「のう・・ ユリナ?」
大きなベッドに寝たまま、皇子が私の髪を撫ぜる
「・・ なに?」
「・・久しぶりに思い出した、私の母上の話を・・ 聞いてくれるか?」
お母さまのお話!?
横になったまま、皇子の方に身体を向ける
「もちろん・・ 言ったでしょう?あなたのこと、何も知らない、知りたいって」
「そうだったな・・」
なんか・・・
状況が状況なだけに、だろうか?
皇子の微笑みがとてつもなく
今まで以上に
抜群の破壊力を持ってエロく見えてしまう
「教えて・・?」
私の言葉に、皇子は一度目を伏せると
語り始めた
昔話でもするかのように・・・
「私の母上はー・・ その昔、不思議な力を持つという一族の村に生まれた娘だった。
あるとき、街に出掛けていたところ、バッタリ王に遭ってしまったらしい。美しかった母上は、あっという間に王に見初められ、まるで人さらいのように王宮へと連れてこられたんだそうだ。」
「え?お母さまも王様と恋に落ちたとかじゃなくて?同意なしに?」
「母上にはー・・ その頃、結婚を約束した人がいたそうだ」
「ええーーーーっ!!じゃあ王様が略奪しちゃった、ってこと?いいの?そんな・・」
「よくないとは思うが、この国の王のすることに誰も文句など言えなかったのだろう」
「え?でもでもっ・・ それじゃあ、お母さまのその結婚を約束したっていう恋人はどうしたのっ?」
「さぁ?それはわからぬ。私にも・・・。なにぶん、ずいぶん後になって・・聞いた話だからな。」
そう言うと、皇子はどこか寂しそうに笑った
「・・・母上は、自分には王の欲しがる不思議な力など何もないと言って、村へ帰してくれと何度も王に懇願したそうだ。しかし王は聞いてはくれず・・・
やがて私が生まれた。」
え・・・
もしかして、王様が無理矢理・・!?
だとすると、お母さまは望まぬ子だった・・?
「皇子・・ もしかして、お母さまにー」
・・・ 愛されなかった?
という言葉を飲み込んだ
すると、まるでその言葉がわかったかのように
皇子はフッと笑って
「案ずるな。私は母上に愛されていたよ」
優しくそう言ってくれた
「よかった・・」
私が微笑むと、皇子が顔を近づけ、ついばむような優しい口づけをくれた
「母上の口癖だったな、私の幸せだけを祈っている、と・・・」
「お母さまは・・・ ご病気か何かで?」
王様が関係しているような口ぶりでもあったけど
そんな口癖、まるで余命いくばくもない病床の母が遺すみたいに聞こえるんだもん
「母上は・・・ 毎日毒を盛られていたのだ・・ わずかづつ・・」
「・・毒って・・・っ!!?」
言葉にならない・・ ひどすぎて・・
「どうして?誰に?王様にっ?」
皇子が黙って首を振った
「でもそんな、毎日盛られていたって・・わかっていたのなら飲まないこともできたんじゃー」
「私のためだ。」
「皇子の・・ため?」
「毒殺の対象が私に及ばぬよう・・ 母上は私を守るために自らわかって、毒を・・」
皇子の言葉が途切れた
私は身体を少し起こすと
腕を広げ、皇子を抱き締めた
「だがしかし・・ それすらも、母上が亡くなってから私が聞かされた話だ。
当時の私は・・ 何も知らず、日に日に弱っていく母上に何もして差し上げることが出来なかった。
まぁ、わかっていたところで、幼き私に何が出来たと言おうか・・・」
ぎゅう~
私は皇子を抱き締める腕に力を込めた
「ユリナ・・ 母上が私にしてくれた話がある」
ちゅっ
皇子ったら、私の上にキスを落として笑った
慌てて引っ込めようとした腕を反対に掴まれる
「私の前に・・ いつか現れるたった一人の娘が、私の愛する伴侶となるだろう、と。」
「いつか現れるたった一人の娘・・?」
思わず自分のことかと思ってドキッとしたけど
よく考えたらユリン姫だってそうじゃない?
「そ・・れは・・ ユリン妃のこと?」
そう尋ねると、皇子は、フッと笑って
「幼き私も、母上に聞いた。お姫さまじゃないの?と。」
あー、うんうん
だって皇子だもんね?
「すると母上は、首を横に振って、お姫様じゃないの。本当にたったひとりで現れるから、ちゃんと助けてあげてね?って・・・」
「えっ?本当にそんなこと言われたのっ?」
そんなの・・・
そんなのまるでー
「まるで、おまえのことのようだな」
ーーっ!!!!
「私は・・・ 皇子が結婚するのは当然姫だと信じて疑わなかったから、母上の話など、信じてはいなかったのだが・・・」
そこで言葉を切ると、再びどこかを見つめ
「こうしてみると・・・ 母上はやはり、どこか不思議な力を持っていたのだな?」
そう言って私の方を振り返った
でもそんな・・・
そんなの、ダメだよ
だって皇子はユリン妃と・・・
私はここにはずっといることなんてできないんだからー
「・・ そんな顔をするな。」
皇子はすっと綺麗な手を伸ばし
私の顎をもちあげると
「今宵は何も考えず、黙ってまた、私に抱かれよー」
甘く
甘く
深い口づけをした・・・