「・・・・なんでこんなことするんですか?」

 

 

くちびるが離れ

まだぼぉ~っとする頭で

私はミン専務にそう聞いた

 

 

「なんで?だから言ったでしょう?キミにキスしていいのは僕だけだって」

 

 

そんな答えを期待してるんじゃないの

 

 

「だから、どうしてですか?」

 

 

私が聞きたい言葉

それをミン専務の口からどうしても引き出したくて

私はしつこかった

 

 

「どうして?だったら、キミこそっ!どうして僕のキスに応じたんですかっ?しかも、ノリノリだったじゃないですかっ!」

 

「ノリノリっ?って・・それは、専務がノリノリだったから合わせてあげただけですっ!それにっ、ドキドキしてるって言うから、そのまま調子を合わせてあげようと思ったんですよっ!でも私が間違ってました。キスはダメです」

 

 

やっぱりだめか・・・

聞けないって思ったら怒りが込み上げてきた

 

「どうしてっ!!」

 

「だって、そんなのっ・・ 片思いの人がすることじゃないからです!ってことで、さっきのドキドキはノーカウントです。キスして性的に興奮しただけでしょうから。専務がお知りになりたいドキドキとはちがうやつです」

 

「は!? 僕が知りたいドキドキって何なんですかっ?どうして僕が知りたいものを君が知ってると言うんだっ?さっきのドキドキがどうして違うっていえるんですかっ!?」

 

「だからっ!さっきのはお酒に酔った勢いでしょうっ?」

 

「僕は酒など飲んでないっ!!」

 

「えっ?」

 

 

カウンターの上のミン専務の前にあるグラスを見た

 

 

「それ・・・」

 

「これはウーロン茶です。・・・ 飲んでみますか?」

 

 

ミン専務がグラスを私の方へと差し出した

 

 

 

香りでわかる

お酒の匂いなどしていないから

 

 

ミン専務はお酒など飲んでいなかった

 

 

「だったらどうして・・・」

 

 

 

「どうして、どうして、どうして!キミはそれしか言えないのか?そんなものっ!したいからした!それ以外に何があると言うんです?」

 

 

 

したいから、って・・・

 

 

「そんなのっ、ただの性欲の赴くままってことじゃないですかっ!それじゃあダメなんですっ!さっきも言いましたけど、キスするとか、普通は片思いでありえませんから!」

 

「普通?・・ 僕たちは普通じゃあないのでは?僕は君に片思いする、君も僕に片思いする。両者公認の片思いだ。ならばしたくなったらしてもいいんじゃないのか?」

 

 

なんかもう、いったい何の話をしてるんだか

わけがわからなくなってきた

 

ミン専務にうまく言いくるめられているだけのような・・・

 

 

「そもそも専務っ!私に片思いなんてしてないですよね?」

 

 

もう自棄になってきた

 

 

「なぜそう思うんですか」

 

 

なぜ?

 

 

「だって、そんなの・・・ 全然、私のこと、好きだなんて感じられませんもの」

 

 

ふんっ

 

 

「それを言うならキミだって!!」

 

 

え?

ミン専務、目をひん剥いてるっ!?

 

くりっくりの目がっー

 

 

 

「僕のことを好きになるって言っておきながら、ぜんっぜんそんな感じがないじゃないですかっ!」

 

 

 

「はぁ~~~!?」

 

 

 

そんなこと、言いますぅ~~?

 

こっちはねぇ、どれだけ・・

 

 

 

「じゃあ、・・・ やめますか?」

 

 

ミン専務に提案した

 

もう疲れた

延長なんて無理

 

 

さっきのキスだって・・・

 

 

 

あんなのされたら

好きに・・・

 

本気になってしまうもの

 

 

 

 

 

 

私はミン専務から顔を背けた

 

 

 

 

「・・・・ こっちを向いて?」

 

 

「・・・・ 嫌です」

 

 

 

 

これは悔し涙だ

 

だけど見られたくない

 

 

 

「前言撤回します。いま、よ~くわかりました。」

 

 

「・・ 何がわかった、って言うんですか?」

 

 

「キミが僕のことを好きだって」

 

 

 

・・っ!?

 

「はぁ~!?」

 

 

思わず顔を上げると、ミン専務がニヤリと笑ってウィンクをした

 

 

ドキッ

やっぱり見惚れるくらい、美しい

ウィンクひとつでも

 

 

「可愛いですねぇ~。赤くなっちゃって」

 

 

ふふふん、と余裕の笑み?

 

 

 

「はっ////? 赤くって、これは、お酒のせいですって!私は専務と違って飲んでますからっ!」

 

 

ハァ~~、ムカつくっ

ムカつく、ムカつく!!

何だかしてやられた感じ!

 

 

私はグラスに残っていたお酒をぐいっと一気に飲み干した

 

 

「あれ?」

 

「それ、僕のウーロン茶です」

 

「あっ・・」

 

 

もぉーーーーーっ!

何から何まで・・・・

 

 

 

「帰りましょう。送っていきますよ。」

 

 

「え?送るって・・」

 

 

「車で来ました。だからお酒は飲まなかったんですよ?」

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

 

どういうこと?どういうこと?

 

ミン専務は、私を送ってくれるつもりで、車でここまで来てくれたってこと?

 

なんか・・・

どうしよ

顔が・・・ 照れる

 

 

 

「ありがとうございます。今夜は・・・ こちらになります。」

 

 

サッと差し出された一枚の会計用紙

ミン専務がスマートにそれを受け取った

 

 

「ええっ?マスターっ?いつの間にっ!?」

 

 

戻ってきてたのっ?

え?いつっ?

どこから見られてたっ!?

 

 

え?え?え?

ドアが開く音、した?

 

 

うそうそうそっ

 

 

ほんとに、どこから見られてたのぉーーーーっ