「ねぇ、ユンホ?」
ひとまず、ユリンを自分の部屋へと連れて戻ると
以前に着ていた服に着替えさせ
ハーブティーを淹れて飲ませる
ユリンがここで着ていた服
好きだと言っていたハーブティー
未練がましいか、と思いながらも
捨てずにとっておいたことに感謝しつつ・・・
そして、そんなハーブティーに口をつけると
その濡れた唇で
僕の名を呼んだ彼女が
やはり愛おしくてたまらない
「なに?」
「私・・ あの書物をみたとき、ユノユノ皇子に関する記述がないのは誰かに暗殺されたのではないかと思ったの」
「・・・・」
やはり、ユノユノ皇子の話か
「ほら!ここであなたと一緒にあの、四角いもので見たでしょう?」
そう言ってユリンが指をさしたのは、テレビだった
「お城にいる殿さまが暗殺されて死体が見つかってないとか・・
火を放たれたから、焼けてしまったんだろうと言ってたけど・・・」
あー、有名な話だ
「ユノユノ皇子も、あんなふうに誰かに殺されたんじゃないか、って思って・・
そしたら、私がお守りしなきゃ!ってー」
「すごいな、ユリン・・ 皇子を守ろうと思ってあっちに戻ったの?」
ユリンが言ってること
実は同じことを僕も考えてた
りかさんには言わなかったけど・・・
「だって私、ユノユノ皇子の妃ですものっ」
「・・・・」
まいったな
妬ける
「でもね?ユンホ・・ 」
「ん?」
彼女の見上げる瞳に、僕の姿が映っている
「あっちでは私なんて必要とされてなくって・・・ 寂しくなっちゃった。
そしたらね?ふと、あなたのことを想いだしたの!」
「え?僕・・のことを?」
皇子じゃなくて?
「そう、あなたのこと・・。あなたに会いたくて・・でもそれって・・
皇子の妃、失格よね?」
じゃあ、さっきの・・・
戸惑いの表情は・・皇子の妃としての自分を責めて?
「そんなことないっ!あぁ、ユリン!!僕は嬉しいよっ
ねぇ、抱き締めてもいい?」
ユリンの返事も聞かず
彼女を腕に抱き締めた
「ユリン・・ ずっと、ずっとこのまま僕のそばにいればいいんだよ
ね?そうだろ?ユリンに寂しい想いをさせる皇子のところへなんか
戻る必要なんてない!」
「でも・・」
「なに?まだ・・ 皇子が心配?」
「ううん、だって皇子は誰からも愛されていて・・私の心配なんて必要なかったし・・
でも・・ なんだろう?何かひっかかっているような気がするの・・・」
「ひっかかっている・・?」
僕は、彼女の瞳を覗き込むようにして、身体を離した
すると、突然、彼女の目が何かをとらえ
「ねぇ、ユンホ!!あの人、あれは・・ ダレっ?」
「え?あの人、って・・」
僕は、ユリンに言われて振り返ると
そこには写真立てがあり
「あ~、ユリンは会ってなかったよね?ほら、あの書物を見つけ出した大学の・・
僕がお世話になっている研究室の教授だよ?」
「私、この人を見たわ!!っていうか、会ったの!向こうでー」
・・え?
・
・
・
・
・
「ねぇダリ、政務室に女は入れないだなんて・・・ 今更じゃない?
ドンハさんに怒られて、皇子が言うことをきくっておかしくない?
ここで一番偉いのは皇子なんじゃないの?」
ダリとふたり、政務室から追い出され
宮殿の長い廊下を歩きながら
ついぼやいてしまっていた
知ればいい、とか言って連れてきておいて、何なのよ
「しょうがないではありませんか、ユノ皇子には今まで妃がいらっしゃらなかったし
政務室に女人を入れようとなさったことなどなかったのですから・・・」
「今まで・・なかった・・の?」
ドキッ
「そうですよ」
「じゃあ、ユリン・・妃・・も?」
私が問うと、ダリはハッとした顔をしてみせ
「ユリンさま、滅多なことはおっしゃいませんようにー」
そう言って顔を伏せた
「あ、ユリン様っ!」
つかつかと足音が近づいてきていると思ったら
ミヌだった
きっと皇子に呼ばれて政務室に行くのだわ
「まぁ、ミヌ!久しぶりっ!!」
「・・・・・・」
・・ しまった!!
ミヌは、私がまた入れ替わっていること、知らないんだっけ?
「さ、ユリン様!あちらへ行きましょう」
ダリに手を引かれ、いや、引っ張られるようにしてその場を離れようとすると
「ユリンさま!」
ミヌに呼び止められた
「・・ なんでしょう?」
にっこり微笑んで振り返る
「あまり、遠くへは行かれませんように・・」
「・・・・?」
遠くへは行かれませんように?
それってどういう意味?
「それとー」
「おいミヌー!何をやっているんだっ?みんな、待ってるんだぞっ?」
政務室からテジュンが出てきて叫んだことにより
何かを言いかけるミヌの声が遮られた
「え?ミヌ、今なにかー」
ミヌは、また、と言って政務室の方へと駆けて行ってしまった
ミヌは・・・
私がまた入れ替わってること、気づいたのかなぁ?
それに・・
何を言いかけたんだろう?
気になる・・
すごぉーーく気になる・・
すると、また、パタパタと近づく足音が聞こえ
使用人がダリへと近寄り、何かを囁いた
「大変です、ユリン様!」
それを聞いたダリが私を見てそう言うと
「シンシア妃がお見えになって、ユリン様に会いたいとおっしゃっているそうです!!」
「シンシア妃が?・・ それの何が大変なの?」
私の問いかけに、ダリは、使用人にすぐに行く、と声をかけ、去って行かせ
姿が見えなくなったのを確認してから口を開いた
そう、こういうときは決まってちょっとお小言っぽくなる
ダリは
「いいですか?ユリンさま!今のあなたは、あくまでもユリン妃の身代わりであって、ユリン妃ではないのですよ?それなのに、ミリョン皇子の妃に会われるのはどうかとー」
「でもそれを言うならさっきだって、ヨンア妃に会ってー」
「だから言っているのですっ!!いいですか?ユリンさま、こう言ってはなんですが
ユリン妃とあなたでは、雰囲気がぜんっぜん違うんですよっ!!
使用人たちの間でも、まるで別人のようだと噂になっているときもございました
それがミリョン皇子の妃のお耳にでも入ったらー」
「入ったら?」
「・・・・・・」
「要するに、皇子にご迷惑をおかけする、ってことね?」
あー、はいはい
あなたたちは皇子が大好きですもんね
それはもう、わかってますってば
「あなただって危ないではありませんかっ!!!」
「え・・?」
私・・?
「いいですか?もし、身代わりだなどということがバレたりしたら、あなたはきっと・・」
「私・・ どうなるのっ?」
「・・・ わかりませんが、おそらくは・・・」
「・・・・・・ん、わかった。言わなくていいから」
手を伸ばして、ダリの口を塞いだ
「気をつける・・」
「・・では、シンシア妃のところへまいりましょうか」
私は黙ってダリのあとに続いた
皇子に初めて会ったときのことを思い出す
あのときは・・・
おまえはただの不法侵入者だ、って言われてたけど
それでも処罰が怖かったのに・・
今ではきっと、それ以上の罪になるに決まってるわよね
つづく・・・・