雨が降っていた

 

私は、お気に入りの傘を差して、近所のコンビニへ

 

 

 

「コンビニに雨、傘、と言えば?」

 

 

むなしい独り言で、自分に問答

 

 

「あの時、ミン専務、これ買ってたよね?」

 

 

あの日あの時、ミン専務がかごに入れたお菓子を手に取りながら

ついつい声が出てしまっているイタイ私

 

あー、あのお菓子はここにはないのかぁ~

とか考えながら

 

やっぱりケータイ、連絡先、聞いておけばよかったなぁ~

いやいや、絶対自分からは聞かないって決めたじゃん

 

ーー どうして?

 

なんて言われたらどうするの

じゅうぶんあり得るその反応が

怖すぎて絶対無理

 

 

お会計をすませ、自動扉をくぐると

買い物袋をカシャカシャと揺らしながら

ジャンプ傘を広げる

 

 

ポツポツポツポツ・・

 

 

そうそう、これくらいの音が好きなの

 

今夜の雨は

本当にちょうどよかった

 

 

弱すぎず・・・

 

ちゃんと雨の音を主張するくらい若干強めだけど

強すぎず・・・

 

お気に入りの傘に音を鳴らしていく

 

 

あのときコンビニで買った一本のビニール傘

ミン専務が持って帰っちゃったけど・・・・

 

ビニール傘なんて、捨てられてるんじゃないかなぁ

ミン専務のお家には、それこそ傘と言えども、高級傘があるのでは?

いや、そもそも、傘なんて差さないのか?

(お付きの人が差してくれるとか)

考えて笑った

 

 

私がもらえばよかった

 

記念に

 

 

「ぷっ、何の記念よ」

 

 

思わずまた漏れる独り言

 

 

 

「ずるいなぁ~・・ ミン専務・・」

 

 

私は雨が降るとミン専務のこと、思い出しちゃいますよ?

考えちゃいますよ?

ミン専務はどうですか?

少しは私のこと、思い出してくれてます?

次会う時には、私のことをどれだけ考えたか

教えてくれるって言ってましたけど・・・

 

きっとまだ

私のことなんて思い出したりしないんでしょう?

雨が降っても考えたりはしませんよね

 

ってことはまだ

 

「・・ 会えないってことかぁ~・・」

 

 

はぁ~

 

深いため息がもれる

 

こんなんでどうやってドキドキとか教えてあげるっていうのよ

そもそも、あのミン専務に片思いなんてさせられ・・

 

 

 

 

「・・・ どう・・ したんですか?」

 

 

 

 

目の前に発見した背の高い人影に

思わず声をかけた

 

あの日あの時、コンビニで買ったビニール傘を差して立っている人影は

私が声をかける前に私を発見したのか

こっちに向かって歩いてくる

 

 

 

「あー、いた!どうした?って、傘を持ってきたんですよ!」

 

 

傘・・

 

 

「それ・・ 持ってたんですか?」

 

 

捨てられてなかったんだ

 

 

「車の中にずっと入れてました。いつでも使えるように!そうしたら雨が降ってきて・・・」

 

 

私はミン専務の目の前まで歩いてきてた

お互いの差している傘が当たるくらいの距離

 

 

「この前、タクシーで降ろしたところまで来たのはいいですけど、キミの部屋はどこかわからないし、ケータイも知らないから連絡もとれなくて、どうしたらいいのか途方に暮れていたらー」

 

 

すごい・・・

ミン専務がまくしたてるようにしゃべってる

 

 

「キミが、のんきな顔をして歩いてくるじゃないですか!え?どうしたか?って!?そんなのっ、キミと雨の音を聴こうと思って来たに決まってるじゃないですかっ!」

 

 

どうしよう

やばい

 

のんきな顔なんて言われてツッコムところなんだろうけど

 

嬉しい

ミン専務、私のこと・・思い出してくれたの?

 

 

「考えましたよ、今の、今まで!キミのこと、考えてました。先日の出張先でも、雨が降って、自然とキミのことを考えてました。次に会ったら話す、約束、してましたよね?どうですっ!?」

 

 

どうって・・・

さっきから胸の鼓動が激しくって・・

ドキドキ脈打ってて・・・

 

 

「あぁぁー、これっ!言う方も恥ずかしいっ//////」

 

 

傘を持っていない方の手で顔を隠すミン専務、かっこかわいい

 

 

「すごいです、専務」

 

「は?なんです?それ!!ずいぶん余裕そうじゃないですか!あぁー、やっぱりボクばっかり恥ずかしくて・・ ずるくないですか?」

 

 

ずるいのはアナタですよ、ミン専務

 

 

「それで、今日の雨の音はどうですか?」

 

 

こたえられないから話題をかえてみた

だってもう、嬉しくて顔がほてってる気がするんだもん

 

 

「私はとても好きな感じです。強すぎず・・ 弱すぎず・・この音、この音!って。それにこの傘、私のお気に入りの傘なんですっ、だからー」

「じゃあー、その音、僕にも聴かせてください」

「え?」

 

気づいたらミン専務の顔がすごく近くにあった

だって・・

 

自分の傘、閉じて、身体をかがめて入ってくるんだもん

私の傘にー

 

そしてー

 

 

「僕が持ちますね」

 

 

外側の手で傘を取り上げると

 

 

「これ、持ってて」

 

 

私にあの、ビニール傘を持たせ

反対側の手で

 

私を抱き寄せた

 

 

「ほら。こうすれば濡れない・・ですよね?」

 

 

にこっと笑うミン専務の顔は

めちゃくちゃ至近距離

そう、至近距離ってこれくらいの距離のことを言うのよねっ?きっと

 

 

「あ・・////// ・・・れ・・?////// 」

 

 

やばい

気づかれた?

私の顔・・・

 

絶対、今、変っ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ど・・・

 

どうしたんだ?

 

 

さっきから

 

もっと・・

 

もっとそばに、って・・

 

 

欲求がすこぶる渦巻いてきて

 

 

別々の傘に入っていることすら遠く感じて

 

 

 

 

 

気づいたら彼女の傘に入って

 

 

彼女の肩を抱き寄せていて

 

 

 

そうしたら、思ったより彼女の顔が近くて

 

 

上目遣いなその・・・その顔を見たら

 

 

 

胸が・・・・

 

 

 

なんだか、たまらなくなってしまって

 

 

 

 

 

 

 

気づいたらそのまま

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キスしてた・・・