相変わらず、以前と違い、私の湯浴みの時には、ダリしかここには居ない
これってやっぱり皇子の配慮なんだろうか?
もしかして・・・・
少しは私のことを大事に思ってくれてる?
なんてことは・・・
ないよね~
「ねぇ、ダリ・・ いいのかなぁ?」
首元までお湯に浸かり私が腕を動かすと、水際が波立ち
チャポン、水音が跳ねる
「・・・ なにが、でございますか?」
もしかしてシカトされたんじゃ?って思った頃に
静かにダリの返事がかえってきた
「なにが、って・・ わかってるくせに。意地悪だ」
お湯に口をつけ
ぶくぶくぶく・・・
「ぷっ!・・ 何度も言いますが、妃はそのようなことはなさいませんよ?」
「わかってますよーっだ・・・」
だって、妃じゃないもん、私
「いいんじゃないですか?・・ ダリはもう、覚悟を決めましたよ」
「えっ?覚悟って・・ ダリっ?いったい何の覚悟を決めたのっ!?」
湯の中へと沈みそうになっていた頭を上げた
驚きで・・・
「皇子の御気の向くまま・・・ 私は従うことにいたしました」
「皇子の・・ 御気の向くまま??とは??」
「わかっていらっしゃるくせに・・(ニヤリ)」
ダリが私の顔を向いて、不敵な笑みを浮かべた
「ちょっとダリっ//// そういうの、ずるくないっ?
いや、そうじゃなくて・・ え?それでいいってこと?
でも、それじゃあー」
「ただ、ひとつだけ確認しとうございます。貴女こそ、覚悟は決まっていらっしゃるのですか?」
ドキッ
私の・・・
覚悟・・?
「皇子の御子を・・ この国の世継ぎを・・生すお覚悟です!」
ドクンッー
そうだ・・・
あっちへ戻ったとき、ちゃんときたこと
あんなに安心したの初めてだった
皇子の・・・
この国の世継ぎを生す・・
私が・・?
ぶるっ・・
自然と体が震えた
チャポンッー
もう一度肩までお湯に浸かりなおす
「あなたのお姿が見えなくなったとき・・・・
皇子がどれほど憔悴なさったか・・・
そしてまたあなたがここに現れたとき・・・
私は、皇子が生まれたときからお仕えしていますが
こんなに皇子が誰かに執着なさっているのを見るのは
初めてなんです
私は・・ ダリは、皇子に幸せになってほしいのです
それが皇子の母君様の願いでもあるのですからー」
「皇子の母君様?」
「わたくし、実は幼少の頃、皇子の母君様にお仕えしておりました」
「ええっ?? そうなのっ?」
ダリが皇子のお母さまに??
「はい。・・ と言いますのも、私の母が皇子の母君様付きの侍女でしたから」
「ええええーーっ・・ じゃあ、皇子のお母さまがどうして亡くなったのか知ってたりするのっ?」
「っ!!?」
ダリの表情が明らかに変わった
「ねぇダリ、さっき王様が皇子にー」
「・・・ご病気でございます。」
私の言葉を遮るようにしてそれだけ言うと、ダリは
「私としたことが。おしゃべりが過ぎてしまいました。皇子がお待ちでしょう。さ、お着替えを持ってまいりますね?」
「あ、ダリー」
それからダリは、私に夜着を着せる間ずっと、一言もしゃべってはくれなかった
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・
「ずいぶんと長い湯浴みであったな?」
久しぶりに入る皇子の寝所
少しだけ濡れたままの髪が
皇子の色香を増している
こうしてマジマジと見つめていると
つくづくイケメン皇子だと思い知らされる
その名は隣国にもとどろき
ユリン姫は・・
どれだけ恋焦がれてこの美しき皇子の元へと嫁ぎにきたんだろう
ゆっくり引き寄せられると
皇子の厚い胸板が夜着からのぞくのが見える
この美しき皇子に愛されるべきは・・・
抱かれるのは・・・
決して私であってはならないのに・・・
ダリったらー
覚悟を決めたなんて言っちゃって・・・
「・・ どうしたのだ?」
こんな・・・
ユリン妃に似ているというだけだという、どこの馬の骨ともわからない私のために・・
「何を・・ 泣いているのだ?」
私の頬を拭う皇子の指で
私は、自分が涙を流してしまったのがわかった
わかった途端に
ぼやける視界に
瞬きをする
すると今度ははっきりと大粒の涙が頬を伝うのがわかった
「そんなに・・・ 嫌だというのか?私に抱かれるのがー」
・・!!!
皇子が・・・
あの、いつも強気で上からばっかりモノを言っていた皇子がー
今まで見たこともない顔で私を見つめている
ぶんぶんぶんっー
私は大きく首を横に振った
抱かれるのが嫌だなんてー
ちっとも思ってない
そんなことー
そんなことあるわけない
すると、明らかにホッとした表情を見せる皇子
「では・・・どうしてだ・・?おまえのその・・ 涙のわけは・・?」
私の頬を拭う指は本当に優しく馳せる
「・・・・皇子・・・ 」
もう、流されるように抱かれてはいけない
この方に・・・
ダリは皇子の御気の向くまま、なんて言ってたけど
そんなことしたら
ダリだって本当は困るくせにー
私にこの国の世継ぎなんてー
「・・ん?なんだ?」
「・・ 私の話を聞いてくださいますか?」
すべて話そう
皇子にー
つづく