「俺はいいよ、別にー」
って言ってた?
何が?
さっき、話の流れで翔琉に選択求めること、あった?
もう一度インターホンを鳴らして聞こうかとも思ったけど
それよりサトミが来るって言ってることに対処する方が先決!
とばかりに、翔琉の謎のセリフの解明は後回しにすることにして急いで帰路についていた
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「は?翔琉が香子のいる会社に転職してきた?それで二人でつきあってるフリをして同窓会に行った、と?」
うんうん、とうなずく
「何?その漫画みたいな話」
いや、漫画みたいってそんな・・・
「そこでどうして付き合ってるフリをしていく、って話になるわけ?10年ぶりに同級生に再会して?飲みに行くようになる、ってとこまでは、あるあるだと思うわよ?でも、付き合ってるフリまでして同窓会に行くっていう話には、どう考えても、普通いかないでしょう!!え?」
サトミの口は止まらない
ひととおり状況を説明すると、そこからはもう、マシンガントークが炸裂している
そう言われると、だんだん不思議な気がしてきた
「・・・ 確かにそうだったかも・・」
「どっち?」
「え?」
「つきあってるフリしていこう、って切り出したの、どっち?」
「翔琉・・・ だけど」
「何それ、翔琉のやつ、あんたのこと好きなんじゃないの?」
ドキッ
翔琉が私のことを好き?
「やー、それ、ないから。ないない。」
考えてすぐに否定フラグがたつ
「なんでよ、じゅうぶんあり得るっていうか、それしかないでしょ」
「いやいや、ないから。だって ひと晩泊まっても何もなかったんだよ?そんなの、あるわけー」
そこまで言ってから自分の発言にヤバいキーワードが含まれていたことに気づく
「・・・ ひと晩、泊まった、ですって?」
「・・・・・・」
聞き逃すわけないよね・・・
「つきあってるフリ!ひと晩共に過ごす!!これでー」
「やー、だからっ、何もなかったんだってば!!そういう雰囲気になること自体、まったくなかったんだって!あっ!!だいいち、翔琉には彼女がいるんだった!!」
「は?彼女がいる?」
ぶんぶんぶんっ
私は何度も大きく肯いた
「彼女のいる男が、他の女と恋人のフリをして挙句、家に泊めたりしますか?は?」
「ちょっとサトミ、落ち着いて、ってば!泊まった、って言っても、家飲みしてたら眠くなっちゃって、そのまま寝てしまった、ってだけで、あ!もちろん別々に寝たわよ?もし翔琉にそんな気があるんだったら、どこかでそんな雰囲気になるってもんでしょう?なかった、ってことが全然ないっていう証明でしょ!!」
言ってるうちに何だか切なくなってきたぞ?
私ってそんなに女として魅力がないってこと?って・・・
「恋人のフリだって、この歳で同窓会出るののに、夫も彼氏もいないっていうのは結構勇気いるっていうか、負け組な感じがして気が進まないなぁ~って私がぼやいたからで・・・ サトミもエリも行かないっていうから行くのやめようかな~って・・ それをかわいそうに思って、そう言ってくれただけなのよ。」
「・・・・ ふ~ん・・・ それはまぁ、ずいぶん優しいじゃん、翔琉のやつ」
「うん、私の変な見栄のためにつきあってくれたっていうか・・・ まぁ翔琉も?自分が事故物件扱いされるのは嫌だから、って言ってたけど」
「事故物件扱い?」
「だってあのルックスでしょう?あのハイスペックイケメンに彼女いない、ってうちの会社では事故物件扱いされてるとこあったから、同窓会でもそうなるのヤダ、って言ってー」
「彼女いるんでしょ?」
「・・・・・・」
サトミの言葉に、ハッと我に返った
「あれ?ほんとだ・・・」
「そんなの、彼女いるってひとこと言えばそれで済む話じゃない?翔琉の場合」
「確かに・・・」
なんで隠してるんだろう?
「ってことは、ほんとに、見栄っ張り香子のためにつきあってくれただけ、ってこと?なにそれ、翔琉、いいやつ過ぎるじゃないの」
「確かに・・・」
ほんとだ
どうしてそこまで?
「っていうか、なんで翔琉、彼女いるってこと、隠してるんだろう?」
どうしてもそこ、気になる
疑問・・・
「もしかして道ならぬ恋・・・ 不倫とか!?」
「サトミ?不倫って・・」
「だって・・ ハイスペックイケメンがつきあってる彼女の存在をひた隠しにするって、そういうことなんじゃないの?って浮かんじゃって。ね?そう考えると全部、辻褄が合うじゃない?土曜の夜にアンタがお泊りしても、彼女には家庭があるから、お泊りなんて出来ないワケだし」
「・・・・ 確かに!」
何だか興奮してきた
「でも、スキンケアセットは置いてあったよ?しかも高級なやつ!!」
「いやいや、泊まらなくても必要にはなるでしょうが!ね、転職してきたって言ってたわよね?もしかして前の会社の上司の奥さんとか?お金、持ってる人妻!?」
「それで会社にいられなくなって転職?」
私たちの妄想は止まらないし、だんだん核心をついてるんじゃないかって気がしてきた
脳内では、翔琉が年上の妖艶な人妻と逢瀬を繰り返している様子がぼや~~とイメージされていってる
しかも、ご丁寧に寝室まで記憶が新しいもんだから・・・
ごめん・・・///、翔琉
「でもさ~、不倫はよくないよね?翔琉、抜け出せないのかなぁ・・・ 香子、あんた、せっかくだから翔琉のこと、救い出してあげたら?不倫の泥沼から」
「は?何言ってんの?サトミ・・・」
私が翔琉を救い出す?
不倫の泥沼から・・?
「だってさ~、写真しか見てないけど、それでもじゅうぶん、翔琉のイケメンっぷりは伝わってきたわよ。それがさ~、不倫だなんて・・・ 不憫でしかないわ」
「・・・・ 確かに。翔琉、いいやつだし。もったいないよね・・」
ん?
過去に戻ってやり直したいことがあるって、翔琉、言ってなかった?
ずっと後悔してるって・・・
もしかして・・・ このこと!?
不倫、後悔してる?
過去に戻って、って不倫をする前の自分に戻って思いとどまりたいってことなんじゃない!?
翔琉は今更、って言ってたけど・・・・
「サトミ、私・・・ 翔琉のこと、救い出すわっ!!それが、10年ぶりに再会した同級生の宿命よねっ!!」
「う?うんっ、だわねっ!!」
サトミとふたり、手に手をとって向かい合う
「で?どうやって救い出すの?」
「どうやって?・・・ 目を覚ますのよ、って不倫をやめるよう説得するのよ」
「そんなの、出来てたらこんな沼には嵌まってないでしょうが!」
「えー、だったらサトミ、どうすればいいっていうの?何かいい案がある?」
「新しい女しかないでしょう!!ここはっ!!」
「・・・ 新しい女?」
確かに・・・
「でも、新しい女なんて、どこにー」
「ここにいるでしょう?」
ん?
「どこに?」
「だぁから~、ここに!」
サトミが自分の左手の親指を出して自分のことを指出している
「サトミ?」
「いえ~~っす!」
「はぁ?」
「だって、香子といてもそんなことにはならないんでしょう?そして、会社の人たちもダメ。昨日の同窓会にもいなかったから、あんたと帰った。ってことは、私しかいないじゃないの」
「はあぁ~~~?」
「だぁ~って、写真、ほんとにめちゃくちゃかっこいいんだもんっ、行けばよかった、って後悔したくらいよ。香子とつきあってないんだったら、一度試してみてもよくない?」
「試してみるってサトミったら・・・ マジ?」
真剣に考えてる??
「マジマジ。ね、翔琉に会わせてよ」
そう言ってサトミは、にっこり笑った