「神田って、弁護士なのっ!?・・・ すげーな、尊敬するわ」
「まぁね、実は今日もクライアントとの話が長引いちゃって・・自分から誘っておいて遅くなってごめんね」
「いやいや、俺らは二人で先に飲んでたし、全然大丈夫。な?香子」
「あ、うん・・」
ーー 神田って苦手なんだよなぁ~
サトミが来るまで、そう言ってませんでしたっけ?
カ、ケ、ル!!
すっかり意気投合して飲んじゃってるじゃないのよ
サトミから遅くなるって連絡をもらって
私たちふたり、4人掛けのテーブル席に
翔琉と向かいあうようにして座ってたんだけど
ごめんごめん、って現れたサトミ
私と翔琉の顔を交互に見て
何の躊躇もなく、翔琉の隣に座った
あのとき
驚いて、ええっ!?て声が出そうになったわよ
だって、サトミは絶対、私の隣に座るもんだと思ってたから
まぁ?
翔琉狙いだって言ってたけど?
まさか、こうも露骨だとは思いもしなかったわよ
翔琉は飲むとき
足を組んで、肘をつくようにして、グラスを上から持ち
口に少しずつ運ぶ
その足のせいか
肘のせいか
隣に座る人とは少し距離ができるようになるんだけど
サトミってば
ぎりっぎり隣まで寄ってる・・・!
「すみませーーん!」
私は歩いていた店員さんを呼ぶと
「梅酒ロック、おかわりで」
「はい、梅酒ロックですね?」
まだ氷が運ばれてきた形を残したまま溶け切らないグラスをカランカランと鳴らし
わずかに揺れ残っていた梅酒を飲み干す
「おい、香子、ちょっとペース、早すぎだろ」
「大丈夫ぅ~?まだ週末じゃないのに、そんなに飲んで」
ジロッ
一瞬、ふたりに目を配り
すっと下を向くと
「は?そんな飲んでないし」
そんな 自分でも可愛くないな、と思う言い方をしながら
お皿にひとつだけ残っていた、ちくわの磯部揚げを箸で口に運んだ
パクリ
「あ、そうだ!ねぇ翔琉!」
ビクッ
サトミが翔琉の肩に手をかけた
ガタッ
「ごめん、トイレ・・ 行ってくるわ」
私はバッグを持つと、席を立った
・
・
・
・
・
「で? どういうつもり?」
香子がトイレに行った途端、サトミが態度を変えて詰め寄ってきた
「何が?」
なんだ?コイツ・・・
美人なだけに怖いんだけど・・・
「あんた、香子のこと、好きなんでしょ」
「は?」
「とぼけたって無駄。この間、香子から話を聞いたときは半信半疑だったけど
今日来て見て、確信したわ」
「何をだよ、確信したってー」
「あんたまさか、高校の頃からずっと、とか言うんじゃないわよね?だったらキモすぎ!」
「ずっとじゃねーよ!フラれてんだし」
「は?いつ?」
「・・・ 知ってるくせに」(チッ)
聞いてんだろ?香子から
「ざーーんねんながら、香子は高校の頃、アンタが自分のこと好きだったことなんて、ちっとも気づいてなかったわよ?」
「は?だったらなんでお前は知ってんだ?」
「ふふふっ なぁ~んででしょう」
「・・・ きもちわりぃな」
「私も借りたのよ、あんたが香子に貸したノート」
「っ!?」
ノートって・・・
「香子がインフルエンザで休んだあと、試験前だからってアンタが親切に貸してあげたノートよ。あれ、私も見たの」
「・・・・・・・・・」
アレを見たのかよ、コイツ・・・
「あ~~~んなわかりにくい告白、香子にわかるわけないでしょうが!」
は?
わかるわけない?
「え?でも、『そういうのは嫌だな』って返事が・・・」
「男尊女卑だとでも思ったんじゃない?実際、私にノート見せながら、そう言ってたもの。『ねぇねぇ、これ、どう思う?』って」
「・・・ 男尊女卑・・・」
「わかりにくいのよっ、アンタ!!私にはすぐピンッときたけどね。香子にはぜんっぜん伝わってなかったわよ。このクイズばか!」
なんてことだ・・・
じゃああの時、俺の告白は、香子には伝わってなかったのか・・・・
オレ、てっきり香子に振られたと思って・・・・
あのあと、宮下への手紙を見つけたときにはすっげぇショックだったけど・・・
「まぁ?伝わったところで、香子には別に好きな奴がいたから、アンタは無理だろうと思って、私も香子には伝えずにそっとしておいてあげたのよ」
「・・・ 宮下だろ」
「あら、わかってたのね?そう、宮下だったのよね~・・。アイツ、同窓会、来てた?」
「あぁ、来てた。香子とも話してたな」
「あんた、香子とつきあってる体で行ったんだって?」
「・・・・・・・」
そりゃ、聞いてるわな、アイツから
「ひと晩泊めて、何もなしって、何をやってんだか・・・」
「・・るっさいな。いいだろ、別に。」
「あら。そんなこと言っていいのかしら?この私に。」
「は?」
「いいのよ?香子が戻ってきたら、高校時代のあのノートに書いてあったアンタのー」
「うわああぁぁぁぁ、悪いっ!悪かった!すみませんっ!黙っててくれ。もう、なかったことでお願いします!!」
今頃そんなこと知られて、どうすんだよ
勘弁してくれ
もう、黒歴史として忘れたい
「ふふ、いいわ。黙っててあげる。それより、今日あんたに来てもらったのは、ちょっと頼みたいことがあるからなのよね」
「・・・ 頼みたいこと?」
こいつ、ほんとに弁護士かよ