「おはようございます」
大丈夫かな?
顔・・ にやけてないかな?
なんて思いながら、フロアの人たちに挨拶をする
朝、シャワーを浴びるなんていつぶりだっただろう?
ほのかにまだ香るボディソープの香りがくすぐったい
「あ、おはよう、白石さん・・ そうだ!ねぇ、知ってた?」
「はい?」
「白石さん、営業の瀬名くんと高校の同級生だとか言ってたじゃない?」
それ、私が言ったんじゃないんだけど
いきなり瀬名の名前が出てきてドキッとする
「・・あ~・・ はい」
うまく返事できたかな?
「石橋さんとつきあってるんだって!」
「え・・?」
「あー、驚いてる!白石さんも知らなかったんだぁ~?」
「びっくりよねっ!!私たちもさっき知ってびっくりしたんだもん」
「ねー?」
なんて言ってる?
みんな・・・・
「なんか今朝、ふたりが話してるところを見てた子がいて~」
「石橋さんに聞いたらつきあってるって認めたらしいよ~」
「瀬名くん、朝帰りだったとかで」
「きゃーーってなったわよね~」
「うちの社内一の歳の差カップルじゃない?」
「今度石橋さん誘って飲みに行こうよ!」
「そうそう、年下イケメンをゲットする秘訣、なんて聞きたいよねっ」
どうして?
瀬名の朝帰りは、私のところに泊まったからで
でも、そんなの言えない
私は瀬名の姿を求めて視線を馳せる
でも、姿は見つからなくて
ホワイトボードに外回りって書かれてるのを発見
「ね!?白石さんも聞きたいでしょう?」
ドキッ
「いや、私はー・・」
聞きたいわけないじゃない!
「あっ!石橋さぁ~~~ん!!」
え?
石橋さん?
コツコツとヒールの音が響き
足音が近づいてくる
「あなたたち、いつまで騒いでるの?もうすぐ仕事始まる時間よ?」
「そんなこと言ったって、社内中、朝から石橋さんたちの噂でもちきりですよ」
彼女が私の横を通り過ぎる
「いい加減にー」
そこまで言って石橋さんが立ち止まり
振り返ってこっちを見つめた
ビクッ
「・・ おはようございます」
慌てて挨拶をしてお辞儀をする
「・・・・・・・・・」
石橋さんはじっと私を見つめたまま
挨拶を返してはくれない
心臓の奥が、ぎゅっと何かに掴まれたかのように
苦しくなる
これが・・・
罪悪感というものなんだろうか
石橋さんは、もしかして何か・・・
気づいてる・・?
それとも
何も知らない?
でもだったらどうして挨拶を返してくれないんだろう
「あの・・・」
勇気を出してもう一度声を振り絞る
でも石橋さんは、くるっと踵を返すと
「ほら、みんな!仕事よ、仕事!」
そういって歩いて行ってしまった
どうしよう
私の想いは
確実に石橋さんを傷つけている
瀬名
苦しいよ