「・・・・ シム家の秘書か・・。」

 

 

 

話してしまった、話してしまった

ユノに全部・・・

キュリお嬢様、ごめんなさいっ

申し訳ございませんっ

 

 

「シム家には執事がいない。そのかわりに優秀な秘書を置いている、という話だ。ならばその三木壮士という男。かなりのやり手に違いない。」

 

 

シム家には執事がいないのか・・・

 

 

「ということは、能力的に考えてこの家に婿養子に入るには絶好の相手とも言える」

 

 

「婿養子っ!?」

 

 

「なんだ?おまえはキュリお嬢様を嫁に出すつもりでいたのか?一般庶民の家に!?」

 

 

あ・・・

 

「そこまで考えていませんでした・・・。私はただ、お嬢様には好きになったお方と幸せに添い遂げてほしいとー」

 

「ただ問題なのは、シム家がそんな優秀な秘書を手放してくれるかどうか、ということだ。」

 

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私の話なんて、全然聞いてないじゃんwww

まぁ、わかってましたけどね

 

「うちに婿養子として入ってもらうとなると当然シム家の秘書は辞めてもらうことになるからな。」

 

「・・・シム家は新たに秘書を雇わなければならなくなる、ってことね?」

 

 

「まぁ、それは何とかしよう。こちらででも」

 

 

何とかしちゃうんだ?

 

 

「問題はこちらからの要望で、となると向こうがどう出てくるかわからない。持っていき方次第だろうが・・・・」

 

 

そういうの、得意なくせに

 

難しそうな顔してても、いつも難なくやってみせちゃうんだもんなぁ~

 

この人は

 

 

「シム家嫡男がキュリお嬢様と結婚する、ということなく、ハン家と太いパイプをつくることができる。とでも言ってやれば、秘書を差し出してくれるだろうか」

 

 

私に聞いてる?

 

いやいや、そう見せかけて

この人の自問自答なのよ

いつものね

 

そう、いつだって私の意見なんておかまいなしなんだから

 

私はただ、話を聞いてるふりをして、笑って肯いてたらいいのよ、ここは

 

 

 

「おまえも少しは真剣に考えたらどうだ?」

 

 

「ええっ?」

 

 

「いいか?キュリお嬢様が結婚されてこの家を出られる、ということになれば、キュリお嬢様専属の執事であるお前はどうなる?」

 

 

「・・・・解雇?かと」

 

 

「そう。ハン家では用無し。クビだ。」

 

 

ユノの綺麗な手が、首を横切った

 

 

「・・ ですよね」

 

 

キュリお嬢様付きの執事ですもの、それは当たり前

だけど、シム家に嫁がれるのであれば、もしかして一緒に行けたりするのかなぁ

なんて考えてた

でもさっき、シム家に執事はいない、とユノから聞いて、その線はないのかと・・・

いやいや、その前にチャンミン様とのご結婚がなくなるのだから・・・

 

 

「キュリお嬢様の嫁ぎ先によっては、お前を世話係として雇ってくれるかもしれないが、それではお前の能力が無駄になる。もったいない。執事として働ける場所を新しく捜す方が賢明だ。だが、それがどうだ?お嬢様が婿養子をとられ、この家に残られる、となればお前は今までどおり、このハン家で勤めることができる」

 

 

あぁ~・・ そうか!

 

 

「・・・ ありがとうございます。私のことまで考えてくださって。」

 

 

「当然だ!執事であるおまえがいなくなれば、この家での俺の負担が増えることになる。おまえの問題は俺の問題でもあるんだ。」

 

 

私・・・

 

そこまでユノの役に立ってるようには思えないけど・・・・

 

 

 

「この家には執事がふたりいる。お前がいるから、俺も休みをとることができる。さっき、あの店でお前は言ったな?バトラーがふたりしてハン家をあけてもいいと思ってるんですか?と。あの言葉には感銘を受けた。」

 

 

え・・

なんか嬉しいんですけど・・・

 

 

でもそう

いつまでもふたりしてこの家をあけておいてはいけないからって

帰ってきて、こうしてユノの部屋で話をしている

 

ちょっと緊張するけど・・・

 

初めて入ったわけではないし

 

私の部屋かユノの部屋って言われたからユノの部屋にした

(広いしね)

 

 

「ひとつ確認しておきたいんだが・・・」

 

 

「なに?」

 

 

「あの男、三木壮士は、キュリお嬢様のことを愛してるんだろうな?」

 

 

 

ビクッ

 

 

 

「そ・・ それが・・」

 

「は?どういうことだ?」

 

「だからっ!そういうのを確認したくて、彼の人となりを調べようとあの店に行ったんですっ!よく行くって聞いたから・・・」

 

「何ということだ!まだそこからか?おまえは今までいったい何をしてたんだっ!?」

 

「だってあの男、掴めないんですってば!」

 

「・・・わかった。俺も調べてみよう。見込みがあるようならオレが立派な後継者に育て上げよう。だがもし、うちのお嬢様を弄んでいるだけのようなら・・・その時はオレが潰してやるだけだ」

 

「・・・・・」

 

 

怖い・・・

怖いんですけど・・・

 

 

「でもユノ!」

 

 

「・・・ん?なんだ?」

 

 

「キュリお嬢様の結婚相手は、チャンミン様じゃなくていいの?」

 

「チャンミン様?ふん、さっき見ただろう?あの男はあの連れの女にご執心だ。とてもキュリお嬢様を幸せにするようには思えない。」

 

「でも・・ だったらどこかの御曹司じゃないとダメなんじゃー」

 

「お嬢様がシム家の秘書がいいと言ってるのだろう?だったら、まずはその男がふさわしいのかどうか見極めてやる」

 

「・・・ その結果、見込みがありそうなら、婿養子にとってハン家を継がせるってこと?でもそんなうまくいくかなぁ?そもそも、シム家からチャンミン様との婚約解消の申し出とか来てないわけだし・・」

 

「シム家の実権を握っているのは、今の社長の母君である会長だ。大丈夫。俺に任せろ。必ずいい話にしてやる」

 

 

不思議だ・・・

 

この人が言うと、本当にどうにかなるんじゃないかって思えるんだから・・・

 

ううん

 

きっと、どうにかしてくれるはず

 

 

「うん」

 

 

「それにはまず、あの男について調べることが先決だ。・・・ わかってるな?」

 

 

「う、うん・・」

 

 

 

三木さん・・・

 

あなた、とんでもないことになってますよ?

 

 

 

「さて・・・話は以上で終わりだが・・・」

 

 

「あ、うん。そうね。じゃあ私ー」

 

 

立ち上がり、飲みかけのミネラルウォーター入りのペットボトルを手にもつ

(部屋に入ったときに、冷蔵庫から最初に出してもらった)

 

 

 

 

「今夜はここで寝るか?」

 

 

は!?

 

 

「な、な、な、何を言ってるのっ!!」

 

 

立ってるから、ソファに座っているユノを見下ろすようになってしまった

 

そしてユノからは、私を見上げる視線

 

やばいやつ、これ

 

 

「ずっと聞きたいと思っていたことがあるんだがー」

「じゃあ私っ、自分の部屋に戻るからっー」

 

 

「え?」

 

 

今、何か言った?

 

ユノ・・・

 

ずっと聞きたいと思っていたこと?

 

 

「いや、いい。・・・ おやすみ。」

 

 

「あ、うん・・ おやすみなさい」

 

 

 

ガチャ

 

バタン

 

 

 

私はユノの部屋を出て

ドアにすがって しばし立ち尽くす

 

 

 

なに・・?

 

ずっと聞きたいと思っていたこと、って?

 

 

気になる・・・

 

すごぉーーーく気になる・・

 

 

どうする?

 

もう一度、この部屋のドアをノックして

中に入って

ユノに聞く?

 

 

 

・・・ いや

 

それはしちゃだめだ

 

 

じゃないと私・・・

 

 

 

 

「ふぅ~・・・」

 

 

 

大きく深呼吸をする

 

 

 

「ハン家で働くための決まりを思い出せ・・・」

 

 

何のために彼氏まで作ったと思ってるのよ

 

 

あ・・・

 

 

私は消音にしてバッグに入れたままだったスマホを取り出す

 

 

 

 

その彼からの着信が入っていた