『君といてもドキドキしないんだ』

 

 

婚活パーティで知り合って、何回か会うようになって

いい感じで結婚というゴールまでの道をふたりで歩いているとばかり思っていた矢先

彼に言われた

 

 

普通にショックだった

 

 

一緒にいてドキドキしない?

そんなの、私だってそうだったわよ

って言ってやりたかった

 

ドキドキですって?

そんなのね

中高生しか、するもんじゃないのよ、ってね

 

いい人だとは思っても

ドキドキはしない

 

でも結婚を意識するいい大人にもなれば

そういうもんだと思ってた

 

それに、結婚相手に求めるものに、ときめきは必要ですか?

ってのもあるし

そこを求めると婚期を逃す、って結婚した友達は言ってたし

 

とぉ~~っくに、そういうのは諦めてたわよ

 

なのに、あんたは諦めてなかったんですかぁーーーー!!

 

 

「・・・ しんっじらんない・・」

 

 

「大丈夫?ルナちゃん、飲みすぎじゃない?」

 

 

グラスを握りしめて呟いた私に

心配したマスターが、カウンター越しに話しかけてくれた

 

さっきまで店の中を占拠していた団体客が帰って行ったので

余裕ができたんだろう

 

がしかし、途端に静かになった店内は

今の私には居心地の悪いものとなってしまったが

 

(結構、声に出ちゃってたとこあったような気がする)

 

 

私は顔をあげ、マスターと目があうと

にっこり微笑み

 

空になったグラスを掲げ

 

「だぁいじょうぶですよ~、マスター、おかわりぃ」

 

そういって振ると、小さくなった氷がかろうじて音を出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、マスター・・ いくつになったら、ドキドキするような恋ってしなくなるんでしょうね~?」

 

 

「ドキドキするような恋?そんなの、いくつになっても機会さえあれば、できると思うよ」

 

 

「え~?うっそだぁ~?なんかもうね、そういうシステム、働かなくなってる気がしますよ?歳とともに・・・だんだん、錆びてくるっていうのかなぁ?」

 

 

「ハハハハッ、錆びてくるって、・・・ 面白いこと言うねぇ、ルナちゃんは」

 

 

「ほんとですって!・・え~?だったら~?マスターは今、ドキドキするような恋してるんですか?」

 

 

してないですよね?だってマスター、何歳だろう?

・・・40歳・・くらいか?

 

 

「そうだね、今はしてないかなぁ~」

 

 

「ほら!!」

 

 

思いっきり、指をさしてしまった

 

 

「私だってね~・・ できるもんならー」

 

「あ、いらっしゃいませ~」

 

 

ドアが開いた音がして

マスターが視界から消えた

 

 

しょうがない

 

おひとりさま劇場のはじまりさ

 

 

「私だってね~・・ できるもんなら、ドキドキするような恋をしたいですよ?

だってそんなの、いつしたっけ?って記憶をたどっても・・・ほんっと、中学生くらいに遡っちゃうんだもん。だって高校生は進学校だったから受験一色だったし・・・それでも好きな人は見つけるけど、ドキドキするほどじゃあなくって・・それこそ恋に恋焦がれ~って感じで・・・

あー、そんな歌、あったなぁ~・・ 恋に恋焦がれ、恋になくぅ~、心ぉからぁ~あ~あー」

 

 

「実に興味深い話だ」

 

 

「・・・(ピクッ)」

 

 

突然、斜め後ろの方から声が聞こえ

 

振り向くとー

 

 

「・・・っ!!!?(ミン専務っ!!?)」

 

 

そこには、会社のお偉いさん・・役員さまが立っていらっしゃる?

え?夢か?幻か?

なんでこんな店に?(マスター、ごめん)

 

 

「もっと聞かせてもらえるかな?」

 

 

そういうと、ミン専務は、私のとなりからふたつ、椅子を置いた場所に座った

 

あ、足が長い・・・

なんてスマートに座るんだろう?

 

いつも、遠くからしか見たことなかったけど・・・

といっても、たまにだけど・・

近くで見ると、本当に綺麗な顔だなぁ~

 

横顔も素敵・・!

 

うっとりしちゃうよぉ~

 

こんなカッコイイ人が相手だったら

ドキドキ・・・

するんだろうか?

 

 

「どきどき・・・?僕に?」

 

 

「え?私・・・」

 

 

 

声に・・ 出てました?