と片腕を翔琉の肩に回されて
腰はしっかりガードされちゃった
「・・ 大丈夫だよ、こんな・・ 自分で歩けー」
「歩けねーだろ、バーカ。甘えとけ」
つかまえたタクシーまで、運ばれると
ドサッと後部座席に放り込まれた
ふわぁっ
いきなり視界がぐにゃら~ってなってきた
え?
なに?
酔いが一気に回ってきた?
え?ちょっと待ってよ
ここまできて、酔っぱらって翔琉に迷惑かけるなんて嫌なんだけど
「運転手さん、○○まで、行ってください」
隣に乗ってきた翔琉が運転手さんに行き先を告げる
それ、私のアパートに近いとこだ
もう~・・・
「・・・ ごめん、翔琉」
「何が?」
そんな、当たり前みたいに言わないでよ
はぁ~
酔いが回ってきた・・・
けど、酔って甘えるとかできない
できない、って思ってたけど
酔ったら甘えたくなるっていう気持ちが
今ならちょっとだけわかるかも
「・・・ ふぅ~・・」
思いっきり背もたれに寄りかかり
翔琉とは反対側の、窓の方に向かって頭を傾ける
「運転手さん、少しだけ、窓、開けてもらっていいですか?せっかくエアコン入れてもらってるとこ、悪いんですけど・・・」
・・・っ?翔琉?
窓が少しだけ降りてきて、夜風が入ってきた
冷たいわけじゃないけど
エアコンの冷気と相まって気持ちがいい
もう~
なんなのよ
この気の利かせ方・・・
「・・・ ありがと」
「・・ なんなら、寄りかかってもいいけど?」
「・・・・・・」
いつもの私だったら
何言ってんのよ、って答えるだろうけど
今の私は
酔いに身を任せ
ちょっと違う
「・・・・・・・」
トンッと翔琉の肩に、頭をのせた