花薫る宮殿の回廊を通り抜ける
少しだけ前を歩く皇子の
その背中を見つめながら
後ろ姿も絵になるってどれだけ美しい人なんだろう
「・・・ のことを何も知らぬ、か」
ふと、皇子が何かを呟き、足を止めた
「それは私のセリフだ・・」
くるりとふりかえると
またもやその腰を折り、前かがみになって
私の目線に合わせてくれた
見惚れる私は思わず
「・・顔、ちっちゃ!」
ぼそっと照れかくし
いや、本当のこと
「何と?」
私の言葉に首を傾げるその様すら美しい
「何でもない。急に顔を近づけるから驚いただけ」
そっぽを向きながら言い訳してみる
すると皇子は
私の両頬を手のひらで包み込むようにして
自分の目の前に私の顔をもってくる
それはつぶれないくらいの絶妙な力加減で・・・
「私も、おまえのことを知らんのだがな」
どきっ
なんて言葉では表現できないほど
胸がきゅんってなる
なに?このドアップでの破壊力
もう、皇子になされるがまま
このまま瞳を閉じれば
キスしてもらえるんじゃないかって
錯覚してしまいそう
「・・あぁ~・・ ゴホンッ」
ビクッ
この声・・咳払い・・・
テジュンだわっ!!
「皇子!」
「・・・ なんだ?テジュン」
目の前から影が遠のいた
私はただただ、恥ずかしい
でも、ちらっとまわりをみると
回廊を行き交う使用人たちが
意外と多いことに気づいて
さらに恥ずかしさが募った
私、絶対間抜けな顔してたっ!!!
「王様はなんとおっしゃったのですか?どのような要件で皇子に会いに?」
テジュンからのその質問に
「王は・・ 早く世継ぎが見たいそうな」
皇子はそう言ってにやりと笑った
するとその皇子の答えにテジュンはハッと驚いた顔をし
唇をかみしめる
え?どうしたの?
「私に、早く子を成せと」
そう言いながら、皇子が横に来たかと思ったら
スッと私の腰に手を回し
「・・ のう?ユリナ?」
私を見下ろした
ギャアアアーーーーーッ
わ、わかった・・!!
テジュンが苦い顔をしているわけが!!!
「お・・ 皇子?そうだ!街へ!!街に連れて行ってくれるってー」
「今からでは、じきに日が暮れる」
「え?そんなことないわっ、まだー」
と言いかけ
回廊から見上げた空は
日が傾き始めているのがわかった
「・・ 街へは明日、早くに連れて行ってやろう」
「え?ほんとっ?でも、明日はまた政務があるんじゃ?」
「そうです、皇子!今日だって早くに切り上げたのですからー」
私の言葉を遮るかのように、テジュンがたたみかけてきた
「聞こえなかったのか?テジュン」
皇子のビシッとした声に
テジュンが身を正す
「早くに子を成すことは王命だ。私はこれから妃を可愛がることとする。それが最優先の政務と心得よ」
「えっ!?」
いま・・・
皇子、なんて?
「皇子。確かに皇子がユリン妃との間に子をお授かりになることが最善のことだと私も思っておりまする」
あ・・・
テジュンの言いたいこと
わかった
求められているのは、皇子とユリン妃の子
決して私との間にそれは許されない
「ならば、何の問題もあるまい」
「皇子っ!!」
ここ、宮殿で
言葉にできない想いを目にこめるテジュン
「・・・ 皇子。」
私は皇子の装束の裾を引っ張る
「テジュン、大丈夫。私、ちゃんとわかってるから」
テジュンの言いたいこと
ちゃんと・・
私は、テジュンに向かってうなずいた
するとテジュンの顔が少しだけホッと、緩んだような気がした
「何をわかっているというのだ?」
ファサッー
ヒョイッー
突然、皇子が沈んだかと思ったら
私の身体が浮いた
「ええーっ・・おっ、皇子っ!?」
そう・・
あろうことか、まさにお姫様抱っこをされたのだ
私が・・
皇子に
「ダリッー ダリッ、おるかっ!?」
私を抱っこしたまま
皇子が声を荒げ、ダリを呼びつけると
「はいっ、皇子!ここにー」
ダリが駆け寄ってくるのが見えた
「すぐに湯浴みの準備をー」
「えっ?」
「は?」
「皇子っ!!」
皇子の言葉に
驚く私、ダリ、テジュン
「聞こえなかったのか?ダリ・・ すぐに湯浴みの準備をせよ、と申したのだが?」
「あ、はいっ、すぐにー」
ダリは慌ててまた駆けて行った
「もう、覚悟を決めよ、テジュン」
え?
そこ、テジュン、なの?
なんて驚いていると
「・・・ おまえもな?」
超至近距離で見下ろされた
あぁ・・
皇子
私は、皇子の首に回す手に
少しだけ、
力を込めた
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はぁ~・・・
お久し振りで皆さま、お忘れでしょうね
どうしようか迷ったんですけど
やっぱり最後まで描いて終わりにしなきゃ
と思いまして
私の気持ちがね
というわけで
またしばらく、おつきあいくださいませ
りか