はぁ~・・・

 

映画を観終わって、思わず溜息が漏れた

 

 

「・・タイムスリップ?タイムトリップ?タイムワープ?タイムリープ?」

 

「いくつ言うの!」

 

私が迷ってると翔琉にツッコまれた

 

「タイムトラベルものって、ラブストーリー部分、絶対ハッピーエンドにはなれないよね~」

 

はぁ~・・

わかってはいたけど、こうなるか!

 

「だって、トラベラーの方は自分がいた現代に帰っちゃうわけでしょう?ハッピーエンドになろうと思ったら、どっちかがどっちかの時代に永遠にいないといけないわけで、それって無理なんでしょう?歴史が変わっちゃうもんね?」

 

くるっと、翔琉のいる右側に向き直ると

 

右手を伸ばして水を飲む翔琉と遭遇

 

片足だけソファの下に落とし、もう片足はソファの上で膝を折っている

水を飲み終わると、ローテーブルの上に戻し

ソファにもたれかかって、その腕は頭へ

指先が髪をさわっている

 

 

「・・・ 俺に聞くな!」

 

「ね、こういうの、切なくない?原作もそうなの?」

 

「・・・・・・ 読むんだろ?」

 

「読む!だから言わないで」

 

「・・・ だったら聞くな!」

 

 

「ね、翔琉はタイムスリップ?できるとしたら、行ってみたい時代とかある?」

 

「いや。不便なのは勘弁。」

 

「・・・・・・」

 

 

ですよね~

 

「それより、パラレルワールドの方が興味あるかな」

 

「パラレルワールド?・・あ~、別の時間軸、みたいな?よくわかんないけど・・・」

 

「・・・・・ なぁ?」

 

「ん?」

 

 

急に翔琉が語尾をあげてくるから

何か言いたいこと?

 

もう一度、翔琉の方を見る

 

 

綺麗な二重

パッチリとした目

 

頬から顎へのシャープな流れ

 

肌も綺麗だな、こいつ

 

・・・・ ずるいなぁ~・・・

 

 

 

「もし、過去の自分に戻れるとしたら、・・・ 戻ってやり直したいときってある?」

 

 

「・・なに?真面目な顔して・・・」

 

 

綺麗なふたつの目がまっすぐ見つめてくる

 

 

「ちょっと真剣に考えてみて。過去に戻ってやり直して、それによって未来が変わるとしても、それは別の、やり直した自分の未来であって、今の自分には何の影響もないんだとしたら・・ 別の未来を自分に見させてあげたいって思ったことない?それくらい、香子にとってやり直したいこと、ある?」

 

翔琉が何を言ってるのか

ちょっと理解するのに、数秒かかった

 

いや、実際は理解できてないのかもしれないけど

 

「過去に戻ってやり直して、でしょう?ないよ、ないない。また勉強なんてしたくないし、試験とかもっとやだし、受験なんて絶対に嫌!」

 

 

ちらっと宮下くんのことが過ったけど、過去に戻ったところで、宮下君の気持ちまでは変えられないんだろうから、フラれたって事実は変わらない

 

 

「ないなー。私は。過去の自分になんて、戻りたくないよ?もしかして・・・ 翔琉はあるの?」

 

 

「ん。俺は・・・ ある。過去に戻ってやり直したいこと。」

 

 

「そうなんだ!?」

 

 

翔琉は身体をずらしてソファの上にあった方の足も下におとし、正面を向いた形で座りなおした

 

 

「ん。ずっと・・ ずっと後悔してたから」

 

 

ずっと後悔してた・・?

 

なんか、さっきから急に翔琉のトーンが真面目モードになった?

だったら・・・

私も真面目モードのスイッチを入れて向き合おう、うん

 

なに?

それってもしかして翔琉、悩んでるの?

 

 

「ずっと後悔してるって、それって、今からでもなんとか頑張って取り戻すことなんて出来ないの?」

 

「・・・ 今から?」

 

 

あ、こっち向いた

 

 

「うん、だって・・ 過去の自分に戻ってやりなおしても、さっきの翔琉の話だと、今の私たちには影響ないんでしょう?そのやり直した過去によって生まれるのは別の未来ってわけで・・・別の翔琉が楽になるだけでしょう?だったら、今、出来ることを頑張って、今の翔琉を楽にしてあげること考えた方がいいんじゃない?」

 

 

翔琉はしばらく、私の顔をじっと見つめると(ちょっと照れたじゃない///)

 

 

「・・・・・・・ 今の俺を、楽に・・?」

 

 

ぼそっと呟くように吐いて、何か考え込みだした

 

 

「そうそう、うん、ね、我ながらうまいこと、言ったんじゃない?ふふふ」

 

 

ちょっと誇らし気

 

 

「いや、ないな。今更だ」

 

 

「え?」

 

 

私のナイスな提案は、そんなにあっさりと却下されるものだった??

いいこと言ったつもりだったのに?

 

 

「今更って、そんな・・・ もう、無理なことなの?」

 

「だな。」

 

 

 

もう無理ってそんな・・・

 

「じゃあ翔琉は、これからもずっとそれ、後悔して生きてくの?」

 

 

 

「・・・だな」

 

「ちょっと待った!何か方法があるはずだから!あきらめちゃだめよ、うん。もっと考えてみるから・・。っていうか、何?それって、もう少し詳しいこと教えてよ?具体的にわかったらもっといい対処法が見つかるかもー」

 

「いいって、いいって。」

 

「いやいや、ここは乗りかかった船、ねぇ、翔琉っー」

 

「それよりお前、もう明るくなってきて、すっぴん、見えちゃってるけどいいの?」

 

 

え・・・?

 

 

ハッ!!

 

すっぴんっ!!!

 

慌てて両手で覆い隠す

いや、違うっ!クッションだった!!

 

 

「・・・・ いまさらだろ」

 

「何言ってんのよっ、だいたい、そっちはすっぴんでもめちゃくちゃイケメンで、お肌も綺麗でずるいってのよ!!」

 

 

そうだ

翔琉の顔があんなにきれいに見えたってことは

向こうからこっちも見えてたはず・・・!!!

 

 

「だぁから~、すっぴん、可愛いんだって」

 

 

「・・・ そんな社交辞令、私が喜ぶとでも?」

 

 

クッションから目を出し、翔琉に言う

 

 

「社交辞令なんかじゃないって」

 

「・・・ ほんと?」

 

「って、言ってほしいんだろ?」

 

 

ムカッ

 

 

「ちょっと翔琉ぅーーー!!おぬしっ、そこへなおれっ!!わしが成敗してやるわっー」

 

「プッ!!・・・ おまえ、さっき見た映画の影響受けすぎだろ」

 

 

なんで笑うのよ

 

ちょっと細目になってるの、可愛いじゃないのよぉっ

 

 

「・・・ イケメンって何をしてもイケメンでムカつく・・」

 

 

グゥ~~~きゅるる・・

 

今の・・・、私のお腹のおと・・・

 

恥ずかしいぃーーーっ

 

 

 

「・・・ そういや、腹、減ったな」

 

 

「腹減った、って・・え?そうじゃなくて、今って何時?帰らなきゃー」

 

 

ガバッ

 

立ち上がって時計を見る

 

「8時ぃーーーっ!?」

 

私、調子に乗って何時までいるのっ!?

 

「やばいでしょっ、翔琉っ、洗面所借りるねっ?」

 

バタバタバタッー

 

 

「あ、あぁ・・・」

 

 

「あっ、あとっ、あそこにあったスキンケアセットもっー」

 

バタバタバタッー

 

 

「えっ?ええっ?あれっ?おまえ、あれー」

 

 

「うん、ごめん、昨夜も使っちゃったから、いいよねっ?彼女さんに謝っといてー」

 

バタバタバタッー

 

 

は? 彼女さんに、って・・

「おいっ、香子っー」

 

「ごめんっ、急ぐっー」

 

バタバタバタッー

 

 

バッグの中から何かを取り出し、あっという間に洗面所へと消えていく香子

 

 

「タオルも借りるねーーー」

 

 

くぐもった声が飛んでくる

 

 

 

 

・・・・・ いっそのこと、シャワーでもすれば?

 

 

 

 

人の気も知らないで

 

 

 

 

「・・・・ 彼女さん、なんていねーよ」

 

 

 

 

 

香子のばぁ~っか・・・