「それにしても、岩田さんっていいわよね~」

「そうそう!高瀬さんと高校の同級生だった、ってだけでふたりで飲みに行ったりしてるんでしょう?」

「高瀬さんって、誰が誘っても秒で断られるって噂なのに」

「でもまぁ、岩田さんならね~」

「あれだけふたりで飲みに行ってるみたいなのに、付き合ってるって聞かないってことは・・・」

「そういうことよね~」

 

 

 

 

 

「なんって言われてるんですけどっ!!」

 

ドンッ

 

カウンターにジョッキを強めに置くと

中で飲みかけのビールが揺れた

 

私は隣に座る、高校の同級生、高瀬翔琉(たかせかける)の方をジロリと睨みつける

 

そんな私の視線を横目に

翔琉は涼しい顔で自分のジョッキを持ち上げると、ぐびっといった

 

「・・・ なに? もしかして香子(かこ)、俺とつき合いたいの?」

 

「はぁあぁ~~~!?そんなこと言ってるんじゃありませんっ!!」

 

「あ、おやっさん! 砂ズリ、もう一本とビール生、おかわり」

「えっ、あたしもっ!!」

 

食い気味に翔琉の注文にかぶせると

 

「あとっ、プチトマト巻も!」

「あっ、俺も!」

 

今度は翔琉がかぶせてきた

 

 

好み、合う!

 

酒、進む!!

 

 

「そりゃあねー、翔琉がうちの会社に転職してきたときはびっくりしたけどー」

 

「嘘つけ。ぜんっぜん、気づかなかったくせに」

 

「だってそれはっー・・ あなたがあまりにイケメンになりすぎちゃってたから!!それはもうねっ、どれくらいのレベルかと言ったら、ほんと、想像を遥かに超えるレベル!!」

 

「それはどうも。そっちこそ、綺麗になっててびっくりしたよ、すぐには気づかなかった」

 

「出た、営業成績ナンバーワン様の社交辞令!」

 

「あー、はいはい。お褒めにあずかり、光栄です」

 

「褒めてないでしょ」

 

「だっけ?」

 

 

「はい、生ふたつ~」

 

トンッ

目の前にふたつの冷えたビールジョッキが置かれると

お互い手を伸ばしてそれを引き寄せる

 

そして自然と乾杯

 

 

「・・ んまぁーーー!!」

「ふぅ~~っ!!」

 

 

転職でこっちに引っ越してきた翔琉に、10年越しの再会をすると

馴染みの店を紹介するまではあっという間だった

 

しかも、連れてきてみれば、翔琉の住んでるところに近かったようで

今ではすっかり常連さんの仲間入り

おやっさんとも顔馴染みになっちゃって

もしかして私より通ってるんじゃ?と思うほど

 

 

「ところでさ、翔琉には連絡、来た?」

 

 

私はようやく今日の本題を切り出した

 

 

「あー、プチ同窓会?」

 

「そー!それ!!」

 

 

来てたんだ?

やっぱりSNSってつながるね~

 

 

「で?行くの?」

 

「ん~・・ それが、正直・・ この歳になると同窓会ってちょっと微妙じゃない?男はいいかもだけど、女はね~、結婚してる子ってなんか変な勝ち組感、出してくるし・・・」

 

「ハハッ、勝ち組感って・・・ あんの?そういうの」

 

「あるわよ、だからね~・・・ やめようかな~って思ったり・・・」

 

「へぇー、いいの? 宮下に会わなくて」

 

 

ドッキーーーーッ

 

 

え?え?え?なんでっ?えっ?

 

「どっ、どうしてそこで、宮下くんっ!?」

 

「・・・ わかりやす」

 

「ちょぉーーっと待ってよ、翔琉くんっ そういうの、どうかなぁ~、何か誤解してないっ!?」

 

なんでなんで?

私が宮下君のこと好きだったの、バレてる?

しかも今、軽く鼻で笑った?

 

 

「あのねー、それを言うなら、私だって、営業の皆川さんから聞いたんだからねっ?」

 

「・・・・?」

 

 

何を?ってその顔、色気出てるけどっ!!!?(私より)

 

でもねっ、こうなったら言ってやる!!

 

「翔琉が高校の頃好きだった女子のこと、今でも引きずってるって話!!だから、未だに独身どころか、彼女もいないんだって!!」

 

水戸黄門で出てくる印籠のごとく言い放ってやった

 

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 

ん?あれ?

 

 

「何よ、びっくりしたでしょう、知ってて。で? 誰なの?」

 

「何の話?」

 

「・・・ は? なんの、って、とぼけますっ?今、すっごい驚いた顔してたでしょ!」

 

「いやいや、とぼけるも何も、あまりの作り話にびっくりしただけだけど?」

 

「あまりの・・・ 作り話ぃ~?」

 

「皆川に話、盛られただけだろ。なに?オレ、そんな噂、たってんの!?」

 

「だって・・ はっきり言ってこんなイケメンで結婚してないわ、彼女いないわ、ってなったらさー」

 

「あー、・・・・事故物件扱い」

 

 

自覚あるんだ?

 

そうなのよね、今、我が社の女子社員の間ではそんな話もありつつ

でもね~

そんなこと言いながらも、皆、虎視眈々と翔琉の彼女の座、狙ってるよ~?

ま、あれだけ誘われてたらそのへんもわかってるんだろうけど

 

それにしても・・・、皆川さんの話、違うのか

 

「え?じゃあほんとに違うの?えー、知ってる子だったらー」

 

「何?仲をとりもってやろうって?」

 

 

うんうん、と大きく肯いた

 

 

「で?宮下に会いに行くって?」

 

 

ボッ!!(再び)

 

 

「だからっ//// どうしてそこで宮下君っー」

 

「・・・ 会いたいくせに」

 

「あのね、そもそも?会うとしても、宮下くん、結婚してますから!」

 

「えっ?そうなのっ!?」

 

 

やっぱり知らずに言ってたか

 

SNSって罪よね~

知りたい、知りたくないって葛藤しても

調べられちゃうんだから

 

こういうお祝い事となればなおさら

わかっちゃうんだなぁ~

 

興味ないと、わかんないよね~

 

 

だから別に、今回のプチ同窓会に行きたい理由もそこまでなかったりして・・・

だって会いたい友達には普通に会えるわけだし?

 

「わざわざ負け組感、出しに行くのもね~・・ 翔琉みたいに想像を遥かに超える変貌を遂げてたら別なんだけど」

 

 

私が翔琉なら、どうよっ、って顔して参加するわ

 

 

「なんかそれ、俺ってどんだけひどかったのかよ、って思うけど?凹むわ~」

 

「わぁー、ごめんごめんっ、違う違うっ、当時もかっこよかったけど、そこから想像してこのへんかなぁ~?ってかっこよさを遥かに凌いでるって話だって!!」

 

 

私が身振り手振りで必死に釈明をしていると

 

それを横目にくっくっと笑いながら

 

「・・・ 冗談だって。だからおまえ、皆川にも騙されんだよ」

 

「wwwwwwwwww」

 

ひどくないか?

その扱い・・・

 

 

「まぁ俺も?・・・事故物件感、出しに行くの、やだけど?」

 

 

「事故物件感・・・ アハハ、そうだね、絶対そうなるわっ!!」

 

 

この翔琉を見たら、みんなきっと、うちの女性社員と同じ反応するだろうし

 

 

「でもな~、もったいないなぁ~!こんなにかっこよくなってるのに・・ 」

 

 

「じゃあさ・・・」

 

 

 

 

このとき、私は、翔琉が続けて放ったセリフの意味を理解するのに

 

ちょっとだけ時間がかかった・・・

 

ような気がするのは、お酒に酔っていたせいだろうか?

 

・・ なんだろうな、きっと