「ちょっとユノッ!いったい何を考えてるのよっ!!」
あんなことするなんてっー
店を出て、まだ人が行き交う道の往来で
私はユノに向かって怒鳴ってしまった
「驚いたな。まさかシム家のチャンミンがやってくるとは」
はっ!!
そうだった、そうだった
チャンミン様がー
「しかも、どうやら女性の連れがいるようだったが」
「やっぱり?そうよね?」
バレる前に飛び出してきたけど
見るとこは見てたのね
恋人?
でも、キュリお嬢様との婚約は?
破棄の申し出なんてきてないし
「お友達かしら?」
「いや。・・・ 違うだろ。お前をその女性と間違えて俺を引きはがしたんだからな」
「あ・・」
思い出したらまたムカついてきた
「だからユノっー」
「おかげで俺だと気づかれずに済んだ」
え・・?
「それはだって、ユノがいつもと違う恰好してるし・・」
「それでも気づいておかしくない。気づかなかったのは、それほど狼狽えていたからだろう。」
確かに・・・
さっきのチャンミン様、ユノを引きはがして現れた顔
すっごい剣幕だった
「おまえに気づかなかったのは、蕩けた顔だったからだろうけどな」
「・・っ/////////」
と、蕩けたってー//////
そりゃあの時確かに私は・・・
でもだからって許せることじゃないんだからっ
「だからユノッー」
「・・ りかさん?」
ユノに向かって怒る私を
背後から呼ぶ女の人の声がした
こんなところでいったい誰が?
と思って振り返ってその顔を確認して冷や汗が出た
「・・・・ ゆかちゃん」
彼の妹だ・・
はぁ~
よりによってこんなときにゆかちゃんに会うなんて・・・
この子、なぜかいつも私にいい顔しないんだよね・・・
よっぽどのブラコンなんだと思うんだけど
「誰です?その人。お兄ちゃんは、りかさんが仕事で忙しいからって会うの我慢してるっていうのに、何です?自分は他の男とデートですか?こんな時間にっ?こんなところでっ?」
きた!
そうよね、そうくるわよね?
「ゆかちゃん、違うの、この人は・・」
私はゆかちゃんに説明しようと近づいた
お酒臭い
酔ってる・・?ゆかちゃん・・
「だいたい最初っからおかしいと思ってたんですっ!お兄ちゃんみたいな普通の人にこんな綺麗な彼女ができるわけないって。絶対遊ばれてるんだ、って。私、ずっと思ってた!だから言ってたの!あんな人やめた方がいい、って。遊ばれていつか捨てられるだけだ、ってー」
「失礼、お嬢さん。飲みすぎなのでは?」
突然、ユノが私とゆかちゃんの間に割って入ってきた
私に振りかざしていたゆかちゃんの手をとって、その甲に軽く口づけをすると
「もう、そのへんにしておかれてはどうです?私は彼女の上司です。あなたが疑っていらっしゃるような関係ではございませんよ?」
バトラー感、全開で出してきたぁーーーー!!!
こうなるともう、落ちない女性はいない
あ~、ゆかちゃんもきっとユノにー
「離して、気持ち悪いっ!」
・・・え?
あろうことか、ゆかちゃん、ユノの手をふりほどいた
うそでしょ
こんなの・・・ 初めてみた
「あんたもグルなんでしょっ?ふたりして私のお兄ちゃんをー」
「なるほど・・・。確かに。あなたのお兄さんは、彼女にはもったいないかもしれない。」
え?ちょっとユノっ、いったい何を言い出すのっ?
「待ってよ、ユノ。そりゃ確かに、彼は私なんかにはもったいないくらい素敵な人だけど。でもね?聞いて?ゆかちゃん、私ー」
「帰ったらお兄さんに言っておやりなさい。『お兄ちゃんはあの女なんかにはもったいない。いっそ、私の方がお兄ちゃんに似合うんだ』ってね」
・・・え?
私の方が、て・・・
「な・・・ 何を言ってるの?あんた・・」
ゆかちゃん、一歩 後ずさった
ユノの言葉に明らかに狼狽えてる・・!?
「別に。あなたの気持ちを代弁しただけですが。ただ、今はお酒に酔っていらっしゃるようなので、お兄さんに話をするのは、また日を改められた方がよろしいかと」
「あんたなんかに何がわかるっていうのよっ!勝手なこと言わないで!」
「ちょ、ちょっと待ってよ、ふたりとも・・。 ゆかちゃん、ね?落ち着いて」
「触らないでっ!!」
肩にかけようとした手を振り払われた
鋭い視線と一緒に
でも、やがて睨むようなその目から、涙が溢れてきはじめ・・
「ゆかちゃん・・・?」
「ごめんなさい、りかさん・・ 今日のことは忘れてください。お兄ちゃんにも何も言わないで。」
そう言うと、静かに視線を落とし、ユノにも一礼をして、歩いて行った
「ちょっと待って、ゆかちゃんっー」
ぐいっー
後を追おうとした私の手を、ユノが引っ張った
「おまえはバカか」
「・・・・・・」
バカだ
本当にバカだ
さっきのゆかちゃんの様子
ユノのセリフ
今から思えば全部、たったひとつの真実に通じてる
思いも寄らなかった・・・
「・・・ 私はいったいどうしたら・・」
「別に。どうもする必要はないだろう。あの子も言ってた。」
「だけどっ・・」
ゆかちゃんの気持ちを知って
今までどおりに彼に会うことが出来るだろうか?
ゆかちゃんにも・・・
「まぁ俺なら、あのふたりに血のつながりがあるのか、確認してみるかな」
「えっ、うそ・・」
ただのブラコンの激しいやつじゃないってこと・・・?
でも確かにあそこまでだとは・・・
かなり本気度高かったし・・・
「彼女の想いは報われるものなのか、そうでないのか・・・。」
報われる!?
報われるってことはー
「それよりも、いい加減、吐け!」
「え?吐け、って私、お酒飲んでない・・」
「バカか!!誰が酒を吐けと言った!おまえの今夜・・いや、ここ最近の行動の理由だ。俺に隠れて何をこそこそ探ろうとしているんだ?」
急に現実に引き戻されたっていうか
仕事を思い出させられた
彼とゆかちゃんのことが気になってしょうがないっていうのに・・・
今の私は、ハン家のバトラー
そしてここに来たのは、キュリお嬢様のため
そう
そうだったはず
それを強く思いださせられた
否応なく・・・
この人の、鋭い視線によって・・・
チロッ
ヒィッー
「・・・ いつまでも隠せると思うなよ?」
あぁぁぁぁぁ、ユノってば・・・
カジュアルな恰好してても
その眼力
逃げられる気がしないわ
お嬢様、申し訳ございません・・・
私は大きく息を吐く
「わかったわ、ユノ。でも話す前にひとつだけ、約束してほしいの」
「なんだ?」
「お嬢様の嫌がることはしない、って」
「そんなの当たり前だ。俺を誰だと思ってる」
「ハン家のチョンバトラー・・・ さま」
